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百輪の華  作者: 工藤 円
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第4輪『神の逆鱗』

「いやー、今マジで幸せだよ」

「うわっ、出たよ! ふざけんなバーカ!」

 教室の角から聞こえてくる、騒々しい男子達の恋愛話。彼女のいる男ののろけ顔に、彼女のいない男達が罵声を浴びせるという良くある風景。

「駿一お前、この前彼女と喧嘩したって言ってなかった?」

「いや、すぐ仲直りしたよ」

 北浦駿一(きたうらしゅんいち)。ストパーのかかった直毛、割と綺麗な肌。まあ……俺程でないのは当然だが、イケメンかと聞かれれば首を横に振りはしない。人当たりも良く、そこそこに女子からモテてもいるのだろう。そこそこに。



 第4輪『神の逆鱗』

 


 その彼女、加西美里(かさいみさと)。こちらはまあ、お世辞をフルに使わなければ可愛いとは言えない。ボサボサの髪にニキビだらけの肌。

 しかしこちらも周囲への顔は良く人気があり、何となくクラス女子の中心的ポジションに就いている。

「………………」

 俺はポケットから携帯を取り出し、二年三組のクラスサイトのページを開いた。

 読むに耐えない誹謗中傷も、ただ単に健全な交流を図ろうとするこういったサイトも、教師や大人達からすれば結局は“裏サイト”というカテゴリーにひとくくりにされるらしいが、こういったクラスサイトはただ単に交流を図ろうとしているだけで、生徒達の間には普通に浸透している。まあそんな事は今はどうでも良くて、まず俺は女子のプロフィール一覧のページを開いた。

 ――クラスサイトと言っても結局は単なる娯楽で、クラス生徒全員にプロフィールや日記を書く事を強要するものではない。むしろ、このサイトの管理パスワードどころかURLすら教えてもらっていない生徒すら中にはいるのだが、彼氏がいたり彼女がいる様な奴は大抵この手の企画には積極的に参加しているものだ(俺は公式には彼女無しだが、一応参加はしている)。


 加西美里プロフィール

 【HN】みさ

 【性別】シュンの女><

 【誕生日】私→10/16 二人→→→6月18日

 【髪型】シュンのために髪のばす*

 【好きな男性のタイプ】優しくて、思いやりあって、ばかちんで、可愛くて、でもカッコよくて、みさの事だけを好きでいてくれる、シュンだけ><

 【ここだけの話】しあわせだー。うはー*


 …………なんなんだ、こいつは……。いや実際、今の時代どこのクラスのページを見てもこんな奴ばかりなんだが……。大体、こいつ前々回ぐらいに北浦と喧嘩別れした時、他の男に告白してたんじゃなかったか? それはあっけなく振られたらしいが、だからって今ここでこういう風にしているのはとても不愉快だ……。

 俺は微かな頭痛に襲われたりしながら、加西のプロフィールを眺め終えた。

(……酷い。本当に、こういう女の現状を目の当たりにすると三浦美穂みたいな女が恋しくなる。よし、今日は奴に電話してやろう――)

 その時、加西と北浦が俺の机に突っ込んで来た。

「もっ、持貫、悪い!」

「玉くん、ごめーん!」

 二人は、ただ単にじゃれ合っていた。加西が北浦の首筋をくすぐり、北浦がそれに悶えながら対抗する。

 周囲の目も気にせず愛情表現に走る二人の姿。微笑ましくあるべきはずのそれは、何故か不愉快だった。

(……加西が可愛くないのも、北浦がそんな奴を本気で好いているのも、その所為で加西が変に勘違いして図に乗っているのも、全てが癇に障る。気分が悪い…………)

「あ、いや別に」

 俺は愛想笑いを浮かべながら、何食わぬ顔でズレた机を元に戻す。

(……今の内、そうやって騒いでろ。加西、北浦。そうしていられるのも今の内だ……)

 そして今度は誰にも見られない様にして、先程とは違う種類の笑みを浮かべた。

(…………神の裁きを見せてやる。お前らの低レベルな交際もこれまでだ……)

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