主人公は人食い
朝、普通に学校に登校する、中学1年の夏。
みんなと違うのは、私が人食いってことだけ。
そして····ピーンポーン。
「志乃~。早くしろよ~」
「友君!分かってるよ~」
近いうちに、この、相沢友を食べようと思いま~す!
私の幼馴染。
人食いになる前に知り合った男の子。
なぜ友君は今まで食べなかったと言うと、性格がいいからだよ。
そんな人が、私ともっと仲良くなってから正体を知ったらどんな顔をするんだろう?
目標は友君が私に告白するまで待つこと。
それまでは食べない。
私、結構かわいいんだよ~。
楽しみだね~。
「ごめんね!いっつも迎えに来てもらって」
「昔からの付き合いだからな~、もう慣れたよ!」
ニッと笑う。
友君はモテモテ~。
優しいしね。
こうやって毎朝迎えに来てくれてるのも私に親がいなくて心配しているから。
食べたんだけどね。
「なぁ志乃、お前ちゃんと食べてるか?」
「食べてるよ。毎日たくさん!」
人間をね。
「ねぇ、友君は好きな子とかいるの?」
「お前ストレートだな。いないよ。そう言うお前は?」
「えへっ!募集中!」
「何だよそれ」
いつもと変わらないけど、きっと友君は少しずつ変わってきてる。
さてと、今日は誰を食べよう。
「「おはよ~」」
「おう、来たかラブラブコンビ!」
「はぁ~!?だ、誰がだよ!た、ただの幼馴染だ!」
「そ、そうだよ!確かに友君は優しいしかっこいいけど····」
「わあああああああ!その話終わり!」
慌ててる慌ててる。
「それは置いといて岸田君、何か話したいことでもあるのかな?」
「おう!さすが日高!勘が鋭いな~。実は、明日肝試しすることななったんだけどさぁ、お前らも来る?」
お、これは絶好のチャンス!
よくやったよ岸田君。
「私はいいけど····友君は?」
「志乃が行くなら····行ってやってもいいぞ」
「やった~!」
「ちなみに、ルートは裏山に入って神社まで行ったら戻ってくるんだけど、道分かるか?」
「私、分かんないかも」
「ん?なら志乃は俺とペアでいいか?道、分かるし」
その言葉を待ってたんだよ。
「友君が!?やった~!」
「ま、まぁな!また家まで迎えに行ってやるよ!」
「ありがと~」
「ケッ!リア充爆発しろ!」
「みんな聞け!また失踪したらしいぞ!ちょっとテレビつけろ!」
あ、確か昨日は他の学校の男子生徒を食べたんだ。
自分の学校の生徒ばっか食べて学校が潰れたら困るからね。
お得意の色仕掛けで、一人でフラフラしているところを「家に野良猫が入り込んで来たので助けてください!」なんて言ったら簡単に引っ掛かってくれたよ。
ほらね、テレビにも出てるでしょ?
「志乃、お前気を付けろよ」
「私は大丈夫だよ!友君もいるしね!」
「頼りにされるのは嬉しいんだけど、失踪以外にも、最近は殺人も多いんだぞ」
「え?」
「ニュース見てみ」
本当だ。
凶器はさまざま。
しかもすごく残酷な殺され方だ。
しかも二人。
でも、なんか違和感あるな。
「かわいそうだね····」
「うん····」
「怖いね····」
「大丈夫、志乃は俺が守るから」
「····うん」
先に言っておこう。
告白は近い!
*****
翌朝、今日の夜は肝試し、友君にいっぱいアピールして告白してもらうぞ~!
そして食べるぞ~!
あ、ニュースだ。
また殺人事件。
昨日と同じく二人。
何が目的なんだろう。
私は腹ごしらえだけどね。
でも、やっぱり違和感あるな~。
*****
ピーンポーン
「友君!ちょっと早かったね!もしかして今日の朝から楽しみにしてた?」
「ちょっとな。そんな薄着で大丈夫か?今から肝試しだぞ」
「大丈夫!夏だし!そんなことより速く行こ!」
こっちはさっさと告白されて恐怖に震える友君の顔を見たいの!
「はいはい。あ、岸田から聞いたんだけど、お化け役とかはいないらしいぞ」
「じゃあ、友君と二人きりだね!」
好都合!
岸田君最強!
友君の次は岸田君を食べよう。
「お前なー。そういえば志乃、暗いとこ大丈夫か?」
「····ちょっと心配かな」
親に捨てられてから暗闇が怖くなった設定だからね。
そんなこと全然ないけどね。
「そっか、やばいって思ったらすぐ言えよ。助けてやるからな」
「うん!頼りにしてるよ!」
*****
「お!さっそく二人で登場か!お熱いね~」
「うるさいな~。で、誰から行く?」
「別に誰からでもいいんだけど····」
「はいはい!私と友君が行くよ!」
速く速く速く!
「え!?ちょっと待て!まずみんなの様子見てからの方がいいだろ!だってお前暗いとこダ····」
「大丈夫だよ!友君がいるし、懐中電灯もあるもん!」
懐中電灯は電池ギリギリだけどね。
「志乃····。はぁー、分かったよ。いいか?絶対離れるなよ?」
「うん!ありがとう!」
*****
「やっぱり結構暗いな。大丈夫か?」
「なんとかね」
まったく、神社まで行ってもう折り返してるのにまだ懐中電灯消えないの?
「なぁ、俺さぁ、志乃に隠してることあるんだけど····聞いてくれるか?」
待ってました!
「うん····」
「あのさ····俺実は····」
カチカチパチッ!
え!?懐中電灯消えた!?タイミング悪!もうヤケクソだ!
「あ····暗い····嫌····」
「え、志乃?」
そしてうずくまる!
「嫌だ····嫌だ嫌だ!パパ~、ママ~。行かないで····」
「お、おい落ち着けって」
「誰か····助けて····助けてよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ぎゅっ!
きーたー!
「俺が!ずっと傍にいるから!俺がお前を守るから!俺、志乃のこと好き!」
「友君····私も、友君が大好き!」
やったー!
「今日は一緒にいてくれる?1人は怖いの」
「····うん。そうしよう····」
*****
ついに····友君を家に入れるぞー!
後ろ向いたらバッドで気絶させて地下室に運んで起きたら表情を楽しみながら食べよう!
「ほら、あがって」
「お、おう。おじゃまします」
よし、今ならこのバッドで殴れる!
はぁ~永かったな~今まで!
少し眠っててね、友君。
ブンッ! パシ!
「え····」
驚いた、だって素手でバッドを受け止めたから。
「志乃····今俺を····殺そうとした?」
ガンッ!
「カハッ!」
私は友君に首を掴まれ壁に抑え付けられた。
「や、やめて····苦しい····」
「どうしてだ····どうして志乃も他の女も俺の愛が分からねぇんだよおおおおおおおお!俺の愛を分からない女なんていらない!」
友君はポッケトからナイフを取り出した。
大きく振りかぶった。
他の女····ああ····ニュースの違和感が分かったよ。
殺された人は全員、同い年ぐらいの女の子だ。
グサッ····
グサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサ
*****
あ~あ、この前またやっちゃったよ。
まさか殺されるとは思わなかったよ。
あの時、廊下の隅に鏡がなかったら俺死んでただろうな。
志乃は良い女だったのに。
まいっか!
今更、悔やんでも仕方ないだろう!
それに、これまで何人の女を殺して来たと思う?
数えきれないよ。
どんなに相手に合わせたって最後にはいつも捨てられる。
だったらさ、もう二度とそんな女に会わないように殺しちゃえばいいんだよ。
やっぱり親が邪魔だったから殺したしね。
それから俺は誰かに愛されることがなかったから女を見つけて俺の愛が分からなかったら殺すの繰り返し。
志乃とは幼稚園からの付き合いだったから俺の愛なんて伝わらないかとも思ったけど、肝試しの時の甘えようをみたら、気が変わった。
結局殺したけど。
そういえば、あれから失踪事件のニュース見なくなったな。
もしかしたら、志乃が犯人だったり!
だったら何のためにだ?
まぁ、そんなことはどうでもいいけどね。
今は····
「友~、お待たせ~。ごめんね!遅れちゃって!」
「ううん。俺も今来たとこ」
俺の愛を分かってくれる運命の人を探そうか。
完