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第九話

遅くなって申し訳ありません

「一体どうしたんだ?」


膝に手をつき息を切らしている女性に、慧音が事情を問いかける


「実は…絵里がいないんです!」


絵里というのは、女性の娘で、この寺子屋に通っている子供の一人である。


「落ち着いてください。気がついたのはいつからですか?」


蒼夜が女性を落ち着かせながら更に事情を聞き出す。


「今日の朝は一緒にいて、つい一時間ほど前から見当たらなくて…里中を探してもいなくて……」


「とすると…まさか、里の外か!?」


「慧音さん!外を見てきます!今から外を回れば見つかる可能性も上がります!」


「しかし、お前一人だけには…。私も出るぞ」


蒼夜が駆け出そうとするのを止める慧音。


「慧音さんは里の男達を止めてください。絶対あの人たちは里から出て探そうとしますから」


「………わかった、気をつけろよ?何かあったら迷わず引き返せ」


「了解」


そう言うと、蒼夜は飛び上がり里の外へ向かった。


「………さて、里の男達を見張るとするか」


同時に、慧音も里の中心へと向かうのであった。


 数時間後 


「どこだ………?」


蒼夜は魔法の森に降り立った。


ほかの場所は基本的に見晴らしがいいのだが、そこには見当たらず、また、魔法の森は上から見下ろすことは不可能で、蒼夜は飛び方の問題であまり低空飛行はできなかったため、現在は地上に降り立って探索をしていた。


「絵里ー!絵里ー!どこだー!」


両手を口元にあて、声を響かせながら歩き回る蒼夜。


そのまま数十分歩いていると、蒼夜は森の奥に女性を発見した。


「すみません!あの、このくらいの女の子を見かけませんでしたか?」


蒼夜が身振り手値ぶりで絵里の特徴を伝える蒼夜。


「あら………それなら、さっきそっちに歩いていくのを見たわよ?なんだか、何かに引き寄せられているみたいだったわ」


女性は片手に本を抱えながら森の奥を指さす。


「ありがとうございます!」


急いで女性が指さした方向に向かおうとしたとき、一つの疑問が生まれた。


「(ん?なんでこんなところに人がいるんだ?)」


そのとき、


ビュン!


「うわ!?」


蒼夜の横をものすごい速度で蹴りが通り過ぎた。


「あらまあ、外れてしまいましたか」


「な!」


女性は左手に本を抱えたまま更に蹴りを繰り出す。


「なんなんだよ!」


「うーん、やはり普通に動いては駄目ですね」


そう言うと、女性は抱えていた本を開くと、ページに右手をあて、呟いた。


「参照「シンデレラ」、発動術式「魔法の靴

マジックブーツ

」」


そう呟くと、女性の靴が光り、透明な薄い膜を纏う。


「さあ、続けましょうか」


女性がゆっくりと一歩を踏み出した………と思った瞬間、突然目の前に現れる。


「ふっ!」


そのまま蒼夜の腹に膝蹴りを決め、更に回し蹴りを叩き込む。


「グハッ!!」



吹き飛ばされた蒼夜は木に突っ込む。


「やっぱり私はこうしないと調子が出ませんね」


女性は再び本を開くと、また詠唱を始める。


「参照「ハーメルンの笛吹き」、発動術式「子供呼びの笛

チャイルドコールウィソル

」」


今度は女性の右手に光か集まり、笛を形成した。


女性はそれを口元に当て、吹き始める。


あたりに不思議な音色が広がり、しばらくすると、奥から少女が出てくる。


「さあ、私の元においで」


少女は目線が定まっておらず、笛の音につられるように女性の元へ向かってきた。


「うぅ……うぁ…」


そのとき、先程吹き飛ばされた蒼夜が、目覚め、上体を起こそうとする。


「おや?起きましたか。どうやら計画の障害になりそうだったので排除させていただきましたが、これなら大丈夫そうですね」


女性はそのまま少女の肩に手を置き、三度本を開く、


「参照「浦島太郎」、発動術式「若さ奪う玉手箱」」


女性は手に現れた箱を少女に渡す。


そのとき、蒼夜が上体を起こし、少女…絵里に手を伸ばす。


「開けるな…」


しかし、絵里は箱に手をかけ、開けた。


その瞬間、箱から煙が飛び出し、少女を包む。


煙に包まれた少女の体は段々と老いていき、老いていくごとに箱に光が吸収された。


「やめろ……」


そして、箱が光を吸収し終えると、後には白い白骨のみが残った。


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