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帰宅してから、僕はすぐに自分の部屋に閉じこもった。僕はもう疲れ切っていた、自分の気持ちを偽りミドリと付き合っていたが、それももう終わった。結果として彼女を傷つけることになってしまったが、自分の気持ちに正直になった。それは良かったことなんだなと思う。僕の心はもう限界だった、これ以上、自分を偽ると本当の自分を二度と取り戻せなくなっていたと思う。これで心の重荷が一つおろせた。だが、僕には早くおろさねばならない重しがもう一つある。そう、絶対に目をそらすことができない重しが。僕は今からタケに電話をする。思えば僕たちは異常な関係であった、昼間の二人はないものとして、親友として電話越しに会話をした。それは二人の暗黙の関係であった。しかし、そう思っていたのは僕だけだったのかもしれない。僕が勝手に作りあげた都合のいい解釈、現実から目をそらすための必死に繕った隠れ蓑。僕はその中から現実をブルブル震えながら見ていた。タケはずっと待っていたのかもしれない、親友の僕が助けてくれるのを。思えば、タケは昔からいじめにあうようなタイプではなかった。誰かにすごまれても言い返せる男だったはずだ。もしかすると、転校してきた初日、いきなり遠藤たちにからまれたとき、僕がタケを助けずに見て見ぬふりをしたことに絶望したのかもしれない。そんな風に考えながら部屋で布団にくるまりクヨクヨしていた僕に、遠藤たちにからまれたタケが僕を見つめる表情がまとわりつく。あの時のタケの表情に怒りや憤怒の色は見えなかった。ただただ、悲しそうな表情で僕を見つめる彼の顔があった。僕はあの表情を二度と忘れることができないであろう。もし、タケと和解できたとしても僕の脳裏に一生まとわりつくであろうあの表情、憐憫・同情、そんな感情もあの時のタケにはあったのであろう。そして、今も待っているのかもしれない、僕がタケを救い出すのを。タケにとって一番悲しいことは自分が親友だと思っていた人が、かくもあっさり自分を裏切ったことなどだ。僕たち思春期の少年少女にとって親友・恋人の存在はややもすると、親よりも大きいものなのだ。一番信頼していた人に裏切られ、いじめられる、それはおそらく人間の尊厳やアイデンティティをも破壊させたのかもしれない。そんな関係を今日終わりにする。僕たちはもう昔のように心から笑いあえないかもしれない、いや、できないであろう。しかし、決着をつけねばならないのだ、そして僕たちは現実と正面から向かい合わねばならないのだ。新たな一日のために。
携帯を開き、慣れ親しんだタケの番号を呼び出そうとしたとき、そのタケからの着信を告げた。こんな時まで俺たちは気が合うのかと苦笑をしながら、携帯に出た。
遅れてしまってすみません。