第十話
カランカラン
「うぅ……あぁ……」
目の前で人が白骨化する様子を目の当たりにしてしまった蒼夜。
その瞬間、蒼夜は震え始め、蒼夜の影が蠢き始めた。
「フフフ!これで私の悲願が!」
それに気づかないまま、女性は箱を手に取ると、また詠唱をする。
「参照「竹取物語」、発動術式「不完全なる蓬莱の薬」!」
箱の光は、箱の中心に集められ、1つの丸薬となった。
「これで、私は不老不死に……!」
ゴクリ
女性は丸薬を手に取ると、それを一息に飲み込んだ。
「…………あぁ、これが不老不死…」
その時、
ズバッ!
女性を黒い棘が貫く。
「…………殺す」
蒼夜がゆっくりと立ち上がる。
「ガッ!?」
蒼夜が右手を振るうと、それに合わせて影の棘が動き、女性を木に叩きつける。
「グフッ!」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」
蒼夜が今度は両手を振るうと、再び周りの影が蠢き出す。
「これは……さしずめ、「影を操る程度の能力」というところですか…ゴフッ」
女性は、血を吐きながらも立ち上がろうとするが、蒼夜が右手を上げると女性を影が取り囲む。
そして、蒼夜が手を振りおろした瞬間、女性を、全方位から影が貫いた。
しかし、
「参照「人魚姫」、発動術式「肉体変化
メタモルフォーゼ
」」
影の中から声が聞こえ、中からスライムのようなものが現れた。
影の外にでたスライムは、しばらく蠢くと女性の形になった。
「さて、観察もあきましたし、止めをさしますか」
女性は再び蒼夜に接近すると、そのまま足を振り上げ頭を蹴る。
「うっ……」
蒼夜はその一撃で意識を奪われ倒れ込む。
その蒼夜を女性は蹴りで吹き飛ばす。
しかし、その先には蒼夜が最初に使用した棘が残っており…
グサッ!
蒼夜は体を自分が出した棘に貫かれ、動きを止めた。
「………ふぅ、ちょうどいい実験になりましたね。薬の効果も試せましたし、帰りますか」
女性は動かなかくなった蒼夜に背を向け、その場を立ち去った。
それから数分後。
「ん〜ふ〜ふふ〜ん………って、蒼夜!?」
蒼夜が倒れているところに、ルーミアが通りかかった。
ルーミアも寺子屋に通っており、その関係で顔見知りなのであった。
「んー、これはもうだめかなぁ………と、これは…」
蒼夜の近くに降り立ったルーミアは、蒼夜をみるが、既に虫の息であり、助かるとは到底思えなかった。
妖怪である彼女にとっては人間が死ぬのは日常であり、少し悲しくはあったが、付き合いが浅いこともあり割り切ることはできた。
そして、ルーミアは蒼夜が出した影の残骸に目を奪われた。
「………美味しそう…」
ルーミアは闇を操る宵闇の妖怪であり、その食事は闇、それを人間を食べることで間接的に摂取してはいるものの、効率はよくない。
そして、自分が操る闇を食べることもできない。
また、闇の中に影は生まれ、影によって闇は存在することから、彼女は影を食べることもできた。
だが、地面に映る影は食べることはできず、ある意味机上の空論であった。
そんな彼女にとって、蒼夜が生み出したこの影は上質な食料であったのだ。
「食べても………いいよね?」
ルーミアは周りを見渡すと、ゆっくりと影に近づき、齧り付く。
「〜〜〜っ!美味しい〜!」
そのまま彼女は影を食べ続け、ついでに蒼夜を棘から解放した。
「………ふぁ〜あ…これだけ食べたら、眠くなってきた…」
ルーミアは蒼夜の隣に寝そべると、そのまま寝息を立てて寝始めた。
その時、ルーミアから大量の闇が生み出され、ルーミアを包む繭を形成した。
数分後、その繭に唐突に亀裂が入る。
亀裂はそのまま広がり、遂に砕け散る。
その中から現れたのは、ルーミアがそのまま成長したような姿の女性。
「〜〜〜zzZ〜」
彼女は自分の体が成長したことに気づかないまま寝続けるのであった。




