第16魔法~女子寮決死の潜入作戦!!~
…………これはひどい。
自分の身に何があったのか、自分でも判りません。
ある一種の病気だと思います。
第16魔法~女子寮決死の潜入作戦!!~
「う、う~ん……あれ?いけね、寝ちまったか…」
少し重たくなっている体を起こし、ベッドから降りる。
気がつくと辺りはもう夜。疲れてた所為か、エレノアと話してた後の記憶が無い。
保健室…すっかりこのベッドは俺専用になっちまって…なんか気が引けるな。
と、辺りを見回すとテーブルの上に一つのメモ書きらしき物が置いてあった。
『やっほ~☆起きたぁ~?起きたらお姉ちゃんの寮に来ること!!命令だからね!絶対だからね!
今日は頑張ったね!お疲れ様!』
ヤバイ、少し見ただけでゲッソリした…あいつテンション高すぎるだろ……。
まぁ…行くか、2年、しかも女子寮にな。
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2年女子寮付近。草むらの中に身を潜めているのは…雄斗。
軍隊の人間顔負けの息の潜め方である。それにほふく前進も早くて正確だ。
しかし顔は全く笑っていない。ここまでして女子寮なんかに行きたくないからだ。
というかさ…ここの警備が半端じゃないんだけど…。
説明しよう…まず、辺りに張り巡らされた赤外線レーダー。何十機ものサーチライト。
魔法を使ったら反応する魔法察知レーダー。ここは刑務所か…
「ったく…何んでこんな所に…って、他にも沢山居るな…女の亡者共め…」
辺りを見回すと、草むらに蠢く無数の男の影。成程な、警備が厳重になる訳だ。
俺には到底理解できないが、この学校の女子生徒は可愛い…らしい。
だからよく見ると、他校の生徒やらおっさんまでもが居る。この変態共め。
『侵入者発見!侵入者発見!排除シマス!排除シマス!』
警報が鳴り始め、何処からかドォン!という爆音が聞こえてくる。
「んあ?何だ?」
ドガァァァァン!!という轟音とともに右側で大爆発が起き、男たちが吹き飛ばされる。
爆発で起きた発光により、辺り一面の男たちが照らされ、そこに向かって機銃が斉射される。
全て豆やら何やらで引殺傷武器であるが…見た目が派手すぎる。ヤバイ、戦場だここ…。
改めて、あまりの下らなさに溜息をつく雄斗。
何故こんな事に必死になるのか、そんなに交友関係持ちたいか?
てか見知らぬが人間が行ったら絶対女子たちは引かないか?気持ちわりぃだろ…。
「くそぉ!仲間がやられた!全員隠れろ!何としてもたどり着け!!」
いよいよ面倒になった雄斗。かったるそうに立ち上がり、頭を掻く。
メガネをポケットにしまい込み、頭を高く上げ草むらから全身をさらけ出す。
「めんどくせぇな…まぁ、鈴姉の頼みじゃ仕方ねぇか…」
何だかんだ文句を言いながらも、体は正直だ。早く向かおうとしてる。
別に嫌いな訳じゃ無い。それどころか大好きだ。
楽しい思い出いっぱい作るって言ったし、これも楽しい思い出になる……はずだ。
ま、ついでに狭霧…もといレイラにも会ってみるか。ついでのついでに咲夜も。
少し体全体を伸ばした後、強く地面を蹴り勢いよく走りだした。
無論迎撃はあったが雄斗にしてみたら屁でもない。
風の如き速さとしなやかさを兼ね備えた走りは最早芸術の域に達していた。
あっという間に寮にたどり着き、正面玄関から内部に侵入する。
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「ふう…久しぶりに本気出し過ぎたな…疲れちまった」
壁にもたれ掛かりメガネをかけ直す。取り敢えずは無傷で到達できた。
まずは…誰の所に行くかな?
1,鈴音の所に行く
2,狭霧の所に―――――――
「鈴音の所に行くか」
即決。迷う暇も無い。元よりあいつに誘われたんだし…行くのが礼儀だろ?
狭霧や咲夜達の所には余裕があれば行くとするか。余裕があれば…だがな。
さてと…ここの突き当りの階段を上がれば2年か…ま、ゆっくり行くか。
腕を組みながら、ゆっくりと廊下を歩いて行く雄斗。
すると、目の前の部屋のドアがゆっくりと開き、一人の女子が出てきた。
「あ」「え?」
無論出てきた女子と面識はない。分かるのは1年生だと言う事そして、ヤヴァイという事。
「ドウモ、コンニチワ」
カクカクに口を動かし、何とか音を出す雄斗。
悲鳴が上がるな、こりゃ。
「雄斗…くんだよね?何で…ここに?女子寮だよ?まさか…!?」
「すまない!俺の事は忘れてくれ見なかった事にしてくれ居なかった事にしてくれぇぇぇぇ!!」
物凄いスピードで走りだす雄斗。
雄斗の叫びと女子の悲鳴を聞きつけた女子たちがその雄斗を捕まえようと追ってくる。
ヤバイ!バレた!!鈴音の部屋番号は…509号室!ここに逃げ込むしか!!
急いで2階に駆け上がり、部屋を探す。
すると、509号室を見つけた。ここに入ればなんとかなる!!
「鈴音!!匿って―――――――――」
「キャァァァァァァァァァ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
一連の動きで察しろよ!部屋に居なかったんだよ!鈴音が!!
部屋は間違いない…じゃあ何故!?アイツまさか間違えやがったな!どうすれば良い!?
とにかく、1年女子の追撃を阻止せねば!
龍ヶ崎雄斗VS1年女子 追撃阻止戦 開始! って遊んでる場合じゃねぇ!!
取り敢えず、もう一回階段を上がるしか!!
もう一度突き当りの階段を上り、3階。3年生の部屋のある階に到達した。
しかしもう逃げ場が無い。今や2年女子にも追われてる状況だ。
3年生に面識のある人間はいない…とすると、親切な人捜すしかない…か。
いや、所詮夢物語だな。死ぬのか?あ、俺死ぬのかな?
長い長い真っ直ぐな廊下を駆け抜け、ここで死体として発見されるのかな?はは…
まだ女子たちは来ていない。だが、終わりだな…。
よし、賭けをしよう。俺は廊下の行き止まり地点にある部屋のどちらかに入る。
どっちかに優しい人がいれば助かる。違ったら、完全にデッドエンド。
よし!左だ。
俺は最後の希望を託し、ドアノブに手をかけた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ドアを開け、中に入るとそこには何もなかった。
入ってすぐ左にトイレ・風呂場に通じるドア。机が二つ。基本的な部屋に、装飾はない。
言ってしまえば、質素。と言うよりも地味。独身男性一人暮らしの部屋という感じだ。
気配は…しない。基本2人部屋なんだが…留守か?
取り敢えず奥に進む。と、ベッドが2つに対して一人の人間が寝ていた。気配は無かったはずだが…
と言うより、何故一人なんだ?普通は2人部屋だ。それなのに…気になる。
顔は見えないが…まぁどうでもいい。しばらく居させてもらおう。
「う…うぅん…んあ?……あなた…誰?」
ギクリ。後ろから声が聞こえた。とても澄み切っていて綺麗な声なんだが…
女子に変わりはない。男子が居たら警戒するだろう。
寝込みを襲おうとした…と見られても仕方が無い状況でもある。
「え、ええと…1年炎組の龍ヶ崎雄斗と言う者なんですが…
諸事情がありまして、匿ってもらえませんか?」
いつもと違い、弱々しく焦りながら喋る雄斗。
その様子はさながら不良に絡まれてるメガネとか掛けてる優等生だ。
「……何でこの部屋に来たの?理由なんか……無いでしょ?」
胸にぐさりと刺さる言葉。確かにそうだ。理由は0。
「はい…無いです…」
「体目的なら止めた方が良いよ…。私、別にスタイル良くないから……」
冷たい言葉。その口から出る言葉には温かみは無く、突き放すような冷たい言葉。
振り向いてみると、顔はこちらを向いてはいなかった。気配で察知されたのか?
布団に包まり、全体的な姿も見えない。
「そんなんじゃないです!姉に来いと言われたもので、来たんですが部屋違くて追われてこの様です」
「そう……勝手にしてて。別に気にしないから。…お茶でも飲む?一応入れられるけれど」
「あ、良いですか?」
取り敢えず疲れた体をいやすには丁度良い。雄斗はベッドに腰掛け、しばし待つ。
暫くしてベッドから起き上がってきた女の子は…なんと、裸だった。
「……あのー。何故に裸ですか?」
「え?……服着るの、忘れてた。どうせ人は来ないし……気にしないで」
いやいや、無理があるだろ!と心の中で突っ込む雄斗。
裸に気を取られたが、顔が髪に隠れて見えなかった。鈴音と同じタイプだな。
月明かりに照らされる先輩の体はどこか神々しく、目が離せない。
「……綺麗ですね」
雄斗の口から自然に零れる言葉。
ベッドに座ったまま、雄斗は終始じっと見続けていた。
「……あまりからかわないで。お茶、湧いたよ」
「からかってなんかいませんよ?俺はどうも貴方のような女の子の方が可愛いと思ってしまうんですよ」
そう言ってお茶を受け取る雄斗。先輩も向かいのベットに座り、お互い向かい合う。
伝統的な湯呑みに注がれた緑茶。湯気がもくもくと立ち、とても良い。
一目見れば分かる。そのお茶の入れ方は最高に上手い。
じっくりと湯呑の中を見た雄斗は、そのお茶をゆっくりとすする。
「……美味い。心が落ち着く…淹れ方が上手いんですね」
「そう?人と話したの…何ヶ月ぶりかな……もう少し、居てくれない?」
不意に声をかけられ少し驚いた雄斗。茶が変な所に入ってしまったようだ。
ゴホゴホ咳をして、とても苦しそうにしている。
「ゴホッゴホッ!…あぁ…すんません、こちらこそ。騒ぎが収まるまで居たいと思ってますんで」
「そう……良かった。そう言えば…名前。私……夢姫。巴夢姫。」
「夢姫先輩…ですか。いい名前ですね」
「ううん……良くなんか…ない。だって……夢の中でしか、お姫様になれない。
そんなの……居て居ないようなもの。居場所も……頼れるものも……ない」
雄斗は、思わず声を失ってしまった。
自分と一緒だ。居場所を探しても見つからず、頼ろうとしても頼れない。
自分は強い。と自分を騙し。俺が護る。と他人を騙し、生きてきた雄斗と…同じ。
頼れないから、頼られようとする。失くしたくないから護ろうとする。
どんなに傷ついても、逃げたくなっても、戦い続け・傷つけ・騙し続ける。
きっと…自分と同じような生き方をしていたのだろう…そう思った。
「……俺もそうですよ。頼れる人が居ない。今は出来たし、頼る事も覚えてきたつもりです。
けど、昔は俺もそうだった…。やはり……辛いですよね」
「そうね…辛い……でも今は、君が居てくれるから…そこまででもないかな……」
その言葉と同時に、雄斗の顔は一瞬で真っ赤に紅潮した。
今まで正直に言えば素っ気ない態度だったのに、急にこんな事言われたらそうなるだろ?
しかもだ…結局夢姫先輩は裸だし。
そんな風に話していると、ドアの向こうから女子たちの声が聞こえてきた。
「マズイな……探しに来たか。逃げ場は無いし、やっぱり年貢の納め時か」
「…心配しないで。ここにはきっと来ないから。来ても、私が居るから」
心に響く言葉。先ほどまでの言葉とは違い、言葉の中に気持ちがこもっていた。
この短時間で何故ここまで変わったのかは分からないが、嬉しい。
安心しきったところに突然鳴り響くノック音。しかも結構激しい。見つかったら死ぬな。
「ベッドの下に隠れててね……何とか……するから……」
雄斗は慌てた様子で頷くと、うつ伏せのままベッドの下にもぐりこんだ。
視界は最悪で、人の足元しか見えない。辺り前だが…。
するとドアの開く音がし、話声が聞こえてくる。
「ねぇねぇ夢姫ぃ~、こっちに1年の男子来なかったぁ~?」
「いいえ……来ても無いし、見ても無い。何かあったの?」
凄い…明らかに知らないように喋ってる…動揺も何もありゃしない。
スイッチの切り替えが上手い…ということか。
ていうかあの女子共、やたらチャラい。正直ムカつくレベルだな。
「そりゃそうよね~アンタみたいに陰気くさくて不気味な野郎のとこになんか来る訳ないよねぇ~?
こんな部屋に来るぐらいなら、死んだ方がマシだよねぇ?あはははは!」
「チョー言えてる!しかも裸だしぃ~マジキモイんですけど!」
「…………」
……何だ?これ…何で夢姫先輩が、ここまで言われなきゃいけないんだ?
最初この部屋に来た時、暗くて、空気が重くて、陰気くさかった。
だが実際、夢姫先輩は優しかった。初めて会って、自分の部屋に入ってきた俺を、受け入れてくれた。
悲鳴も上げず、軽蔑もせず、興味が無かった…と言ってしまえば終わりかもしれない。
だけど……だけど俺を護ると言った。『出て行け』では無く『ここに居て』と言ってくれた。
お茶を淹れてくれた。俺が居るから辛くないと言ってくれた。護ろうとしてくれた。
悪くなんかない、それどころかとても優しい人だ…それをあいつ等は……!
そんな思いを抱き、拳を握り力を込める雄斗。
しかしそんな雄斗の存在など知る由もない女子たちはさらに夢姫を非難する。
「つーかさぁ~夢姫ぃ~?あんたさぁ~何で顔隠してんのぉ?チョーウケるんですけどぉ~!
みんな写メ撮ろ写メ!マジウケる~!!」
「別に……面白くないでしょ?用が無いなら帰って……」
「はぁ!?舐めんなよ夢姫?お前にそんな権限あんのかよ?成り上がりの〝場外者〟のくせに!」
「……っ!!」
「黙りやがれぇぇぇぇぇ!!」
耐えられる訳が無い…!あいつ等は禁句を言った……殺してやる…殺してやる!!
立ち上がり、叫ぶ雄斗。その叫びは先ほどの悲鳴では無く、激しい憎悪の籠った叫びだった。
突然の事に驚く女子たち。段々と夢姫の女子たちが部屋の前に集まりだすが、雄斗は続ける。
「さっきから聞いてれば……貴様らに夢姫を悪く言う権利があるのかよ!〝場外者〟?
純血だったら何でも良いのかよ!偉いのかよ!」
「はぁ!?何こいつ、キモイんですけど~。てかこいつ男子じゃん。何匿ってんの夢姫?」
「俺の話を聞けぇ!!」
女子たちは、雄斗の剣幕に押されて一歩後ろに退いてしまった。
雄斗はその顔に怒りを露わにしながら叫ぶ。
「純血とか混血とか!そんなつまらない事で差別する!楽しいか?無意味だとは思わないのか!?
混血でも、純血でも、同じ人間で、同じ魔術師だろう?同じ因子者だろうが!!
お前らみたいなのに頭を下げるつもりはねぇ!失せろゴミ共が!!」
雄斗は怒りを露わにしたまま、ドアを乱暴に閉めた。
外に残っていた女子たちは…何も言えぬまま部屋の前から立ち去って行った。
しかし、1人。たった1人だけ部屋の前に残っている少女が居た。
黒く長く伸びた髪をたなびかせ、その眼に涙をうっすらと浮かべる少女。
「龍ヶ崎…雄斗。お前は……」
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「あの……すいません。勝手な事ばかり言って」
部屋の中では、少し冷静さを取り戻した雄斗が夢姫に頭を下げていた。
頭を深々と、背を90度曲げたかなりしっかりとしたお辞儀だ。
「……別に、気にしないで良いから…。何で護ったの?私の事なんか…気にしなければいいのに」
「そんな事出来ません!」
雄斗は頭を上げ、夢姫の肩をつかんだ。
「そんな事、出来る訳ないじゃないですか!俺も〝場外者〟です!だからこそ、見過ごせません!
貴方は無理をしている!だから敢えて1人で居て、誰ともかかわらない!そこも同じですから!
良いじゃないですか、拒絶されたって。その時は…俺が傍にいますから!
貴方が泣いていたならば、どこへだって行きますから!いつでも呼んでください」
〝場外者〟……この他には〝混血種〟という呼び名がある。
その名の通り、因子者とそうでない者の間に生まれた因子者の事を指す。
純血な因子者からしたら汚れた血。劣るものとして卑下される。
俺の場合は、あのクソ親父がノーマルで母さんが因子者だった。
「……雄斗くん…ありがとう、ホントのホントにありがとう…」
少しだけ、夢姫先輩の口元が緩んだ。
やっぱり……この人は無理してるだけで本当は明るい人なんだろう…。
出来る事なら…この人の素顔を見たいけど…きっと無邪気そうな顔してるんじゃないかな?
「今日はありがとう……また、来て……」
「えぇ!?あ、はい…そうします」
どうしよ…結局鈴音に会ってないし、誰にも会ってない…。
当初の予定の一つも完遂されてない…冗談じゃないぞ?しかしまぁ、動くわけにもいかない。
さてと…困った。この様子じゃ寮にも戻れない。騒ぎに気づいて鈴音が来てくれればいいんだが。
あいつ、ぜってぇ忘れてる。寝てるんじゃねぇか…?
とにかく…あきらめるか。だが、帰らなければ…いや、それができないから困ってるんだけどな。
さて…どうするかな?
「あの、夢姫先輩…帰ろうと思うんですが…帰れないとも思うんですよ」
「そうね……この騒ぎの中だと…危ないかも。泊っていく?私はいいよ?」
……マジ?マジで?何で??体は鉄のように固まり、微動だにしない。
直立不動のまま、その額には大粒の汗が浮かび上がる。
いくら先輩とは言え、目の前にいるのは雄斗より一回り小さい少女。
そしてまた、雄斗も健康な男子である。取り敢えず女子にも興味はある。
しかも裸だ。その胸部には控えめな胸がさらけ出され、そして、雄斗好みだ。
しかし…!ここで泊ってしまったら…俺の何かが壊れる気がする!
「お願いします」
ぐあ……言ってしまった。
…まぁ、気にするな。鈴姉だと思えば気が楽になる。兄妹の中で特別な感情は持ってないし。
そう思い、一旦夢姫を見る。
……駄目だ。もっと駄目だ。興奮してしまう。
俺……バカだ……バカでマヌケでシスコンの変態野郎だ…。しにたい。
「ありがと……じゃあ……一緒に寝よ?良いでしょ、ね?」
少し上目遣いをしながら、雄斗に詰め寄る夢姫。
何とかしなければ…という気持ちとは裏腹に体は勝手に動く。
上目遣いに勝てるわけがない。うん、断言できる。
……俺、ロリコンかも……
その晩、裸の先輩(女子)と、ひとつベッドの中で…深い眠りについた。
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何処までも続く漆黒の闇。そこに佇む黒き衣をまとった青年。
青年の前には、二つの異形のモノ達が佇み、青年をじっと見続けていた。
右に佇む、大鎌を肩に掛けてニヤニヤと心地よくない表情をしてる青年…。
体全体を覆う、黒いマントのような物を纏い、見た目でいうなれば…死神。
左に佇む、背中からは翼が生え腰辺りからは尻尾、そして頭からは角が生えている青年。
どこか悲しそうな表情で、黒き衣の青年を見る。
「俺は俺だ。お前たちには渡さん。それが分かったら、さっさと失せろ」
口を開く青年。死神のような青年と龍のような青年は、それを聞くと泡のように消えた。
「……いつまで…騙し続けられる…このままでは、俺は……」
暗き闇の中を、ただ歩き続ける。前も後も、右も左も、上も下も分からない、闇の中を…。
そして、たどり着いた場所には…禍々しい、辛うじてヒトの形を保っているモノが居た。
青年はそれを見て驚愕する。怖い・気持ち悪い。そんな理由では無い。
顔が…何処となく、いや……完全に青年と一緒なのだ。
翼・鋭い爪・太い腕・紅くギラギラと光る眼。何とも禍々しい。
「だ…誰だ!貴様……何故俺と同じ顔を!?」
「フッ…気づいてるはずだ…自分を騙すのもいい加減にしたらどうだ?俺は……」
「やめろ…違う!言うな…言わないでくれ……」
「お前だ…雄斗。お前はそんな姿じゃないだろう?これが…お前の姿だ……認めろよ、雄斗」
「違う…違う…違う違う違う!俺は……俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
第16魔法~女子寮決死の潜入作戦!!~
えと、次回予告は、勝手ながら辞めようかと思います…。
次回あたりはまた練習とか試合とかにしようかと…思います。