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リョウジとの出会いは電車のなかだった。
わたしは、都会に出てからまだ日が全然浅くて、乗り換えすらよくわかっていなかったし、1人1台自動車を持っているのが当たり前というような地域に住んでいたものだから満員電車に初めて乗ったわたしはほとほと参ってしまっていた。
狭いとはいえ、揺れに合わせてかすかにぶつかってくる他人の肩がとても煩わしくて、なんとなく胃がムカムカするというか、気分があまりよくなくて、これが人に酔うということか、とうんざりしたとき視界が一瞬真っ白になった。
あ、と思う間もなく、わたしは全身から力が抜けて、倒れる、と思ったとき、なにか力強い手に腕を掴まれた。
「よしの」
リョウジがそう呼んで、わたしの髪の毛をそっと梳く。わたしはリョウジにそっと身を委ねる。
まるで、対価交換だな、とわたしは思う。
わたしはリョウジの古臭いアパートに身を寄せていた。
身内も知り合いもいないわたしがリョウジと距離を縮めるのには、それほど時間はかからなかった。
何も拠り所のないわたしは、しがらみがなくなったぶん寂しかったのだと思う。
リョウジは見た目通りというかなんというか、とにかく何に対してもいい加減だったけれど、そこら辺の男の子よりもずっと優しかった。
とにかく性格は紳士で男女隔てなく優しくて、それはわたしではなくリョウジの周りにいる人間全員に等しく注がれた。
田舎から出てきてこの土地とのつながりといえばリョウジくらいしかなかったわたしは、いつも友達に囲まれているリョウジに対して嫉妬のような黒い感情が芽生えたことは数え切れないほどあったけれど、それをぐっと飲みこんでリョウジの優しさがわたしに向けられるのをおとなしく待っているのであった。