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運命ノ魔法  作者: Rorse
第1章~運命の出会い~
6/21

第6魔法~剣を持つ者の覚悟~

第6魔法~クラスリーグマッチ 覚悟~


クラスリーグマッチ。それはその名の通り、クラス対抗戦である。

まずはクラス内で戦い、代表者を決め、その代表者で争うと言ったものだ。

因みに雄斗は前クラスリーグマッチの覇者である。

その為、クラスからは目の敵にされているのだ。


「今年は俺が勝つぜ!首を洗って待ってろよ、雄斗!!」


「…どうせお前以外には雑魚しか居ないし…受けて立つ」


雄斗の言葉でクラスはざわつき始める。

聖太以外には雑魚しか居ないと言われればそうなるだろう。


「今の貴様の言葉…聞き逃すことはできんな…」


窓側から聞こえる声。その声の主は女の子だった。

雄斗はその言葉を無視し、欠伸(あくび)をしながら席に座った。


「話を聞け!貴様…私と尋常に決闘しろ!!」


「嫌だね、俺は無駄な事に力は使わないって決めてるんだよ。バーカ」


その女の子の髪の色は黒く長い、眼の色も黒だった。

制服をしっかりと着こなし、雰囲気はいうなれば武士。

今時の女子とはかけ離れ、オシャレなんてしていない。喋り方も古風だ。

そして何より雄斗と同じで、ジパン刀を帯刀している。


「何だと?貴様それでもジパン男児か!」


雄斗は口笛を吹き、無視する。

女の子はそんな雄斗を悔しそうに見る。

その時、廊下から何かが猛スピードで走ってくる音が聞こえてきた。


「ゆぅぅぅぅぅとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


そんな叫び声が聞こえた後、教室の扉が勢いよく開いた。


「雄斗!!雄斗ぉぉぉぉぉおおお!!心配してたのよぉぉぉ!!」


雄斗は思わず目を背ける。視線を空に向けた。


「…えと、あれ…誰なんだ?雄斗?」


しかし聖太の問いにも雄斗は振り向かない。完全に無視し続ける。

恥ずかしい。ただその感情だけが雄斗の中に渦巻いている。

しかしそんな雄斗の気持ちとは裏腹に向かってくる鈴音。そして雄斗に抱きつく。


「雄斗雄斗雄斗雄斗雄斗雄斗!!良かったよぉ~もう大丈夫なの?痛くない?苦しくない?」


必死に雄斗に話しかける鈴音。その顔は近く、雄斗の顔との間隔は5センチ位だ。


「顔が近ぇよ、俺は大丈夫だ。心配する―――――」


雄斗の言葉が遮られる。雄斗の唇に鈴音の唇が合わさったのだ。

またもクラスが騒然とする。そしてタイミング悪くヒュレスが入ってくる。


「はーいみんな~席につい…て…」


無論ヒュレスも言葉を失う。雄斗に至っては何が起こったのか分かってないようだ。

しばしの間クラス内にピンク色のオーラが漂う。

まだ昼。お茶の間にお伝えするには早過ぎると思う。だが…してる。


その行為の名は…キス。間接や普通のなど色々あるが…。

これは…その中でも最上ランク…ディープキスである!

しばらくの間誰も動かなかったが…雄斗に異変が起きていた。


急に顔色が悪くなり始めたのだ。それに…髪の色が少しづつ白くなっていく。

それに気づいた鈴音は唇を離すが、雄斗はその場に倒れてしまった。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




周りから聞こえるのは…大人の人たちの難しい話。

その中心にただ静かに体育座りをしている一人の少年。

少年はとても悲しそうな眼をしている。罪悪感、絶望、生気が全く感じられない。


そんな少年の服は脱がされ、体の至るところを調べられる。

少年の顔付きが急に変わった。それは…恐怖。

そんな日が毎日続く。少年の眼には日に日に生気が消えていった。

なすがまま、もはや少年に意志は無かった。


それからまた時間が経ち、少年の様子が変わってきた。

度重なる実験による障害。体が…男の体では無く、女の体になっていたのだ。

解放された時、少年はすでにボロボロだった。

体の隅々まで調べられた。無論、女の体の方もだ。


そして少女は…自分に魔法をかけた。変身魔法。その中でも性別。

その持続条件として、その少年は…女の子に近づく事が出来なくなった…。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「う…ん…ん?ここは…何処だ…」


雄斗は体を起こして辺りを見回す。すると、そこは保健室だと分かった。

まず雄斗近くにあった鏡で自分の髪の色を確認した。


「良かった…戻っては無いな…危なかった…」


雄斗はほっと溜息をつくと、伊冴无斬を腰に掛け、教室に戻った。

雄斗が教室に戻ると、クラス中から冷たい視線が送られた。

それはそうだろう。鈴音は特に人気な訳では無いが、目の前であんな事が起きたのだ。

羨ましいとか、悔しいとか、色々思う事はあるのだろう。


雄斗はそんな事を気にも留めずに自分の席に着く。

すると、チャイムが鳴る、次は魔法授業。雄斗達は外に出る。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「え~と、今日の魔法授業は、代表者選出試験の為の実践訓練をします」


グラウンドに集められた雄斗達に背伸びをしながら話すヒュレス。

今回のクラスリーグマッチは例年とは違い、2人1組のペアでやるらしい。

それぞれまずはペア作りを開始する。雄斗は木陰で座禅を組んでいた。


聖太はもうペアが決まっていた。それは…さっき雄斗に決闘を挑んだ女の子だ。

クラス全員のペアが決まった。雄斗1人を除いて…。


(一人か…こっちの方が楽かもしれないな…)


そんな事を思った雄斗。その時、何かが走ってくる音が…。


「すいませぇぇぇぇぇぇん!!遅れましたぁぁぁぁぁぁ!!」


校舎の裏から真っ直ぐこちらに走ってくる物体。それは女の子だった。


「…天之狭霧か…あいつホントにアホなんだな…」


雄斗はため息をつく。病気の雄斗より来るのが遅いのだ。それはため息もつく。

しかし、狭霧は真っ直ぐ雄斗の方に向かって走っていた。


「おいテメェ!こっち来んな!マジでやめ――――」


ドッカーーーンと大きな音がする。

一同が目をつぶる。雄斗は…狭霧の下敷きになっていた。

雄斗の顔には狭霧の胸が当たり、狭霧自身も何があったが気づいてない。


「テメェ…胸が地味にでかいんだな。あと柔らかいな」


「ふぇ?あれ?雄斗さん…何でここに…って、何言ってるんですかぁ!!」


胸を腕で囲うように押さえながら急いで起き上がる狭霧。雄斗も立ち上がる。

狭霧は顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせている。

怒ると言うよりも恥ずかしがっている状態だ。


「遅いよ~。ま、次から気を付けてね~。雄斗くん、狭霧さんとペアね」


ヒュレスの言葉に動揺する雄斗。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




ペア決め開始直後の事だ…。


「おい、ネズミ野郎。ちょっと良いか?」


雄斗はヒュレスと話していた。


「雄斗くん、あのね、せめてネズミ先生にしてくれない?…で、何かな?」


ちょっと困った顔をしたものの、直ぐに切り替えるヒュレス。


「俺はペアなんていらねぇ。一人で良い」


「…少し…人に頼ることも覚えた方がいいよ?まぁ、良いけどね」


雄斗はヒュレスに背を向け、木陰に向かって歩き出した。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「テメェ…何のつもりだ?」


最高に悪い眼つきでヒュレスを睨みつける雄斗。

しかしそれでもヒュレスは笑顔を絶やそうとしない。


「じゃぁ聖太くん、それと雄斗くんのペアで練習試合しよっか」


そして勝手に話を進めていくヒュレス。

もう諦めたのか、溜息をつきながら定位置に着く。





チーム戦の場合、一人が前衛、後は後衛なのだが…普通は前は剣士だ。

ノルーウェルとの共同戦でしかチーム戦など本当はやらない。


「…やるからには本気でやるぜ?俺の名前は…龍ヶ崎雄斗」


「私の名前は…護埼咲夜(ごさきさくや)。聖太とやら、手を出すな」


試合開始の合図が送られる。しかし両者とも動かない。

咲夜は剣を前に構える。雄斗は腕を組み、じっと相手を見据える。

すると、雄斗が口を開いた。


「テメェは…何の為に剣を振るうんだ?」


その言葉は重く、雄斗自身も真剣な顔をして聞いている。


「強くなる。ただその為だ、貴様こそどうなのだ!」


雄斗は顔を伏せた。その顔には陰りが出来ている。

そしてゆっくりと口を開く。


「俺は…何かを護るためにだ。その為なら、人だって…斬れる」


雄斗はそう言うと、伊冴无斬を構えた。

腕を引き、顔の横で剣を持ち、剣先を少し下げる

この構え、上段からの攻撃には強いが、使い勝手はあまりよろしくない構えだ。

そして、雄斗は目をつぶった。


「狭霧、俺を信じてろ。いいな?」


「はい!分かりました!頑張ってくにゃさい!」


やはり噛んでしまう。しかし雄斗の顔は、心なしか嬉しそうだった。

咲夜は雄斗に向かって突進してくる。しかし雄斗は動かない。

すると、咲夜の剣が雄斗に向かって振り下ろされる。


ガキンッと鉄と鉄がぶつかり合う音がした。

全員が目をつぶる。しかし、目を開けると、雄斗が剣を受け止めていた。

雄斗は構えを全く崩していない。目をつぶったまま動いてすらいない。


「テメェ…俺が動くとでも思ったか?それに、上段の構えに上段からの攻撃。アホかテメェ!!」


瞬時に眼を開け、剣を上に振り咲夜の剣を振り払う。

上段に剣を払われた咲夜の体勢は崩れ、胸や腹ががら空きになっている。

そこに的確に剣の柄で追撃を入れる雄斗。


腹に攻撃を食らった咲夜は聖太の居るところまで吹っ飛ばされる。

雄斗はまた剣を構え直し、目をつぶる。


「お前じゃ俺には勝てねぇよ。覚悟が違うからな」


「私とて…生半可な気持ちで使っている訳では――――」


咲夜が言おうとした瞬間、雄斗は静かに、しかし重く言った。


「お前に…人を殺すことが出来るか?」


その顔は、眼こそ閉じていたが…真剣な顔つきだった。

誰よりも知っている。人の死を。人の命の重さを。

だからこそ…雄斗は聞いたのだ。人を斬る覚悟があるのか…と。


「ある!強くなるためならば!貴様を!斬る覚悟くらい!」


そう言いながらまたも雄斗に向かって突進する咲夜。

雄斗は伊冴无斬を収め、一つの短剣を取り出した。

そして、雄斗に向かって袈裟斬りを繰り出す。雄斗は…その剣を左手で掴んだ。

咲夜も聖太も狭霧も観戦者達も驚く。剣を手で掴んでいるのだ、当り前だろう。

雄斗の手からは血が流れ出す。しかし雄斗の顔は全く変わらない。


(あわ)れみの眼、そんな眼でただ咲夜を見つめていた。

掴んでいた左手を下げ、咲夜の剣を地面に無理やり突き刺し、その上から足を乗せ、動かないようにした。

そして右手に持っていた短剣で、自分の左手の手首を切った。

勢いよく血が噴き出す。その血は咲夜の体にかかる。


「血ってのは…こういう色してんだぜ?」


咲夜は、その場に倒れてしまった。気絶したようだ。


「血も知らない、人を斬る覚悟も無いやつに、剣を使う資格はない」


しかし、そんな事を言う雄斗の体も既にマズイ状況だった。

血の噴出量が半端では無かったのだ。なにせ手首を切ったのだから。

雄斗も、その場に倒れこんでしまった。


第6魔法~クラスリーグマッチ 覚悟~END

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