明晰夢 ラスボスの倒し方
夢の中で目覚めると自分を含む四人の勇者ご一行の一人だった。
あぁ、ここは明晰夢の中だなと気づく。
数多の死闘や罠を掻い潜りようやく辿り着いた記憶が蘇る。
パーティーは戦士三人と賢者一人。皆、物々しい装備を身に纏う、所謂 剣と魔法を操るゲームの世界だ。自分はパーティーのリーダーだが視線は現実同様であり、手足や剣等は目視可能だが鏡やガラスのような反射物がないと自身の全貌を見る事は不可能だった。
目前には廃墟のように古びた小さな神殿があるのだが、あまりにも小さな神殿だ。はっきり言って一般的な家屋並みで神殿と言うよりは祠のような佇まいだ。
本当にこんな小さな建物内にラスボスがいるのかと思いながらも一歩踏み出す。
廃屋のような畳八畳程の室内には誰もいない。一目瞭然だ。
他に出入り口や隠し通路はないかと探していると勝手口を発見。早速ドアノブを回すと扉はすんなりと開いた。
再び廃屋へ進入する。
廊下は岩石のように固く、まるで洞窟のようだ。突き当たりを右に進むと雰囲気が一変する。異様な冷気を感じたその時、一番奥の闇の中から魔王が現れたのだ。
出た‼ ラスボスだ。そう叫ぶと全員戦闘態勢に入る。
そいつの容姿はまるで阿修羅像の九つの腕と剣、仁王像の筋力を合わせ持つ金剛力士像の如し屈強な邪神だ。
戦士達は抜いた剣をかまえ、ラスボスに斬り掛かる。だが、まるで手応えがない。豆腐でも切っているようだ。その様子を見ていた賢者が巨大な火玉を浴びせるが全く効果がない。
霧のように現れては消えるラスボスだがその一撃は重い‼
為す術なく困惑するパーティー。
すると、どこからともなく声が響いた。
「隣の部屋だ‼」
この声の主は夢を観ている自分からだ。
パーティーは一旦撤退し、猛ダッシュで先程入った八畳の部屋に入るとそこには稲妻を放つ丸く巨大な岩石と業火を纏い空を舞う車輪状のモンスターが襲い掛かってきたのだ。
パーティーは応戦するも苦戦を強いられ激しいダメージを食らう。
賢者の回復魔法が追いつかないでいた。このままでは全滅する‼
そう思った時、またしても声が響いた。
「古井戸にそいつらを落とせ‼ 車輪が先だ‼」
その声を聞いたパーティーは部屋の中央に貼られた不自然な板間をめくると大きく口を開けた井戸を発見した。すると賢者が理力を高め火炎を放つ車輪モンスター目掛け水の波動を放った。一瞬怯んだ隙を突き戦士達が雄叫びと共に車輪モンスターを井戸へぶち込む‼
業火に包まれた車輪モンスターの身体が井戸水で冷やされ水蒸気が立ち込める。
しかしヤツが井戸から飛び出して来る。そいつを阻止しなければならない。
そうだ‼ 次は雷岩石モンスターを井戸へぶち込んでやろう、どうなるかな?フフフ……
そう言うとパーティーは再び力を集結し、車輪モンスターの上に雷岩石を井戸へぶち込むと賢者が井戸に蓋をするように強力な結界魔法を張った。
空を飛べる車輪モンスターだが流石に岩石モンスターの重みには耐えきれず水中へと沈む。堪らず苦手な水から脱出しようと更に出力を上げる。その膨大な熱量に岩石モンスターがもがき稲妻を放電し更に水温は急上昇するが井戸の蓋は結界で塞がれ密封状態だ。
やがて地響きが鳴りパーティーは外へと避難する。
臨界点から水蒸気爆発を誘発させ二匹のモンスターを倒したのだった。
残りはラスボスのみだ。
再び裏側の勝手口に向かうと先程の水蒸気爆発により屋根が全て吹き飛んでいた。
凄まじい威力だ。
パーティーは体力と魔力を全回復させると再度ラスボスに挑む。
先程感じた冷気は感じない。いける‼
そう直感したパーティーはラスボスに斬り掛かる。
手応えありだ‼ ヤツも霧状になれないでいる。
だが、何度ヤツの腕を斬り落としても再生する。胴体を斬りつけても瞬く間に治癒してしまう。超暴発魔法でヤツをバラバラにしても結果は同じだ。
こいつに弱点はないのか? まさか不死身の神だとでも……
するとまたしても声が響いた。例のあの声だ‼
「まずは右腕真ん中、次に左腕下!時間内じゃないとまた再生するぞ。急げ‼」
夢の中の自分にアドバイスをするのもおかしな話しだがそうするしかないような設定だ。
そうして全ての腕を斬り落とすと賢者が結界魔法でヤツを箱状の魔方陣に閉じ込める。
ヤツはもがき苦悶の表情を浮かべる。
だが邪神は滅ぼすべき存在だ。
暫くして閉じ込められていた邪神はやがて無数のサイコロのように崩れ落ち、やがて形状を失った。
ほんのわずかに残った欠片が蠢き 声なき断末魔が虚しく感じた。