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最強の護衛

毎度ながら遅れて申し訳ありません。

「愛菜はどこにいる?」

「……ふぅ」


 諦めがついたようにぺらぺらと教えてくれる。

 当然そんなシャーロットの言うことは信用できるはずがない。


「なんでそんな簡単に全部教えるんだ?」


 理由は単純なことだった。

 シャーロットは結果的に秘密結社はもちろん、その関係である魔法使い協会を裏切っている。 加えて娘の命がかかっているこの状況で、姫川夫妻もシャーロットを許して見逃すはずもない。

 かといって口を割れば教団からも命を狙われる。


「でもそれなら言わないでおくという選択肢もあるだろう?」

「私は秘密結社の人間ではないわ」


 意味がわからない。 俺が首をかしげると愛菜の父親が教えてくれる。


「つまり拷問に耐えれないか」


 拷問を受けたことがない俺にはピンとこないが、まぁ口を割らせるのだから死なない程度の事はなんでもするんだろう。

 だがだとしたら、言うこと全て言ったシャーロットはどうなるんだろうか。


 ——まぁ消されるんだろうな。


「シャーロット、君の今回の事はここにいる人しか知らない。 もし無事に愛菜が、娘が帰ってきたら、今後裏切らないと約束するなら見なかったことにしよう」

「随分と甘いわね」

「愛菜は君を慕っていたし、それに私たちも家族だと思っている」


 愛菜の父親がそういうとシャーロットは1度目を見開いた後、頭を垂らした。


「……行って。 早く行ってあげて。 きっと今頃愛菜ちゃんは拷問を受けているはず。 教団にはそういうのが専門の奴がいるのよ!」


 目を赤くさせたシャーロットが俺を見ながら叫んできた。


「サハラ様、シャーロットの言うとおり急がれた方がいいけれど……こちらの守りもしっかりしないといけませんわ。 相手の狙いは愛菜さんではなくて姫川一家ですからね」


 そうだ。 俺がここを出たらワルキューレとエリニュスしかいない。 グラント女王がいるが、いつまで止まってられるのかもわからない……そうだった。


「そういえばグラント女王はレフィクルみたいに消えないんだな?」

「おそらく目的が達成されたからだと思いますわ」


 って事は……グラント女王も俺が愛菜の救出に向かえば消えるかもしれないな。

 教団にはまだ神性の属性を持つ者の攻撃を受け付けない守護者(ガーディアン)と得体の知れない奴がいる。


 だとしたらここの守りに誰を置いたらいいかだが、俺の方の助けも考えて決めないとダメだな。


 呼び出す相手が決まり、腕輪にその名を告げる。

 1人だけ俺とのつながりが薄いため不安はあったが多分大丈夫だろう。


「来てくれセッターとその娘アラスカ、そして……マイセン!」


 腕輪が輝き次第に姿が現れる。

 2人の男女は同じ黒色で同じ形状の外套を着た男女。 そしてもう1人も現れた。


「マスター」

「マスター!」

「サハラ様?」


 3人が俺を見た後、辺りを見回している。


「ここは一体……それよりもなぜ私は生きている?」


 セッターは全盛期だった頃の姿で、老いた頃とは違い生真面目な顔つきだった頃の姿で、アラスカはハーフエルフの為変わらぬ美貌のままだ。

 そしてマイセン、恋人同然のようだった女が宿った(キャロン)を腰にぶら下げている。


「3人に頼みがある。 ここにいる5人を守ってもらいたい」

「5人? マスター、この場には8人いると思いますが」

「グラント女王! お久しぶりです」

「懐かしいですねアラスカ」


 俺たちの方で勝手に話が進んでいく中、わけのわからない姫川夫妻と深雪とその父親、シャーロットはただ眺めていただけだったが、愛菜の父親が代表して俺に誰か聞いてきた。


「こいつはセッター、俺のいる世界の7つ星の騎士で、史上最強と言われた男です。 そしてその隣にいるのがアラスカと言って、セッターの娘でその横にいるのがマイセン、彼女の夫です。 この3人が必ずあなたたちを守ってくれます」


 そこでふとセッターとアラスカの所有する武器を見る。


「セッターとアラスカのその剣は、まさか2本とも星剣(せいけん)7つ星の剣なのか?」

「マスター、それより先にまず私の質問に答えてくれませんか?」

「ん、質問? なんだっけ?」


 諦めたような呆れたような大きなため息をセッターがつく。


「マスターはなんで私にだけ昔から接し方が冷たいんですかね……まぁいいです。 先ほど5人と言いましたが、8人ではないのですか?」


 セッターは気づいていないが、俺にとってセッターは弟みたいな存在だ。 だからと言ってないがしろにしてもいいものではないが、コイツとは色々と口論もあったりしたせいもあって、気づかないうちに冷たく接していたかもしれない。


「1人はグラント女王、キャビン女王だから知ってるだろ? それとそっちにいるのは守護者(ガーディアン)と言って、召喚された存在だから言ってみれば俺やお前たちと同じような存在だ」

「なるほど、理解しました。 それとマスターの質問の答えになりますが、私の持つ星剣(せいけん)7つ星の剣とアラスカの持つ星剣(せいけん)7つ星の剣は同じではありません。 同じではありませんが、姉妹のような存在です」


 ……わけわからねぇよ。


「なるほど……」

「マスター、以前見たと思いますが、7つ星の剣は別次元から同じ存在の姉妹たちを呼び出せます。 その一振りが私の手にあるようです」


 俺が分かったような分かってないような顔をしているのに気がついたアラスカが分かりやすく教えてくれた。


「ええと、なぜセッター様とアラスカ……さん……」

「君は娘の夫だ。 遠慮しなくてもいいんだ」


 マイセンがアラスカの父親であるセッターの手前、さんを付けたが、すぐにセッターがそれを優しげな眼差しを向けている。

 そんな様子を見ると改めてセッターが父親になったのが伺えた。


「はい! なぜ僕まで呼び出されたんですか?」

「なに単純な理由だ。 アラスカの夫であるだけでなく、君には、君とその(キャロン)には神をも殺す力を持っている。 今回の相手が相手だけにセッターだけじゃ頼りなかったから一緒に呼んだんだ」

「そんな! セッター様は人類史上最強の英雄です! 頼りないなんてありえません!」


 同じ魂を持つとはいえ、ここまでくるとまるで狂信者だな。


「セッターは確かに強い。 だがマイセン、君とは違いセッターは神を殺した経験はないんだ」

「そうだ、私が死んだ後に色々と呼ばれているようだが、所詮はこの7つ星の剣のおかげだ」


 セッターまで謙遜しているようだが、コイツは実際には神に認められているだけの実力は持っている。


「ならこう思うんだ。 お前が恋い焦がれるセッターと一緒に戦えるとな」

「マスター!」

「……はい!」


 2人のやり取りを口を挟まないでアラスカは微笑ましそうに見ている。

 現実にはありえないこの顔ぶれは一時的なものだが、貴重な時間にもなるだろう。



「あなたは1人で大丈夫なのですか?」


 話がまとまったとみてワルキューレが声をかけてくる。


「まだまだ俺には知り合いは沢山いるさ。 その中でも1人はこの世界を破滅させるほどの力がある。 そうだな……さっき召喚したレフィクルを一瞬で倒したといえば納得してもらえるか?」

「あれほどに方を、い、一瞬で……」


 納得した様子でワルキューレは黙る。

 エリニュスは特に気に留めている様子はないように見えたが、よく見ると小刻みに震えているのに気がついたが言うのはやめておいた。

 まぁエリニュスも俺のいる世界じゃかなりの強敵ではあるが、おそらく呼び出した3人の目を覗き込んで力量が分かったのだろう。



 3人に任せて愛菜を助けに俺が出て行こうとする。


「沙原君……娘を、娘をよろしく頼む」


 そう言って深々と頭を下げ、愛菜の母親も同じように頭を下げてきた。


「任せてくれ、とは言えないが、俺は愛菜を守ると約束した。 その約束は果たしてみせる」

「初めて会った時……あなたをもっと信じていればよかったわ。 もっともあの時の私ではそんな考えもなかったでしょうけどね」


 そりゃそうだろうな。 なにしろあの時は愛菜を殺しに来たんだから。


「過去は過去、未来は未来だ。 いくら俺でも過去を変える力まではない。 だが俺には未来を変える力は持っているんだ。 シャーロットも過去は消えないが未来を変える努力はするんだ」


「沙原さん……」


 正直急ぎたいところなんだけどなぁ……


「なんだ?」

「必ず私の元に帰ってきてください」

「……ああ」


 意味深すぎる言い方にどう返事をするか一瞬迷ったが、ここで余計な事を言えば更に時間がかかりそうだったため頷くだけにしておいた。



 待ってろよ愛菜、すぐに助けに行くからな。


 姫川家を出た俺は、縮地法を使いシャーロットが教えてくれた場所に向かって移動を開始した。

 元はこの世界の住人だったため、シャーロットに教わった場所はすぐにわかる。 だが行く前に1つやっておいてからだ。




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