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幕間2

 ——2日目


 セッターは愛菜の父親の警護で朝から出かけ、アラスカもまどかの警護につく。


「主よ暇だ!」

「そうよサハラさん、何処かに出かけようよ」


 訴えかけてくる2人に対して、ウェラはこういう時は目で訴えてくる。


「愛菜の学校があるから我慢してくれ」

「え? 何言ってるのよ。 学校ならこの間で冬休みに入っちゃってるんですけど?」


 そうだったのか。 つうか随分とトゲがある言い方だな。


「そうだ! なら愛菜ちゃんにどこか楽しいところに連れてってもらうのはどう? ね、愛菜ちゃん」

「私がですか? 今日今からだと大した所は行けないけど……ネズミーランドとか……」

「ネズミーランド! 主よ! ネズミーランドに連れて行け! ネズミーが我を呼んでいるのだ!」


 嫁ーズが来てから一気にやかましくなり、そして楽しいところを考えている愛菜がとんでもない場所を口にする。


「富士山ハイランド……」

「愛菜ちゃんストップ! その富士山ハイランドというのを教えて」


 アリエルが説明要求をしてくる。


「そ、そこは遠いいから無理だろう!」

「サハラさんが慌てているところを見ると楽しそうなところそうですね」


 グハッ……勘の鋭いウェラが俺の慌てように気づきやがった。


「ええと、絶叫マシンがたくさんある遊園地ですよ」

「絶叫マシン!」

「そこに行きましょう!」

「俺は行かないぞ!」

「ネズミーだ!」



 そんなこんなで理由を知った愛菜が異常なノリ気を出してきて、それならばと今日から1泊で行く事になってしまった。


 留守番にセッター、アラスカ、マイセンにロルスがいれば問題ないという事で、ブリーズ=アルジャントリーまで来る事になり、早速大急ぎで準備して出かける事になってしまった。


 謎の超美女と噂された4人が勢ぞろいした上に、銀髪の美少女までも加わると愛菜も居心地が悪そうだ。


「大丈夫大丈夫! 愛菜ちゃんも十分可愛いって! ね? サハラさん」

「そ、そうですか?」


 俺に振られたがそれどころじゃない俺は適当にしか答えられない。

 死刑執行される気分のまま姫川家を出た。



 富士山ハイランドまでの道のりは電車を利用して行くのだが、案の定俺たちの周りに人だかりが出来てしまう。

 それを気にしているのは俺と愛菜だけで、あとの4人、特にブリーズ=アルジャントリーは初めての電車に大はしゃぎしている。


「サハラさんゴメン……」

「どっちにしてもネズミーランドは行く事になりそうだから」

「……その喋り方、なんだかキモい」


 ぐはぁっ、分かっちゃいる。 分かっちゃいるが、周りの目がある中男みたいに喋るわけにはいかないだろうよ。




 そんなこんなで富士山ハイランドにたどり着かず、まずは宿屋……宿の確保となった。


「宿屋ならどこでもいいではないか」

「そういいわけにはいかないわ。 せっかくなんだから美味しい料理に温泉があったほうがいいに決まってるもの」


 愛菜が急に張り切りだし、電車で調べていた宿を当たっていく事になるのだが、当然この時期に空きがあるはずもない……はずだった。

 だがここでも俺たちの噂は広まっていたようで、写真を飾らせてくれるなら一番高い部屋を通常価格で提供いたします。 と呆気なく決まってしまった。



「それじゃあ富士山ハイランドに早速行きましょう」


 そう言って愛菜が先頭を歩いていく。 俺たちは愛菜の後をついていくだけだ。


「ねぇなんだか凄い乗り物がいっぱい見えるよ!」


 見えない見たくないわ!


「そうですねぇ、以前行った動物公園の乗り物よりも楽しそうですね」


 あんなもん乗って楽しいわけあるか! 自殺願望でもあるのかお前は!


「あれに乗るんでありんすか? なんか僅か怖いでありんすね 」


 そう言ってるがアル、どうせお前もすぐに楽しいとか言い出すんだろうよ!


「ネズミー……」


 うん、ルースミアは良い子だ。 もう少し見習ってほしいものだ。


「サハラさんなんか震えてる?」


 愛菜が心配そうに……ではなく、ニマニマさせながら見てきて、ガシッと俺の手を掴む。

 その瞳には絶対に乗せてやる。 逃げられるとでも思うなよ。 とでも思える邪悪な顔に俺には見えた。




 そして数時間後……


 俺と予想外にもブリーズ=アルジャントリーまでもがぐったりとしていた。


「サハラ様、皆さんはあれのどこが楽しいのでありんしょうか……」

「あいつらの頭がおかしいだけだ。 アルは間違ってないぞ」


 ここに来て初めて俺の味方ができたのである。



「お、アレはなんだ?」

「絶叫戦慄収容病棟って書いてあるわね」

「あ、あれはやめておくわよ。 絶叫マシンじゃないし、ただ歩くだけだし、それに見慣れてるでしょ?」


 キュピーン!

 ここに来て愛菜が、というよりかなりの女性が苦手とするお化け屋敷を避けようとしている。


「良いじゃないですか? せっかくなんだから入ってみましょう」

「……え?」


 ニッコリと笑顔で仕返しだ。 きっと愛菜の目に今の俺は悪魔にでも見えていることだろう。


「最大4人1組みたいね」

「なら3人1組で行けばよさそうですね」


 そんなわけで組み分けをする。

 ルースミアは何をしでかすかわからないため俺と一緒になり、加えてお化け役に教団関係がいるといけないからと強制的に愛菜を加える。

 となるとブーイングも出たが、アリエルとエラウェラリエル、ブリーズ=アルジャントリーでチームになった。




 ——約1時間後


「これが絶叫戦慄なの? ただ声を上げて近づいてくるだけだったじゃない」

「そうですね、たぶんゾンビなのかもしれませんが、いま1つリアルさに欠けてましたね」

「そんな事を言ったら演技してる人に悪いでありんす」


 とまぁアリエル達には退屈だったようで、俺たちの方は大変だった。

 こっちの方は意外なことにルースミアは脅かされることが苦手らしく、危うくいきなり飛び出して脅かしたお化け役の人に手を出しそうになるし、愛菜は愛菜で俺にしがみついて悲鳴を上げ続けるものだから耳が痛くて仕方がなかった。


「……うぅ、最悪だわ」


 アトラクションを出るなり愛菜がそう言ってトイレに駆け込んで行った。


 ちびったな。



 暗くなってきて宿に戻った俺たちを待っていたのは、種類豊富なバイキングだ。


「主よ! これをすべて食べても良いのか!」


 いの一番に歓喜をあげたのはルースミアだ。


「食べたいものを選んで好きなだけ食べられるって良いアイデアね。 シャリーさんに言ったらすぐに採用するんじゃない?」

「あっちでは料理したてのものがもらえるみたいですよ」

「うわぁうわぁうわぁ……」


 種類様々な料理にこれには以前この世界にきたことのあるアリエル、エラウェラリエル、ルースミアも大喜びで、ブリーズ=アルジャントリーに至っては声も出ないほど喜んでいる。


 いざ食事が始まると意外に食べれないもので、ルースミア以外は普通ぐらいの食事量だった。 だがルースミアだけは肉料理を主体に食い尽くしそうな勢いで食べていた。



「いやぁ喰った! 満足したぞ!」



 ご機嫌なルースミアだが、次は温泉だ。 だがここで問題が発生する。


「ちょ、ちょっとサハラさんもまさか女子風呂に入るつもりじゃないわよね?」

「仕方がないだろう。 こいつら、この世界の温泉は初めてだから、何かしでかさないか心配だ」


 ぼひっと顔を赤くさせ、俺が男である事を訴えてくるのだが……


「サハラさんが除け者みたいでかわいそうじゃない」

「そうですよ、それに私たちの世界では混浴は当たり前ですから大丈夫ですよ」

(つがい)だから問題ない」

「わっちも前にも一緒に入ったことありんす」


 まぁ大方間違ってない。 だが湯着は着てたことは言わないんだな。


「で、でもそれはサハラさんたちの世界の話であって、ここではやっぱり……」

「サハラは3人の(つがい)に加えて女体化までしているのだ。 今更裸など見慣れているから気にする必要はないぞ?」

「わ! 私が気にするのよっ!」


 俺だって気にするわっ!

 日本の温泉だと湯着なんてものはないし、湯にタオルを巻いて入れないんだぞ?


「別に見られて減るもんじゃないしね! ほらっ温泉行こ行こう!」

「わっ! たっ! ちょ! アリエルさ〜ん!」



 まぁそんなわけで半ば強引に温泉に入ったわけだが、案の定あまりに広い温泉に大はしゃぎをはじめる。

 それを俺と愛菜で諫めるので忙しく、互いに素っ裸であることすらも忘れて嫁ーズとブリーズ=アルジャントリーから目が離せずのんびりもできない。

 なんとか落ち着いた頃には愛菜も裸なのを気にしなくなっていたのだが……


「わぁ! 愛菜ちゃんって筋肉ついてないからすごく柔らか〜い!」

「なっ! なに突然抱きついてるんですかっ!」


 そりゃあまぁ何日もかけて歩いたり、戦ったりなんてしないんだから当たり前だろう。


「おっぱいも小ぶりだけどツンと上向きで形も綺麗だし、こっちも……」

「ひゃぁぁぁぁぁ! なにするんですかぁぁぁ!」

「んふ、私って両刀なのよん。 ね、サハラさん?」

「やめんか馬鹿たれ! 愛菜が嫌がってるだろう!」

「……あ」

「お?」


 思わずひったくるようにしてアリエルから愛菜を引き剥がしたため、抱きしめる形になってしまう。


 マジで柔らけぇ……じゃない!


「す、すまん……」

「う、うん」




 なんだか急に気まずい雰囲気になり、それをアリエルがニヤニヤしながら見ていやがった。


 温泉を出てもその雰囲気は直らないまま部屋に戻って眠りにつく羽目になってしまった。


 そして翌朝、更に事件が起きてしまうなど誰が予想しただろうか。




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