第四伝説《気まぐれの炎術師》
2人の前に現れた人物は、やや高身長で耳が尖っていた。
そう、それは────
「長命族か……」
「ククッ……、ご名答」
───長命族だった。
しかし、様子がおかしい。
基本的に長命族はのんびり屋が多い筈だが、目の前の長命族は殺気に満ちた目をしているのだ。
左手で燃えている炎が、その感情を映すように揺らめく。
「この町を………音闇の町をこんなにしたのはお前なんか!?」
「ククッ……そうだと言ったら、どうする?」
「そ、それは……」
どうやら風鱗は、何も考えていなかったらしい。
どうしたもんかと風鱗が悩んでいると、加命が長命族へと歩み寄った。
「加命! 危ないべ!?」
「………大丈夫。きっと、話せば分かってくれるよ……」
加命は長命族の目の前に立つと、視線を合わせたまま話し掛けた。
「………どうか、その炎を鎮めて……下さい。どのような理由が……あったとしても……、私たちが戦う必要はない筈です……!」
「戦う必要はない? ククッ……馬鹿な人間には分からねェだろうなァ」
「えっ……きゃっ!?」
長命族は突然、加命と距離を取るとパチンッと指を鳴らした。
すると、加命を取り囲むように炎の渦が燃え上がったのだ。
「加命!!!」
「ククク……ハハハハハッ! 人間なんて、塵も残さず燃え尽きちまえ!」
「くっ……! (流石にオイラも炎の中に飛び込んだら死んでまうべ。どうすれば……!?)」
たじろぐ間にも、長命族は少しずつ風鱗へと近付いていく。
「クククッ……俺の名は視闇。気まぐれ屋な長命族だ。…………さァ、殺し合いの始まりだぜェッ!」
そう叫んだ視闇はニタァと不気味な笑みを浮かべた。
その目は、炎と同じ緋色だった。
次回 緑龍伝
第五伝説《風鱗の力、緑の翼》