第三話
でけた。
「っと、蒼夜、着いたぞ」
「……ようやく着いたか。すごく恥ずかしかった」
それもそのはず、彼は見た目幼女の萃香に抱えられて此処まできたのだ。
彼が連れてこられたのは、先程いた民家のようにこれまた古くさい神社だった。
しかし、萃香が言う巫女の姿はどこにも見あたらない。
「じゃあ、早速巫女を呼ぶか。霊夢、いるか?」
萃香はここの巫女であろう人物の名前を呼ぶが、数分待っても返事がこない。
「萃香、もしかして留守なんじゃねえか?」
「あれ、いないのか?おーい!霊夢ー!いーる「うるさいわよ!!」なんだ、いるじゃないか」
「あんたねぇ。人が居留守使ってるのわからないの!?どうせまた酒を飲みに……って、萃香?こいつは?」
そう言いながら現れたのは一人の少女。
赤と白の配色の巫女服を来ているが、外界のものとは違い、腋のところが大きく開いているのがとても印象的だ。
霊夢は蒼夜を見て首を傾げる。
「こいつは蒼夜って言って、どうやら外来人みたいなんだ」
そう言いながら蒼夜を地に下ろす萃香。
「どうも、神崎蒼夜だ」
「あー。そう言う事ね。こんな神社まで、わざわざご苦労なことね。ところで、なんであんた萃香に抱えられてたの?」
「実は此処にくる直前に事故にあってな、まだ体がうまく動かないんだ」
「ふーん。まあいいわ。じゃあ、結界を開くわよ」
「結界?」
「……萃香?あんた説明してなかったの?」
「そう言うのは霊夢の仕事だろ」
「はぁ~………めんどくさい。いい?この幻想郷は外界から入ってこられないように結界を貼っているの。で、その結界を維持、管理するのがここの巫女、つまり私の役目」
「へぇ。それはすごいな」
「そうよ。だからお賽銭を寄越しなさい」
そう言って蒼夜に手を伸ばす霊夢。
「なら…ほい」
その姿に苦笑しながらも、450円を渡す蒼夜。
「あら、あなたいい人ね。もしまた迷い込んだら、そのときはまた手伝ってあげるわ」
「現金なやつだな」
「それじゃあ、今度こそ結界を開くわよ?」
「ああ、頼む」
「……はい。そこの鳥居をくぐれば帰れるわ。あまり長くは開けないから早くして」
「すまねえな。…じゃあな、萃香」
「ああ、もしまた会うことがあったらそのときは一緒に酒を飲もうじゃないか」
「それは遠慮しとく。あいにく俺は未成年何でね。法律に反する気はない………といいたいところだが、次に会えてもまた会えるかわからないんだ、その時は飲まさせてもらうよ」
「おう!極上の一本を用意してやるよ!」
萃香は本当に嬉しそうな顔をしながら言った。
「それは楽しみだな。もし俺がまた此処にこれたら、そのときは目一杯だ」
「わかった。約束だぞ?」
「……ねぇ。早くしてくれない?そろそろ限界」
「すまない…………じゃあな!」
そう言って、蒼夜は鳥居をくぐり、外界に帰って行った。
「……あれ?全く景色が変わらないんだが……」
…………はずだった。
また次回。