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協力者

 朝になり目を覚まし、愛菜の無事を確認する。


 ……すごい寝相だな。 どうやったらこうなるんだ?


 まず上掛けは完全にベッドから落ちていて、そして愛菜自身も半身がベッドからずり落ちている状態だ。 パジャマの上は捲れ上がっていて、胸がはだけて丸見えになっている。 あれでよく頭に血が登って死なないものだと感心してしまう。

 高さのあるベッドだったら間違いなく落下してることだろう。


 俺は基本的に寝る前の姿勢をほとんど変えずに目覚める。 だから余計に寝相が悪い人というのがよくわからない……

 それにしても……ピチピチの女子高生の生乳か……

 触れてみたい気持ちがないわけじゃないが、俺の脳裏に3人のうちの2人の嫁が物凄い形相で睨んでいるのが浮かび上がり、そっと愛菜の部屋を出た。


 世話になりっぱなしというのも悪いだろう。 というわけで、朝食でも作っておくことにする。

 ご飯を炊き味噌汁を作る。 冷凍庫に入っていた鮭を焼いてそれをテーブルに並べていった。


「うー……なんかいい匂いがする……」

「おぅ、起きたか」


 匂いに釣られたのか目を擦りながら愛菜が2階から降りてきた。


「あなたって料理できるのね」

「こんなの料理のうちに入らないけどな」


 寝癖のついたまま2人で朝食を食べ、登校の準備をして家を出る。

 なぜかやたらと愛菜がご機嫌のように見えた。


「それで? 安倍君とは私も一緒に会うのかしら?」

「いや、俺1人で会う。 愛菜がいるとあいつは愛菜のことしか考えられなくなりそうだからな」

「そう……」

「一応確認しておくが、愛菜は安倍の事はどうあっても好きにはなれないか?」

「それってどういう意味よ!」

「場合によっては手を組むかもしれないからな」


 愛菜がウーっと唸りながら考え込んでいるところを見ると、好みのタイプではないのだろう。


「ちなみに愛菜はどういう男が好みなんだ?」


 軽い気持ちで聞いたつもりだったが、聞いたのが間違いだった。

 俺の顔を見てボッと顔を赤くさせたかと思ったら背ける。

 その行動だけで十分わかってしまったがそれは間違いだ。 愛菜は単に吊り橋効果で俺に好意を抱いているだけだ。


「ふ、ふん! そんなの当然高身長高学歴高収入のイケメンに決まってるじゃない」

「俺はそれのどれにも当てはまらないな」


 虚勢を張ってるのは見え見えだがそれでいい、俺には俺の愛菜には愛菜の住む世界がある。

 むしろここでハッキリ俺だ何て言われても、いずれは元の世界に戻るのだからこっちとしても困るだけだ。


「そうよ! だから嘘でも今、私の恋人でいられることを感謝しなさいよね!」


 そう言いながら愛菜が俺の腕に組んでくる。


「はいはい、ありがとうごぜ〜ます」

「よろしい!」




 そんなわけで学校の近くにくるまで腕を組みながら歩き、他の生徒が見え出し始めたところで腕を組むのをやめた。


「おはよう愛菜」

「愛菜おはよ〜」

「おはよう」

「それにしても朝っぱらから熱々ですなぁ。 あー羨ましい」

「遠野先生かっこいいもんねぇ」


 何だと……俺がかっこいい?


「え……こいつのどこがかっこいいのよ」

「え〜何ていうんだろぉ。 堂々として流ところかなぁ? 頼りになりそぉ〜」

「あーそれなんとなく私もわかるかも! 遠野先生って肝が座ってる感じがするよね」


 おいおい、一応恋人なんだからこいつとか言うなよ。 それにしてもこういう話は苦手だな。

 下手な答えを出さないように俺は笑顔で答えるだけにしておいた。



 学校に着き、愛菜たちと別れた後職員室に向かう。


「遠野先生おはようございます」


 そしてすっかり忘れていた久保先生が俺を見るなり駆け寄ってきた。


「お、おはようございます久保先生」


 ボソボソと何か言っていたが、それは聞かなかったことにする。


 ここでも校長に助けられ授業が始まり1時限目2時限目と各クラスで授業を行っていく。

 そして3時限目、ここには安倍がいるクラスだ。

 終了のチャイムが鳴る。


「じゃあ今日はここまで。 それと安倍、昼休みに職員室まで来なさい」


 起立礼を終えて教室を出て行く。



 昼休みになって昼食が終えた頃に安倍が職員室に顔を出してくる。


「遠野先生、僕に何かようですか?」

「ああ、じゃあ会議室の方へ行こうか」


 会議室に行き2人きりになったところで話を切りだす。


「実は君にしか頼めない話がある」

「僕はあんたの頼みなんて嫌ですよ。 どうせロクでもない話に決まってる」

「そうか? 君にとっても有益な話だと思うぞ?」

「……聞くだけ聞きましょうか」


 俺は愛菜を引き合いに出して、協力するのであれば2人が仲良くなれるよう協力する事を言うと、簡単に安倍は話に乗ってきた。


「でも姫川は遠野先生と付き合ってるんでしょう?」

「そういう設定に決まってるだろう。 俺はいずれ元の世界に帰る。 ここで恋話を咲かせてどうする? それに俺は既婚者だ」


 嘘は言ってないが、彼が本当に安倍晴明の血族なのかと疑いたくなるほど簡単に俺の話を信じてきた。

 なので念は押しておくことにする。


「念のために言っておくが、愛菜と君が仲良くなれるように俺は協力する。 だが最終的に決めるのは愛菜だぞ。 それだけは履き違えるな?」

「それぐらいはわかってますよ」


 そうは言うが、安倍の顔はすでに恋人同士になれると思い込んでいるようにしか見えない。


「それで遠野先生は僕に何を頼むつもりですか?」


 愛菜の許可は取っていないが、ここは協力している素振りを見せておくのが良いだろう。


「愛菜の許可は取ってないが、学校が終わったら愛菜の家で話そうと思う。 どうだ?」

「い、いきなり姫川の家に入れさせてくれるんですか!?」

「言っただろう? 協力はすると」

「わかりました。 じゃあ下校時間に校門で待ち合わせで良いんですね?」

「いや……君は昨日の一件でマイナスのイメージを愛菜に与えている。 だから下駄箱の前で待っていて、俺と一緒に行く方が良いだろう」

「なるほど……確かに。 わかりました! それと昨日はすみませんでした!」


 調子の良いやつだ。 だがこれで情報は得られるだろう。

 となると後は愛菜だな。


 にこやかに出て行く安倍を見送った後、愛菜のところに向かおうとする。

 とそこへ久保先生が声をかけてきた。


「遠野先生。 安倍君となんのお話かしら?」

「いや、今日の授業のことでわからないことがあったそうなんで……」

「そうでしたか、それで今日なんですけど……」

「すみません、姫川と約束があるんで」


 久保先生が口を尖らせながら顔を近づけてくる。


「遠野先生、私の事避けてらっしゃらないですか?」

「い、いやぁ……別にそういうわけじゃあ」


 おおい! 校長出てきてくれないか!


 という期待もむなしく、久保先生の話に付き合わされたせいで愛菜に前もって伝えておくことができなくなってしまった。


 まぁ一応安倍の事は愛菜にも朝伝えてある。 なんとかなるだろう。




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