表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

明基 龍海  和風シリーズ

笛の音

作者: 明基龍海

 屋敷の中から美しい笛の音が聞こえる。

 笛を吹いているのは、一人の少年。

 一見見ると美しい少女にも見える整った顔立ち。

「また笛を吹いているのか?」

「ええ、聞きます?……お耳汚しになるかもしれませんが?」

「……」

 声をかけてきたのはこの屋敷の主だ。

 彼は気まぐれにこの少年を拾って育てている。いや、気まぐれなどではないかもしれない。あの時、敵国てきこくに焼かれた村のただ一人の生き残りの彼は血に汚れながらも、どこかりんとしていた。元は神社に住んでいたらしい……

「何で笛の吹くんだ?」

 何とは無しにきいてみた。

 特に意味はない・・・・・・と思う。

「何ででしょうね~? 私にも分かりません。」

 だが、少年はそう言って苦笑した。

 本当に分からないのだという。

 あえて言うなら呼吸をするのと同じくらい、気がついたら自然に―――そう、自然に笛を吹いているのだという。

 そこまで言うと何かを思い出したようにああ、と少年はつぶやいた。

「理由、そう理由ですね。」

 そこまで言って少年はふわりと微笑んだ。

「奇麗だから、じゃないですか?」

「何だ、それは」

 流石に主人もその言葉には苦笑を隠せなかった。

 屋敷には今日も笛の音が響いている。


 ―――ふむ、確かに美しいのかも知れぬな。

 主人がそう思ったのは彼のみぞ知る。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ