第1話 ④君は何者?
「すごいね!浄化なんて初めて見た!」
悲しさを紛らわすためにわざと明るく喋っているのことがバレバレだ。
返す言葉が見つからず視線を下に向けると、足に怪我をしていた。
「足、怪我したのか?」
かなり大きな怪我なので相当痛むだろう。
「うん。あの子に取り憑かれた時にコケちゃって……。」
立っているだけで痛そうだ。
「よくここまで歩いてこれたな。」
そこまでして学校に行きたいのか?
「あの子がすごく罪悪感を抱いてたから……。心配して学校までついていくなんて言うから逆に時間かかって。家に引き返すなんて言ったらもっと心配するだろうし…。」
なんで、幽霊相手にそこまでできるんだろう。
俺ならこかされてる時点でこの世から消してるはずだ。
「とりあえず、こっからなら家より学校の方が近いだろ?おぶっていくから早く行くぞ。」
人と関わるのは、はっきり言って嫌いだし面倒だが、さすがに怪我人を置いていくわけには行かない。
「そんなの悪いよ!私は大丈夫だから先に学校に行って!それに私といると50mに1回は幽霊に絡まれるよ!?」
50mに1回?絡まれすぎだろ……。
俺でもそこまで幽霊に絡まれないのに。
「ちょっと待ってろ。」
浄化の時とは少し違う印を組んで女の手首のブレスレットを見た。
「それ、借りてもいい?」
「えっ?うん、いいよ。」
ブレスレットを借りるとそれに力を込めて呪文を唱えた。
我ながらよく出来ていると思う。
「これをずっと付けてろ。」
命令しながらブレスレットを返した。
「はっはい!!」
「呪文をかけたから少しは幽霊が寄ってこなくなると思う。」
「すごいね!ありがとう!!」
向けられた笑顔が真っ直ぐすぎて反射的に顔を背けた。
「別に…。」
学校までの間は2人とも何も喋らなかった。
何となく喋りにくいのもあったが、この女をおぶっていると何故か懐かしい気分になった。
この女は一体何者なんだろう。