第1輪『愛の華』
――俺の名前は持貫 玉、十六歳。容姿端麗頭脳明晰、誰にでも優しく微笑ましく。名前を挙げれば誰もが知ってる学校一のモテ神だ。
『男として生まれたならば、人生に華欠くことなかれ』。これは将来、俺の自伝が出版される時用に考えてある格言だ。恐れ入ったか。
第1輪『愛の華』
「持貫くーん!」
今日もまた、登校するなり女生徒の奴らが黄色い声を浴びさせてくる。
「おはよう」
俺様は性格も良いので、こんなお世辞にも可愛いとは言えない連中にも優しく接する。聖母マリアも裸足で逃げ出す人格の良さだ。
校門を通っても、階段を上がっても、廊下を歩いても、俺の周りには女が耐えない。これこそが、男として生まれた者の至高の人生。
「持貫くーん、今日もかっこいー!」
「いやいや……。そんな事無いって」
最早、俺以上の人生が存在するなど考えもつかないね。全人類対象人生ランキング一位だ、一位。
「――あのっ、持貫くん!!」
その時、突然後ろから声を掛けられた。
「ん? どうしたの?」
真っ赤に染まる頬、俯いた瞳。
(あー……、告白だな。それにしても、恥ずかしくて目も合わせられないとは好印象な女だ)
「あ、あのっ……」
「ん?」
俺はこの女の心情を十二分に理解した上で、優しく微笑む。
「ず、ずっと好きでした! 付き合って下さい!」
女はそう言って頭を下げた。
(だろうな……。しかし、朝とは言えこんな人目のある所で……)
「えっ!? ちょっ、ちょっと……」
俺は、慌てた振りをして女に頭を上げさせる。
「……ほ、本気で?」
俺は自らの意思で頬を赤らめた。この技術も、習得するのに苦労したものだ。
「は、はい! 本当に持貫くんの事が好きで好きで……」
「ちょ、ちょっとさ、場所変えて話さない? ほら、ここ人目につくし……」
そう言うと、その女は一層頬を赤くした。
「あっ……、ごめんなさい! そこまで考えてなくて……」
「いやいや、それは全然良いんだけどさ。とりあえず、移動しよ?」
考えろ。役立たず。
「はっ、はい!」
そうして、俺は女の腕を引き屋上へと向かう。生徒は屋上へ上がる事は出来ないが、その直前にはちょっとしたスペースがありそこなら人目につかない。
「ごめんね。わざわざ移動させて」
「いっ、いえ! 悪いのは私ですから!」
なんだ。ちゃんと分かってたか。もし『いえ、気にしないで下さい』なんてぬかしやがったら殴り飛ばしてるところだ。
「それで、さっきの告白なんだけど……」
「はっ、はい……」
俺は一拍置いて言葉を溜める。
「是非。こちらこそよろしく」
俺は満面の笑みを作り、微笑んだ。
「えっ、本当ですか!?」
「うん。俺今付き合ってる人とかいないしさ。君、結構本気で俺の事想ってくれてるぽいし」
「はっ、はい! それはもう……誰よりも!」
おい。図に乗るな。お前以外にも何万人が俺に夢中になってると思ってる。
「それじゃ、これからよろしくね」
「はい!」
女は嬉しそうに、目元には微かに涙すら浮かべながら笑った。
(フフ。嬉しいだろうな)
「えっと……それじゃ、とりあえず名前教えてくれるかな?」
俺はそう言って携帯を取り出す。
「あっ、そうですよね! えっと、赤外線で私のプロフィールを送って良いですか?」
「あっ、そうしてもらえる? じゃあ、是非」
二つの携帯を向け合うとすぐに通信は済み、俺の携帯のアドレス帳には新たに一つ名前が増えた。
三浦 美穂
「ふーん。三浦美穂」
「はい。えと……出来れば、美穂って呼んで下さい……」
(……なんか、本当に拍子抜けするぐらい現代の女子高生とは思えないな、こいつ)
「わかった。じゃあ、美穂も俺の事は玉って呼んでね」
「う、うん! じゃあ、また後でね!」
そう言うと、三浦は階段を駆け下りて行った。
「………………」
俺は、携帯のアドレス帳を開く。
『三浦 美穂の登録カテゴリー変更』
その他、友達、女友達、先輩(男)、先輩(女)……等、沢山のカテゴリーがある中で俺は三浦美穂の登録先を選び出した。
“彼女”
その中には大勢の女の名前が並び、三浦美穂もまた、その内の一人となる。
「………………」
俺は堪えきれずに、笑みを零した。
新連載です。
やる気が沸いてます。
今回の作品は、サブタイトルの数え方を第○輪としています。
花を数える時の一輪、二輪の輪です。
もし物語が100話まで進んでそこで完結を迎える事となれば、第百輪『○○○○』てな感じで、凄くカッコイイのにな。
100話まで続くかな。続けられるかな。
無理だろうな。




