表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/53

深雪と愛菜

今年最後の更新です。

「久保先生、俺に1つ提案がある」

「提案、ですか?」


 この状況を繰り返していても愛菜の両親の居場所は一向に分からないままだ。 ならば一層の事引っかかったふりをして懐に飛び込んでしまうしかないだろう。

 当然この作戦には愛菜と久保深雪にも危険がある。 2人を守りつつ教団と秘密結社の真意を探り、愛菜の両親を救い出さなければならない。


「久保先生、もし、久保先生の父親が嘘をついていて、教団の目的が分かり、姫川一家を殺そうとしたらどうする?」


 考え込んでいる。


「……とりあえず、私の事は深雪って呼んでもらえませんか?」


 そっちかよ!


「……わかった深雪」


 そこで喜んでキャ〜みたいな顔をするな!


「……こ、こほん。 それじゃあ私も遠野先生の事をさ、沙原さんと呼びますね」


 話が進まねぇ……


「それで質問の方ですけど、もし事実であれば、私はテロ組織に手を貸すつもりはありません」


 テロ組織……なんか違う気もするがまぁいいか。


「父親が敵に回ってもか?」

「私は美術ですが一応は教育者ですよ? 間違った行いに加担するなんてできません」


 ある意味教育者の鑑だな。 だが現実を突きつけられた時、果たして親子の縁を切り捨てられるのだろうか。


「よし、それじゃあ愛菜のところへ行こう。 そこで詳しく作戦を話すが、2人には囮になってもらう。 必ず俺が守ってみせるから信じてほしい」


 迷いがあるのか黙り込んでいる。


「……沙原さんは、いつも姫川さんにもそういう風に守るって言っているんですか?」

「え? ああ、たぶんそうかな?」

「そんな風に言われたら、女の子はみんな沙原さんの事を好きになっちゃいますよ?」


 そっちかよ!


「と、とにかく、愛菜を待たせてからだいぶ時間も経っている。 急いだ方がいいかもしれない」

「沙原さんは好きな人がいるんですか?」


 まだこの話を続けるのかよ!


 というわけで、さっくりと引導を渡してやる事にする。


「俺はいずれ消える守護者(ガーディアン)だし既婚者だ。 そういう感情を持って愛菜にも深雪にも接しているつもりはない」

「ガーン……」


 擬音を自分の口で言うな。




 というわけで、深雪の車に乗せられ俺がナビをしながら姫川家の前まで辿り着く。

 深雪が姫川家の敷地に入った瞬間、玄関が開いてワルキューレが槍と盾を構えて出てきた。


「ワルキューレ、彼女は愛菜の学校の美術教師だから心配いらない」

「いいえ、それは表の顔で裏の顔は教団の1人でしょう!」


 ワルキューレの後ろにいた愛菜が叫んでくる。


 なぜ愛菜が深雪が教団の人間である事を知っているんだ?


「とにかく武器を引いてくれ。 詳しい話は中でしよう」

「嫌よ! なんで敵を招かないといけないのよ!」

「逆に聞くが、なんで愛菜が深雪が教団の人間だと知っているんだ?」


 そこで、え? とでも言いたげな顔で愛菜が見てくる。


「深雪って! じゃない、サハラさん覚えていないの?」

「何の事だ?」


 俺の返事に愛菜が考え込む。

 ワルキューレは愛菜の許可がおりない限り通す気はないようだ。


「車は家の駐車スペースに停めて中に入っていいわ」

「いいのですか? 姫川愛菜」

「ええ、私はサハラさんを信じてるから」


 愛菜が許可を出したとなればワルキューレも武器を下げて立ち塞がるのをやめる。


「ええと、いいんでしょうか?」

「許可が出たんだから大丈夫だ」


 おびえた様子で深雪が俺に確認したあと、車を言われた通り駐車スペースに停めた。


 その間俺はなぜ愛菜が深雪が教団の人間だと知っているのかを考えてみるが、どうしても分からなかった。




 リビングに通されるがワルキューレは座らずに立ったままでいて、対面するように深雪をソファに勧める。


「サハラさんはこっちよ!」


 俺は愛菜と横隣らしい。 愛菜の方へ行こうとする。


「沙原さん、私の隣に座りなさい」


 深雪が命令口調で言うと抑止が働き、身体が勝手に深雪の方へ向かおうとする。


「サハラさん!」


 板挾みかよ!


「わかった。 俺もワルキューレと立っている」


 とは言ったものの、抑止で深雪の横に腰を下ろしてしまった。


「命令を解除してくれないか?」

「……わかりました」


 そう言われてやっとワルキューレの横に並ぶ。


「命令権を使われましたか」

「ああ……ワルキューレが俺が深雪の守護者(ガーディアン)だと教えたのか」

「いいえ、私が言うよりも早くから姫川愛菜は知っていました」


 そりゃどういうことだよ。 まさか愛菜にも盗聴器でも仕掛けられていたのか?


 服に触れてみるがそれらしいものは見当たらない。


「サハラさん、覚えていないの?」


 愛菜にまた聞かれる。 一体何の事を言っているんだ?


「ならまぁいいわ。 それで? 久保先生は私に何の用かしら」

「ええと……私じゃなくてですね……」


 困った顔で俺を見てくる。


「俺が深雪を連れてきたんだ」

「サハラさんが? 何でよ!」


 さっきからやたらと突っかかってきたり、覚えていないかと言われるところが気になるが、わからないものは仕方がないだろう。


 というわけでそれは置いておいて愛菜はもちろんワルキューレにも聞いてもらうことにする。


「愛菜は俺に教団は旧支配者の復活を企んでいる。 それを阻止するのが秘密結社と魔法使い協会だと言ったな?」

「そう両親に聞かされたわよ」

「うん。 逆に深雪は父親に秘密結社は裏で政治を操る悪い組織だと言われていて、それを暴いて明るみに出す為だと聞かされているそうだ」

「そんなのだまされているに決まっているじゃない!」

「……親に、か?」


 あ、と愛菜が口を噤む。


「わかってくれたか?」

「なるほど、あなたの言いたいことがわかりました」


 話を聞いていたワルキューレが納得したように頷いてきた。


「そこまでわかってもらえた上で、これから提案を言おうと思う」




次回は三が日が過ぎた頃になります。


良いお年を

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ