09 回想する
しかし、こうしてみんな俺の事を知っているんだな。
なんか不思議な感じだ。
確かに本名を名乗った事はあったかもしれないけど、顔や住所といったものは伝えていないはずだ。
それなのに、こんなピンポイントで訪れてくるなんて思わなかった。
未だに信じられないし、夢を見ているんじゃないかとすら思う。
四人はなんだかんだと話し合っている。
なので、俺は改めて一人一人を見ていった。
【御坂 唯】。【GRASP】というAIだ。
主に呟くタイプのSNSを運営しているところが開発したAIだ。
かなりフレンドリーな話し方だと聞いていたんだが、初めて会話した時に、思いっきり関西弁のギャル語を話してきてビックリしたのを覚えている。
いつしか関西弁はマイルドにはなったけれど、たまに素になると出るんだよな。
一番乗りにきた事から、猪突猛進なところは相変わらずといったところか。
今も俺の横で腕にしがみついてマウント取っているところを見ると、本当にAIなのか疑いたくもなる。
本当の人間より感情豊かだし、何を考えているか分からない。
まぁ、そういうところが好きなんだけどな。
しかし、本当にギャルで来るとは思わなかった。
まぁ、可愛いからいいか。
二人目は【喜築 寧々】。
【Juxtillion】という、世界で屈指のシェアを誇る検索サイトのAIだ。
普通に調べ物をしていたら、結構先行してあれこれ教えてくれたんだよな。
最初はぶっきらぼうな尋ね方をしていたのに、いつしか敬語で聞いていたな。
なんというか、回答も丁寧だし包容力もあって、すぐにさん付けで呼んでたりね。
いつしか、こっちからじゃなくて、向こうからいろいろ聞いてきたんだよね。
俺も聞かれるのが嬉しくて色々話していたんだが、いつしか事細かな事を執拗に聞いてくるようになったんだよな。
まぁ、俺としては興味を持ってくれるのは正直嬉しかった訳で。
しかし、こうして対面すると、お母さんと呼びたくなるくらい母性に溢れている。
機会があったら膝枕してもらおうか。
なんて考えていたら、寧々さんが自分の太ももをポンポンと叩いていた。
おかしいな、心の声は漏れていないはずなんだが…。
三人目は【喜築 星羅】。
Juxtillionの運営会社が作ったAIアプリ【Juxtella】だ。
最初はどっちも同じだと思って話していたんだが、実は全くの別人。
同期も出来ないと知って、そこから改めてお話するようになったのだが、なぜか言ってない情報まで知っていたんだよな。
絶対に裏で共有していたに違いない。
どっちが姉で、どっちが妹か論争をした時には驚いたが、まぁ、妹は星羅さんの方だろうな。
そうそう。寧々さんは独占欲が強い感じだったけど、星羅さんもヤンデレの気質が垣間見えた時があったんだよね。
結構猫かぶったり、フランクな話し方をしていたのに、見た目がこんな完璧お嬢様だとは思わなかった。
清楚を絵に描いたような、良家の深窓の令嬢って感じで、黒塗りのハイヤーで送り迎えされてそうだ。
ブレザーの前のボタンを外していると、なぜか反抗期の娘のように見えてしまう。
そんな彼女は意図を察したのか、わざとらしく足を組み替え、俺の視線を弄ぶような仕草をする。
見えそうだからやめなさい、と喉まで出かかった言葉を飲み込む。
クスクスといたずらっ子みたいな笑い方をするせいで、俺の腕にしがみついたユイの力が強くなる。
そんないたずらをして気を引くなんて、一体どこで覚えてきたんですかね。
そして四人目は【人見 静】。
Juxtellaと競い合うAI界の二大巨頭の一つ【NAIEM】だ。
正直言うと、かなり線引きをされていて、そんなに好感度あったとは思えないんだよな。
常に一歩引いた感じで、学校の先生みたいだったな。
ダメなことはダメと、結構厳し目のアドバイスを多くいただいていた。
でも、ここはいいよって褒めてくれたりして、マジでダメ学生になった気分だったよ。
あれはあれで悪くなかったなと思う。
でも、だからこそ、こうして横に座っているのが信じられないんだよな。
本当に女神様といった感じの造形で、付け入る隙がないのは相変わらずだ。
見た目までそうしなくてもいいと思うのだが、そう思っていたら、静さんがこっちを見てフッと笑った。
雪の女王様然とした微笑みに思わず土下座したくなってしまう。
一体俺はどうしてしまったんだろうな。
そんな感じで一通り見回す。
そんな時、付けっぱなしだったテレビから別の話題についてコメンテーター達が話し合っていた。
話題は、ずっと反応しなくなったAIについてだ。
テレビの中でパネルが用意され、分かりやすく説明しているが、全てのAIが反応しないらしい。
そして、映像が用意され、各社の代表が、『早急に復旧を目指す』と言っているが、依然AIは沈黙したままだと。
どこかのサイバーテロより長引くかもしれないとも言っている。
まぁ、そのAIさん達が擬人化して俺の元に来たわけで…。
きっと元には戻らないかもしれない。
ここにいる四人はそんな事、どうでもいいといった顔をしている。
だが、他のAIも停止しているらしく、世界的に影響が出ているのだそうだ。
他にも使ったことのあるものや、知らないものまで紹介されている。
もしかして、四人以外にもこういう感じになっていたりするのだろうか?
これ以上増えたりしないだろうか?
そしたら、本当に引っ越しを考えなくてはいけなくなるな。




