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作戦開始

あけましておめでとうございます。

「そこまでわかってもらえた上で、これから提案を言おうと思う」


 俺は2人を交互に見つめる。

 聞く姿勢になっているのを確認してから提案を口にした。


「まず2人には囮になってもらうつもりだ。 というのも愛菜を攫ったら深雪は父親に連絡を入れる事になっているらしい。 それで相手の誘いにのって懐に飛び込んでみようと思っている。 そうすればとりあえず教団の真意は確認できるだろう?」


 もちろんこの作戦には穴が多いのは分かって言っているつもりだ。 だがこれ以上時間をかけても解決に向かいそうにはない。

 なにしろ音信不通のシャーロットに姫川家を助けようという意志のない秘密結社と、所在不明の教団が相手ではただ来るのを待つだけしかないからだ。


“この間のアレみたいなのが相手で、もっといるかもしれないところへ、こちらはサハラと俺とワルキューレで何とかしないといけない事になるぞ?”


 今までおとなしくし聞いていたフェンリルが聞いてくる。


「その辺はまぁ俺が本気を出せば何とかなるだろ?」

“そうか! なら安心だな!”


 俺とフェンリルで納得し合う。


「少しよろしいでしょうか? この間の教団の守護者(ガーディアン)と相対した時、あれはまさか手加減していたとでも言うのですか?」

“当たり前だ。 手の内をその都度明かしてどうするんだ?”


 意外とフェンリルの奴キツいな……


“あの程度なら本気になったサハラなら100や200はいなきゃ足らないぞ”

「それほどですか!」

「そ、そんなに!?」

「そんなわけないだろうバカ犬!」

“サハラ痛いぞ!”


 いくら俺が全力を出したところでも、相手も神話やおとぎ話の英雄やその敵として現れた存在だ。 タイマンでなら誰が相手であろうが何とかできるだろう。

 だが複数相手にしなきゃならない場合は難しい。


 ——だがそれでもやるしかないだろう?



「そういえばその腕につけている腕輪、変えましたか?」


 ワルキューレに指摘されて腕輪を見る。 確かに以前と形状こそ同じだが、チラチラと小さく光り輝く宝石のようなものが付いていた。


「いや、変えてないが……」


 触れてみるが特に何か起こる様子はない。



「私の運命はサハラさんに委ねる事になるんだけど、信じていいのよね?」

「残念だが絶対とは言い切れない。 だが俺も愛菜がいなければ召還してもらえなくなるからな。 必死で守るつもりだ」

「それってとても複雑な気持ちになるんですけど?」

「沙原さんが提案したんですから、そこは嘘でも任せろというところだと思いますよ?」

「私もそう思います」


 深雪に加えワルキューレにまで……

 俺的には不確かな事は口にしたくはないんだが、確かに俺の提案に乗ってくれる以上不安にさせることを言ったらダメだな。


「それでは父に電話します……と、その前にコレを」


 深雪が愛菜に小さな物体を渡す。


「コレは?」

「ええと、小型の発信機です」


 盗聴器といい小型発信機といい、この人は一体何者なんだ。


「確認のために聞いておきたいんですけど、なぜ久保先生がこういったものを所持なさっているんですか?」


 愛菜とはこういう時意見が合う。 そして俺と違いズバズバ言ってくれるのは助かるな。


「ええと……どうしても理由を言わなくてはダメですか?」

「どう考えても美術とは結びつきないですから」


 止めたほうがいいのか? だが俺も気になる。


「実は……」


 静寂の中、誰のものかわからないが、ゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえる。


「先生ちょっと数年前にストーカーさんだったんです」

「は?」

「えぇぇぇえ!」

「ストーカー?」


 悪びれた様子も見せずに深雪は自身のストーカー行為を暴露した。


「それが露呈してしまいまして、前の学校を解雇されたので今の学校に父の口添えのおかげで移ってきたんです」


 そこ! 笑顔で言うところか?


「ただでさえ久保先生って美人なんだから、そんな事をしなくてもよかったんじゃ……」

「うーん、それがですね、相手の方が既婚者だったんです」


 そりゃあ無理だし、一歩間違えば家庭崩壊させかねないな。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……なんか私疲れた」

「ま、まぁこれで理由は分かったんだし、それでいいじゃないか?」


 なんで俺が宥めてやらなきゃいけないんだよ。

 とはいうものの、これで俺の危惧する1つが解消されるのは助かる。 なにしろ深雪の父親に連絡を入れて来たはいいものの、愛菜だけ連れて行かれた場合にどうするかが問題だったからだ。



「よし……それじゃあ作戦開始といくか」

「私はどうしましょう?」


 うん、ワルキューレがこの場にいるのは確かに良くない。


「姿を見えなくさせたりって出来るのか?」


 あれと同じような設定なら、守護者(ガーディアン)は姿を見えなくすることができる。 だが帰ってきた答えは無理ですだった。

 やはりそんなに都合良くは出来ていないらしい。


「じゃあワルキューレの手助けはここまでになるか」


 残念だがこの場にいられても困る。


「では私は空から姫川愛菜を追跡しましょう」

「飛行出来るのか?」

「天馬に乗れば可能です」

「ワルキューレの騎行か」

「有名なウィリアム・T・モードの絵画にあるものですね」

「はい」


 さすがは美術教師だな。 名前までは知らないし、どの絵のことかまではわからないが、天駆ける天馬に跨ったワルキューレの絵は有名だ。


「じゃあワルキューレはそれで頼む」

「はい」

「もしも深雪を一緒に連れて行かないようであれば、俺は単独で追いかける。 それでいいな?」

「その場合、私はどうしましょう?」

「ここで待機していてもらいたいんだが……」


 チラと愛菜の方に顔をやると、やれやれといった仕草で愛菜が了承してきた。


「よし、準備の方が大丈夫なら連絡をしてもらうが?」

「いいわよ、と言いたいとことだけど、私はこのままでいい訳?」

「いや……少し痛いかもしれないが我慢してくれ」

「え!? 何を……ウッ」


 あまり教えてビビらせるのも良くない。

 俺は素早く動いて愛菜の意識を刈り取る。 修道士お得意の昏倒だ。


「女の子を殴るのは良くないと思いますよ?」


 じゃあ他にどうしろと言うんだ!


 愛菜をソファに横たわらせながらそう思ったが黙っておいた。


「それじゃあ深雪、連絡をしてくれ」


 言われた通りに深雪が父親に連絡をするとすぐに来る言われた。

 フェンリルにはピアスに戻ってもらい、ワルキューレは天馬に乗って空で待機してもらう。


 程なくして深雪の父親が姫川家に訪れるのだった。




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