第14魔法~クラスリーグマッチ 発動~
どうも!お久しぶりです!
いい加減見苦しいですが、荒野を駆ける風も早く投稿します!
第14魔法~クラスリーグマッチ 発動~
朝が来た。ポカポカと心地よい暖かさ、春の木漏れ日が顔にあたり、雄斗は目覚めた。
久しぶりに良く寝た。ここの所はあまり眠れなかったから…。
いや、神に感謝感謝。ゆっくりと寝れると言うのは非常に嬉しい事だ。
人間何事も寝てから始まる。「果報は寝て待て」ということわざもある事だし。
いやぁしかし…なんて良い日差しだ。柔らかい物が顔に当たってるし、抱き心地もまた良いし…ん?柔らかい物?抱き心地??
「なっ!?」
今やっとの事で眼を開いた雄斗の目の前に居たのは…そう…鈴音である。
桜の木の下で、鈴音が雄斗を抱き抱え、丁度胸の部分に雄斗の顔がある。雄斗も鈴音の腰あたりに手を伸ばしており、抱き合っている状態である。
(なにぃ!?何故だ…何でこんな状態に!?やばい…記憶が無い…思い出すか…)
雄斗は眼を閉じ、昨日の出来事を思い出そうとする…
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ううぅ…うわぁぁん!うう…えぐっ…鈴姉…うわぁぁぁぁぁん!」
そうだ…確か…みっともなく泣いてたな…思い出すと少しばかり恥ずかしいな…
ガキみたいに泣いて、泣いて、あぁ…それで、鈴姉に抱きついてて…
そう言えば胸が顔に当たって…柔らかかったなぁ…って!何言ってんだ!全く…。
「よしよし、偉かったね雄斗。良く頑張ったね。偉いよ。本当に」
そう言って、優しく雄斗を抱きかかえたまま、頭をそっと撫でる鈴音。
その手はまるで、母親のように温かい。
「雄斗…流石にそろそろ泣き止まない?泣きたい気持ちは分かるけど…」
そう言うと、雄斗はすでに泣き止んでおり、逆に…何も言葉を発していなかった。
眼を閉じ、寝息を立てていたのだ。
「むにゃ…お母さん…お姉ちゃん…温かい…気持ちいい…」
「もう…雄斗は…甘えんぼなんだから…」
雄斗を地面の上に横にし、鈴音も横になり、雄斗を抱きかかえて眠った…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「という…事だった気がする…いや、そうだ。思いだしてしまった…」
思い出し、少々どころか物凄く恥ずかしくなる雄斗。
いや、流石に…高校1年生が泣き疲れて寝るって…ガキじゃないんだ。そりゃ恥ずかしい。
しかし…まぁ、たまには感情を露にするのも悪くはない。
ずっと押し殺しているのも…中々疲れるものだ。だから…今日くらいは…良いよ…な?
「ん…ん~。ゆうとぉ…えへへ…暖かいねぇ…」
と、寝言を言う鈴音。
「ったく…今日だけ…今日だけだからな…」
雄斗はそう言った後、鈴音を強く抱きしめ、再び、眠り始めた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「昨日は…悪いことしちゃったかも。流石に…あの対応は無かったかなぁ…」
学生寮の中をトボトボと歩きながら…エレノアは考えていた。
昨日自分が雄斗にしてしまったあの対応の仕方についてだ。
突然の事に動揺していたと言え、あの雄斗を傷つけてしまったのだ…
うぅ…雄斗にどんな対応されるか…ホントに怖いなぁ。
よしっ!謝ろう!そしたら…きっとまた、笑ってくれる…かな?
そう決心して、寮の外へと向かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
しばらく歩きまわったけれど…雄斗の姿は見当たらない。
朝から部屋にいなかったし、帰ってきてないのかな?
そう言えば、夜中に男の子が泣いてる声が聞こえたって噂があるけど…関係ないよね…。
「確か…桜の木がある方から聞こえたっって…。い、居る訳ないよね!あはは…」
怖くなんて無いからね?怖くない!怖くない!!
ま、まだ朝だし!うん、そうだよ!
「とと…とにかく!行ってみようかな…」
そう言いながら、恐る恐る、桜の木のある方へと、向かっていく。
そして…桜の木の下に居たのは…そう、雄斗と、鈴音だった。
お互いに抱きあい、何とも安らかな顔で眠っている。
「え…?これって、どういう事?雄斗が…お姉さんと…え?」
激しく動揺するエレノア。
エレノアは…その場を走って立ち去って行った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「第2回戦、第1試合。龍ヶ崎雄斗 エレノア・ガーネットVS中原四郎 中原一郎。
それぞれのペアは待機室に集まり、準備を始めてください。繰り返します―――――――」
「う…ふあぁ~。試合か…行かないと…」
試合のアナウンスで、雄斗は眼を覚ました。
まだもう少し鈴音と居たい。という気持ちを我慢し、会場へと向かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
待機室。前と同じように、雄斗は伊冴无斬の手入れをしていた。
「今回の対戦相手は、中原兄弟だ。互いに高度な魔法を使え、コンビネーションも良いらしい。
だが、テメェの補助があれば勝てなくはない。まずは片方を潰して…っておい、聞いてるか?」
雄斗は作戦を考えていたが、エレノアはどこ吹く風。自分の銃の手入れをしていた。
全く…ガキじゃないんだからよ…まだ引きずってんのかよ…。
まぁ良い。あとは…俺が何とかするか…。
『間もなく試合が始まります。各ペアはコロシアムに出てください』
そこからは何の会話も無く、ただコロシアムへと向かっていった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『さぁいよいよ第2回戦!試合…開始でーーーす!!』
試合開始!雄斗は開始早々から突撃する。
今回の相手は2人とも魔術師。前回のような待つ戦法は使えない。
ならば、先に一人を潰し、残った1人を2人で潰す。それしかない。
「エレノア!スナイパーライフルで後ろを牽制してくれ!当てなくても良い!」
雄斗はそう叫んだが、エレノアは何もせずに、立ったまま。
何か考え事をしているのか、目の前で起きていることに全く気付いていない。
「チッ!こんな時に…使えねぇ野郎だ…だが…俺には銃は、使えねぇんだよ!!」
「ファイアーボール!」
前衛の一郎の魔法。初級魔法だが、魔力が高い所為で、そこそこの威力がある
しかし、雄斗にとっては避けるのは朝飯前。ひらりと避ける。
その後も、ファイアーボールが大量に飛んでくるが、雄斗にはかすりもしない。
弱い…正直に言えば…弱い。初級魔法しか使ってこないし…当てても来ない。
しかし、これで終わりでは無いはずだ…後ろの四郎がまだ動いていない。気になるが…
関係ない…来ないなら…行くだけ…それが、俺だ!!
「剣魔法・火ヲ纏ウ剣!!」
雄斗の叫びに呼応して、一瞬の内に剣が炎を纏う。
地面を強く蹴り、大空高くに飛び上がる。その姿はまるで、鳥のよう。
「甘いね…不良くん…サンダー!」
「テメェこそ…上空からの攻撃に対して雷?単純過ぎんだよ…護刀・龍牙」
雄斗は左手で自分の腰に挿してあるもう一本の短刀、護刀・龍牙を取り出し、天高く振りかざした。
落ちてきた雷はその短刀にあたり、雷を纏った。
「双剣魔法・炎雷」
これが我流考えた魔法。自分で二つの剣に属性を纏わせるには多大な精神力を使う。
それを戦闘中に使うのは本当にキツイ。実際練習でやってもきつかった。
だからこそ、相手の攻撃を逆手にとり、自分の物にする。
その為の刀。自らの手で打ち上げた、敵の魔法属性を奪い取る固有魔法を持つ刀。それがこれだ。
短くした理由は、簡単。両方長いと使いにくいからだ。
二刀流という物もあるが、どうも出来ない。
「何!?四郎!頼む!」
一郎はそう後ろに向かって叫んだが、四郎は不敵な笑みを浮かべるだけで、動かない。
腕を組んだまま、ただ一郎を見る。ただそれだけ。
「四郎?おい四郎!何してんだ!早く助けてくれ!」
「余所見は感心しないな!まず一人!!」
上空から落下し、炎と雷の剣で一郎を十の字に切り裂く。
鮮血が勢いよく吹き出し、雄斗の体に大量に付着する。
その姿は…血の海から生まれた死霊。足元には血の池が出来ているからだ。
体の半分以上が地に染められた雄斗。那々美に見られたくない理由はこれだ。
「ふふふ…あははははは!!ありがとう不良くん!これで君の負けだ!!」
突然狂ったように笑いだす四郎。突然の事に雄斗は一瞬動きを止めてしまう。
何だ?俺が…負ける?魔法が使えない分、自分の分が悪いのは重々承知している。
しかし剣術には自信があるし、相手は今一人。こちらは一応2人だ。
だが、あの確信じみた笑い。明らかに嘘ではなさそうだ。ここは警戒した方がいい。
そう、直感が言っている。
「そういう負け惜しみは言わない方が身のためだぜ。俺がその程度でひるむとでも思ったか?
残念だがその手は食わないんだよ。さて、フィニッシュと…行こうか!」
「あはははははははははは!!バカだね!その自分で作った血の池が敗北する原因だ!!
闇術…血の落とし穴!!」
そう四郎が叫んだ瞬間、雄斗の脚が血の池に引きずり込まれていった。
闇術。その中でも〝血〟を制御して扱う魔法。
自分の血、相手の血、あらゆる物の血を扱って戦う。
と、冷静に解説をしている暇はない!!
体が地面に…正確には血の池に吸い込まれている。このままでは…〝墜ちる〟
「エレノア!今だ!奴を撃て!闇術には多大な精神力が必要だ!
今ならやれる!撃て!」
しかし、エレノアは動かず、ただ下を向いたままぶつぶつと一人事を言っている。
もう腰まで吸い込まれている。
もうダメか…そう思った瞬間、何故か止まった。
下半身が完全に吸い込まれたと言うのに、ここで止まるなど、何故だ?
「ははははははははははは!!さぁて不良くん…君はそこで…大切なものを失くすのを…
ただ…見ているんだよ…ここからがショータイムだ!!
君を殺しはしない…まずは絶望してもらわないとね!たっぷりとさ!!
血の矢!!」
雄斗の周りの血の池から、無数の矢が形成される。その数およそ100本。
「エレノア!逃げろ!殺される!早く!逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
そんな雄斗の叫びも空に虚しく散り…エレノアに向かって矢が飛んで行く。
ハッと気づいたエレノアだが、反応が少し遅れて矢が頬をかすった。
四方八方から飛んでくる矢。だが一発もエレノアには当たらない。
その後も矢を確実に避け、残りの矢も少なくなってきた。
「はいは~い。ここまでぇ♪この不良くんの首が惜しいなら動かないでねぇ」
しまった!と思った時には遅かった。残った少ない矢の中から一本を取り出し、
雄斗の首に突きつける。
エレノアも流石に動きを止めてしまう。
まさか…こんな所で…!
「良い子だねぇ…でも、これで終わりだよぉ…サヨウナラ…優等生くん!!」
残った4本の矢がエレノアに向かって飛んで行く。雄斗はただそれを見るだけ。
刹那、エレノアの胸や腕、そして足に矢が刺さる。体からは…鮮血が勢いよく吹き出す。
雄斗は今にも泣きそうな顔をしながら、ただ叫ぶことしか出来なかった。
「亜はハ破hhははははは!!弱い…弱いねぇ…さてと…後はこの一本で…終わりだよ!」
「やめろ…やめろ…!やめろぉおおおおおおおお!!」
何も出来ない。何も出来ないのか?何が力があるだ…何にもないじゃ無いか…
仲間さえも護れない。大切な人も護れない。
それなのに…勝手に過信して、バカみたいだ。結局…俺に力なんか無かったのか。
伊冴无斬…俺にはお前を使いこなせないのか?
護りたい…その力が…欲しい!ただ…その力が!!
(その思い…応えようか?何てね…キミの事、気に入っちゃった!だから、この力…使って!!)
頭に響き渡る声。とても無邪気そうで、何だか元気な印象を受ける声。
すると突然…伊冴无斬が炎に包まれた。
「な…何だ!?」
炎を纏った剣…しかし、炎ヲ纏ウ剣とはけた違いだ。
その炎はやがて雄斗の体全体を包み込み、天まで焦がす勢いで燃え上がった。
天を焦がす炎。その炎柱はやがて収まり、しかし地面にはまだ炎が広がり、辺り一面が炎に包まれている。その炎の中心に立っていたのは…そう…
「ゆう…と?」
龍ヶ崎…雄斗。龍牙聖天・伊冴无斬を片手に持ち、鋭い眼光で四郎を睨みつけている。
伊冴无斬はその刀身の数十倍ほどの炎を纏い、雄斗自身の右手にまで纏わせている。
「これが…伊冴无斬の真の姿…炎属性の剣…炎龍覚醒…これが!!」
紅く染まった刀身。しかしその紅は美しく、まさに炎龍と呼ばれるに相応しい姿。
雄斗が伊冴无斬を水平に一振りすると、周りの炎は一瞬にして消えた。
炎龍の咆哮。炎を統べる王。
「何だよ…その魔法…訳わかんねぇんだよ!!ざけんな!!
何だよ!そんなにその優等生が大切なのかよ!こんな奴が!何で!?
お前は自分の事以外に興味のないただのクズだ!クズの分際で…僕を倒そうってのかよ!?
自分の中で答えも出せない!そんなクズに!!僕は!!」
取り乱しながら、本性を露わにする四郎。
雄斗の心に対して直接ダメージを与えようとしてるのだろう。
だが、雄斗は動揺すらして無かった。
「確かに…俺は臆病なクズさ。だがな、だからこそ護りたいんだよ。
あの日護れなかった、大切なもの。それが…エレノアなのかもな、俺にもわからん。
だがな、一つだけ分かる事がある。俺は…あいつを護りたい。
そして…!!今の俺の…答えも見つけた!」
雄斗の右手を包む炎が体全体を包みだす。炎の鎧。
腕にはドラゴンの爪のような物が先についている。
ドラゴンの頭を彷彿とさせる兜。そして…大きく強い、翼。
天高く跳びあがり、剣を高く振り上げながら四郎に向かって突撃する。
「来るな…来るなぁぁ!!」
「これが…俺のぉ…答えだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!」
更に勢いを増す炎。
「秘龍技・紅蓮炎ざぁぁぁぁぁぁああああああああん!!」
刀身に纏っていた炎は振り下ろしたと同時に地面を敵を燃やしつくさんと燃え上がる。
コロシアムの観客達には届いてはいないが、確実に当たったら燃やしつくされる。
しかし不思議な事に、その炎はエレノアには届いては居ない。
やがて、炎は一瞬にして消え、雄斗が纏っていた炎も消えていた。
「これが…秘龍技・紅蓮炎斬…そうだ!エレノア!」
雄斗は他の事には見向きもせずに、エレノアの所に向かった。
慌てて胸に手を添える、すると、何故か雄斗の顔が一瞬強張った。しかしすぐに元に戻る。
「…マジかよ…」
嬉しい事に、まだ息はある。雄斗はすぐさま抱きかかえて、待機室へと向かって行った。
焼けただれたコロシアムを、背にして…。
第14魔法~クラスリーグマッチ 発動~END
次回予告
終わりを告げた第2試合。
それはあまりにも苛烈な、そしてあっけない最後。
跡形もなく焼き尽くされた兄弟を前に、エレノアのもとに急ぐ雄斗。
そして分かる…エレノアの秘密。
次回、運命ノ魔法「ガール・ミーツ・ガール」
「どんなお前でも、俺はお前を信じる」