第七話
久しぶりの投稿
「………、三分二十四秒。記録更新だよ」
幻想郷に来てから半年後の早朝、蒼夜は日課の弾幕を放つ練習をしていた。
結局、幻想郷に残ることになった蒼夜は、現在萃香の家に居候する形で修行をしている。
修行の内容は、弾幕を可能な限り作成し、それを長時間維持する訓練。
「よし!」
「これだけ維持できれば充分だね。量も問題ないし、これで弾幕ごっこができるよ」
「よっしゃ!萃香!本当にありがとう!」
萃香からの言葉に、思わずガッツポーズをとる蒼夜。
「私も人に弾幕の撃ち方を教えるのは初めてだだったから、なかなか楽しかったよ。じゃ、次の段階に移ろうか」
「ん?他に何かあったか?」
てっきり弾幕ごっこを始めるものだとばかり思っていた蒼夜は首を傾げる。
「いくら弾幕が撃てても、それだけじゃ人里の外では生き残れないさ。しっかり格闘戦の技術も磨いてもらうよ」
「そういうことか、おし!頑張るか!」
「その意気だよ。ところで、蒼夜は何か得意な得物はあるかい?」
「それなら、これかな」
蒼夜が懐から取り出すのは、最後に外界にでたときに持ってきた一対のナイフ。
「ふうん……なかなかの業物だね」
ナイフをじっくり見た後、萃香は高評価をだす。
「わかるのか」
「鬼の知り合いに鍛冶師がいてね。それで昔少しだけ教えてもらったのさ」
「へえ、で、俺はこれで何をすればいいんだ?」
「前に身体能力強化の仕方は教えただろう?それを使って良いから、私と模擬戦だ」
蒼夜は、以前の修行で霊力による身体強化の仕方を教わっていた。
博麗霊夢も使う技で、体の強化したい部分に霊力を流すことで、一時的に身体能力を強化する技である。
「……言っとくけど、こいつは鞘とか無いぞ?普段は適当に布を巻いてるだけだし」
そう言ってナイフに巻いている布を見せる蒼夜。
「構わないよ。あんたみたいな素人に斬られるほど私は弱くないからね」
蒼夜の力を見極めるため、萃香はわざと挑発するような言動をとった。
「……OK、なら、意地でも当ててやるよ」
萃香の目論見通り、蒼夜はやる気をだす。
「じゃあ、早速始めようか」
そういって、二人は距離をとる。
「始め!!」
そう言うが早いか、拳を握って殴りかかる萃香。
「うわっ!?」
それを後ろに転がるように回避する蒼夜は、そのまま再び距離をとる。
「素人でこれをよけられるなら及第点だ。さ、次はあんたの番だよ」
「それなら、当たれ!」
立ち上がった蒼夜は、ナイフをそれぞれの手に持ち、それを前に突き出しながら突っ込む。
「点の攻撃は、威力は高くても当てにくいだけだよ!」
それを蒼夜から見て右に半歩ずれることで避けようとする萃香だったが、
「そんなの百も承知だ!」
蒼夜は前に突き出した手を、前にある扉をこじ開ける様にそれぞれ左右に振る。
「なっ!?」
萃香はそれを予測していなかったのか、わずかに対応が遅れ、体制が崩れる。
「そこ!」
ナイフを持ったまま右手で萃香を掴み、進む力も利用して前へと引っ張る。
体の小ささが災いして、引っ張られた萃香は蒼夜の前にでる形となり、
「くっ!?」
そのまま体当たりをくらった。
しかし、萃香は蒼夜の体を右手で掴むと、そのまま後ろに放り投げた。
「いてっ!」
「……ふう、思わず投げちゃったけど、蒼夜、大丈夫かい?」
「ああ、何とかな。で、当ててやったぞ、一発」
「最初でそこまでやれるなんてね。本当に初めてなのかい?」
萃香から褒められるが、蒼夜はあまり喜んではいなかった。
「ま、まあな(まさかゲームを一部真似しただけなんて言えないよな……)」
そんな蒼夜の様子を知ってか知らずか、萃香の口からとんでもない内容がとびだす。
「じゃあ、適当に妖怪を釣ってくるから、少し戦ってみな」
「は?」
萃香のとんでもない提案に、思わず蒼夜は一瞬思考が止まった。
「じゃ、ちょっと待ってな」
そう言い残し、萃香は霧になって霧散した。
「どうしろって言うんだよ……」
蒼夜はとりあえず地面に座り、萃香の帰りを待った。
数分後、萃香は両手で何かを持ち上げてこちらに走ってきた。
「って、なんだあれ!?」
萃香が持ち上げていたのは、全長三メートル位の巨大ムカデだった。
萃香はそれを上下逆さまに持ち上げているため、全く身動きがとれない状態だった。
「ほい」
そんな軽い声とともに、萃香はムカデを蒼夜に投げつける。
そのまま着地したムカデは、しばらく蠢いた後、どうにか体をひっくり返し、蒼夜の方を向いた。
「そいつを倒して見せな!なに、心配はいらないよ!危なくなったら私が倒すから!」
「そういう問題じゃ無いだr「キシャアアア!」危な!?」
蒼夜が萃香に抗議しようとすると、ムカデが襲いかかる。
「くそ!文句はこいつを片付けた後だ」
蒼夜はナイフを持ち、ムカデに向かう。
「キシャァァアア!」
「っ!そこ!」
ムカデの突進をギリギリで避けると、そのままナイフで斬りつける。
しかし、ナイフはムカデの甲殻に当たり、甲高い音とともにはじかれる。
「堅っ!」
思った以上の衝撃が手首にかかり、動きが止まった瞬間、ムカデが先ほどと同じように突進をしてきた。
それを避けた蒼夜は、続いて弾幕を放とうとするが、
「弾幕は使うんじゃないよ!」
その瞬間、萃香に怒鳴られる。
「わかったよ。…ったく、なんて硬さだ。……こうなったら…」
三度の突進を避けた蒼夜は、今度はムカデの節を狙いナイフで斬りつけた。
今度ははじかれることはなく、ムカデにダメージを与えることに成功する。
「キシャァァア」
あまり生命力は強くないのか、先ほどの一撃で少し弱るムカデ。
「よし!」
蒼夜が次の攻撃に移ろうとすると、ムカデは蒼夜を避けるように動き、その瞬間、素早い動きで蒼夜に巻き付こうとしてきた。
「な!?」
蒼夜は自らの足を払うことでその拘束を避ける。
「ったく、危ないな」
蒼夜は立ち上がると、ムカデの突進を三度避ける。
「おらぁ!」
そのままムカデの節を回転するように切り裂く。
「ギャシャァアァ」
ムカデが痛みに動きを止めた瞬間、蒼夜はナイフを頭上でクロスさせる。
「うおぉぉお!!」
蒼夜は両腕に霊力を流し、ナイフをひたすら動かし、ムカデを切断した。
「……ハァ、ハァ…」
「お疲れさん。なかなか良い動きじゃないか」
何時の間に取ってきたのか、蒼夜に水とタオルを渡す萃香。
タオルで汗を軽く拭き、水を飲んだ蒼夜は地面に寝転がる。
「…やばい……霊力がもう無い…」
「じゃ、今日はこのくらいで終わりにしようか。さ、まだまだ一日は終わってないよ」
そう言って蒼夜に手をさしのべる萃香。
「了解…」
蒼夜はその手をとり、立ち上がり、家へと戻っていった。
蒼夜の攻撃はそれぞれモンハンの武器出し攻撃、回転切り、鬼人乱舞をイメージしてください。