表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第一伝説《オイラと剣炎師匠と女子(おなご)》


とある村のとある一角…。

そこで老人と少年が拳を交えていた。


「まだまだ甘い! 右の脇がガラ空きじゃぞ!」

「分かったべ、師匠!」


(今日こそ、ぜってー師匠を越えてみせるべ…!)


少年の名は風鱗(ふうりん)

風鱗の育ての親であり師匠でもある重腕族(ドワーフ)の老人、剣炎(けんえん)に今日も稽古をつけてもらっている。

剣炎を越えることが風鱗の目標だが、一瞬の隙に懐に潜り込まれてしまい、自分の腹に強烈な拳が沈んだのが分かった。


「ぐはっ…」


その一撃は重く、全身に響き渡るようだった。

数年前の自分なら、確実に意識を手放していただろう。

腹を押さえつつ、ゆっくりと風鱗は立ち上がった。


「ほぅ、ワシの渾身の一撃を耐えるようになったか。じゃが………立っているので精一杯のようじゃな」

「へへ…、やっぱ師匠には……敵わねぇ…や……」


風鱗はその場に座り込み、力なく笑った。

ちょっぴり成長した自分を嬉しく思いながらも、師匠を越えられなかった悔しさが入り交じる。


「風鱗よ、身体を休めたらワシに声を掛けてくれんか。会わせたい客人がおるのじゃ」

「客人…? わ、分かったべ」


(オイラに客人かぁ…)


先に帰っていく師匠の背中を見送りつつ、腹の痛みが引いてから風鱗も後を追ったのだった。




「こちらが、お前に会わせたかった客人じゃ」


…師匠の所に戻ったら、早速客人とやらと顔を合わせることになった。

男と少女の2人組で、やや顔つきが似ていることから親子だと断定出来るだろう。


「娘を知人の家に預けたいのですが、知人の住む町はとても遠いのです。しかも最近は質の悪い奴等がうろついているそうなので、娘の護衛を頼みたいのですが…」


少女の父親は、藁にもすがるような目を剣炎に向ける。

それだけ娘を心配している証拠だろう。


「成る程、そういうことでしたら心配ございませんぞ!」


父親の不安を余所に、師匠は即答だった。


「ワシの弟子が、安全に娘さんを送り届けますからな!」「…え゛っ!? 師匠、流石にそれは…」

「そうですか! それは頼もしい限りです!」

「ちょっ…」


風鱗には訳が分からなかった。

この父親は師匠に護衛を頼んだのでは?

というか、修行中の身である自分でも構わないというのか…!?


「し、師匠…あの…」

「お前には近々外の世界を見せようと思っていたからな、これは良い機会じゃろう。護衛を通して己を鍛え、逞しくなって帰って来るがよい」

「……は、はい!」

「良い返事じゃな。護衛は明日からじゃ、しっかり準備しておくのじゃぞ」


…その場の流れで風鱗が行くことになり、とりあえず必要な荷物だけまとめておいた。


女子おなごの護衛かぁ…。えへへっ」


不謹慎にも、ちょっぴりワクワクしている自分がいるのだった。




次回 緑龍伝

第二伝説《語り継がれている緑龍伝説》


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ