プロローグ
「1人なの?じゃあ、私と遊ぼうよ!」
懐かしい声が俺を呼んでいる。これは夢か?
「──ちゃん、ダメだよ!すばる君とは遊んじゃダメってママが言ってたもん!」
───どうして今頃こんな夢を見るんだろう…。
「どうして?私はすばる君と遊びたい!」
「だって、すばる君の家ってすっごく大きいけどすばる君のお父さんとお母さんが何の仕事をしてるのか秘密にするんだって!だから、きっと悪いことをしてるんだって言ってたもん!」
周りが静まったのが幼い頃の俺でもわかった。
またみんなに影で悪口を言われると思うと恐怖で体が震えた。
「そんなの関係ないよ!」
「……え?」
「もし本当にすばる君のパパとママが悪いことをしてたとしても、すばる君は悪くないよ。」
あの時の言葉にどれほど救われたのだろうか。
今では、あの子の名前も思い出せないのにあの言葉があの声が脳裏から離れなかった。
「すばる君、また明日ね!」
確かこれが最後に交わした会話だった。
次の日からあの女の子は幼稚園に来なくなった。
先生に来なくなった理由を聞いても上手くはぐらかされただけだった。
でもその頃には周りの子に馴染めていて友達もたくさん出来たのでその子のことは話さなくなっていた。
それなのに、どうして今頃こんな夢を見たのだろうか……。
「昴!起きなさい!!」
1階から母さんの声が聞こえた。
「……やっぱり夢か。」
あの女の子は今どうしているんだろう。