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ワルキューレの協力

 安倍親子が帰ったというのにワルキューレが残っている。


「ご当主が言われた通り、召喚者を家から出さない様にするのであれば危険はありません」

「いや、そうじゃなくてだな……」

「残ったのは力になりたいと思った私の勝手な判断です」


 そんな勝手な事して大丈夫なのかよ。


「っつうか、安倍の家ってそんなに安全な場所なのか?」

「はい、多重の結界に加えて守護者(ガーディアン)避けまでされてますので」

守護者(ガーディアン)避け? じゃあ君はどうしてるんだ?」


 まぁ召喚者が呼び出した守護者(ガーディアン)は別ってとこだろう。


「外で待機しています」


 ……は?


「酷い話だな……っと、愛菜のところに戻ろう」


 愛菜の部屋に戻ると、俺が離れている間フェンリルが見ていてくれた様だ。

 フェンリルの姿を見るなりワルキューレが頭を下げて謝罪してくる。


「この間は召喚者の命令とはいえ申し訳ありませんでした」

“ん? ああ、別に気にするな。 お互いやるべき事をしただけだ”


 馬鹿犬ではあるが、本当に頭が悪いわけじゃない。 素直にフェンリルは謝罪を受け入れている。


 俺は愛菜の様子を近づいてみるが、特に苦しんでいる様子はなくスヤスヤと寝ているだけだ。


「随分と心配されている様ですね」

「ああ、俺のせいでこうなったからな」

「……ところで、あなたは召喚者と契約を結んでいない様ですが」


 どうやら愛菜の契約の証である令呪の様なものがない事には気がついていた様だ。


「召喚されて速攻で俺が破棄したんだよ。 今思えばちゃんと話を聞いてからにするべきだったなぁ」

「え? という事はあなたは魔力の供給を受けないまま現存しているんですか? というかありえません、そういう事態を考慮して召喚魔法には強力な制限がかけてあるんですから」

「そう言われても破棄できているからな」


 ワルキューレが床に座りながら驚いた顔を見せている。 その綺麗なふとももに目が行かないようにするこっちの身にもなってほしいものだ。


「本当に何者か気なるところではありますね……」


 俺の視線を見てニコッと笑って両手をふとももに揃えてくる。

 こういうエロい視線に女は異常に勘が働くからバレバレなんだろうな。


「悪い……」

「いいんですよ、そういう意味合いもあるんですから」


 つまり異性を相手にした時に油断させる意味合いもあるって事だろう。 3人の嫁で見慣れているはずだがそれとこれとは別ってもので、悲しい男のサガというものだ。




 どちらにしても愛菜を呼ぶ声は決まって夜だ。 それまでは特にする事もない。

 なのでワルキューレが知りうるこの戦いの事を尋ねる事にした。


「もし俺たち守護者(ガーディアン)が死んだらどうなるか知ってるか?」

「ハッキリは言い切れませんが、元の場所に戻るものだと思っています」


 その根拠を聞くと、そもそも存在しない守護者(ガーディアン)が死をきっかけに神話やおとぎ話から消えることはないからだそうだ。

 言われてみればフェンリルが食っちまったメデューサも記憶から消えてはいない。

 つまり、その原理からくれば俺も死ねば元の世界に帰れるんだろう。


「つまり俺たち守護者(ガーディアン)は安心して戦い、死ねるって事か?」

「おそらく、としか。 でも私たちは人間たちによって神話やおとぎ話として作られた存在であって、それを魔法によって現存されただけの存在でしかありませんからね」


 じゃあ神話やおとぎ話のない俺はどうなるんだよ……


 気を取り直して不満はないのかと問うと、ワルキューレはあからさまに不満そうな顔を見せてくる。


「私の召喚者、安倍博道はすでに2回命令をしています。 この命令にはどのような命令でも従わなければなりません」


 あの安倍の事だ。 エロい事に命令を使ったんだろうな。


「つまり召喚者次第でしょうね」

「まぁあえてどんな命令をされたのかは聞かないでおくよ」


 俺もあのまま契約を破棄してなかったら、愛菜に一体どんな命令をされていたかを想像するとゾッとする。

 もっとも愛菜の事だから、エロい命令はしないだろうが。


「ちなみに俺たちはどうやって召喚されてるんだ? 遺物……はないから神話やおとぎ話の関連のものでも用意するのか?」

「いいえ、召喚者の思い描く望んだ者ですよ」


 望んだ者? じゃあ愛菜は知りもしない俺を望んだとでもいうのか?

 というよりもだ……


「召喚魔法というのは、やり方さえわかれば誰でもできるのか?」

「可能ですが、教団に狙われるようになるだけにとどまらず、秘密結社及び魔法使い協会からも粛清の手が伸びるでしょう」


 はは……そんな事些細な問題だ。 少なくともシャーロット伝いで俺の事は伝わっているはず。 ともすれば下手には手を出してこない。 いや、これない。


「もし手伝ってくれるというのなら、その召喚魔法とやらのやり方を教えてはくれないか?」

「ですが召喚魔法は私たちには使えないように施されて……あ」


 そういう事だ。 俺は契約を破棄しているから、そういったものから束縛はされない。

 そしてもし召喚ができるのであれば、俺は3人の嫁を呼び出せる事になる。


 1人は【魔法の神エラウェラリエル】、2人目に【自然均衡の神】の代行者にして神聖魔法と魔法の使い手のアリエル、そして3人目はおそらくどの神話やおとぎ話の英雄だろうがぶちのめしてくれるであろう赤帝竜(ルースミア)だ。


 もし1人だけだという制限があるのなら赤帝竜(ルースミア)だけで十分だろう。


「何かとんでもない事を考えているみたいですね……」

「ああ、俺は愛菜を絶対に守ると約束したからな」

「なるほど……わかりました。 私も及ばずながら力を貸しましょう」


 安倍が怒ったりしないか不安ではあったが、手助けしてもらえる間はありがたく借りる事にしよう。

 となるとまずは愛菜を目覚めさせることが最優先だな。




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