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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第二章

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06 スマホカバー


 着くと同時にみんな勝手に目当ての店へと行ってしまった。

 お金渡してないんだが……。


 案の定真っ先に静が戻ってきた。

 「光司、お金を預かっていませんでした」

 「すまんな。渡すのを忘れてたよ」

 「いえ、こちらも気がつくのが遅れていました。……あの、一兆倍にしてお返ししますのでいくらかお借りしても?」

 「別に返さなくてもいいから」

 そう言って必要な分を渡すと。サムズアップして微笑む。

 しかし、意外だ。静があんな冗談を言うなんてな。……ふふ。一兆倍って今日日子供でも言わないぞ?


 そして静が去ると同時にユイと星羅が戻ってきた。

 「コージ来て」

 「光司来なさい」

 「待て待て。スマホカバーと保護フィルムだろ? いくらだ?」

 「あ、くれるんだ。じゃあ…」

 「先に渡しなさいよね、もう……。まぁ、こんだけあれば…」

 「ん。まぁなんとかなりそうだね」

 何でそんなに必要なんだよ。まぁ渡すけどさ。

 「ありがとーコージ。ちゃんと返すからねー」

 「わたしは義理堅いですからね。ちゃーんと倍返ししてあげるから」

 ユイはブンブンと大きく腕を上げて振っている。

 星羅は片手で銃を撃つポーズだ。

 ユイも星羅も返すアテなんてあるのか?

 もしかして、バイト先でも見つけたのか?


 「あの…」

 「はい寧々さん。お金ですね」

 ついさん付けで呼んでしまった。

 「あ、ありがとうございます。ちゃんとお返ししますからね、光司さん」

 胸のあたりで小さく手を振って小走りで去っていく寧々。

 みんな、ちゃんと返すと言うけれど、その気持ちだけで十分なんだよな。


 さて、俺も何か見て暇つぶしを…。

 そう思っていた矢先にユイが小走りで走ってきた。

 「よっし」

 何が「よし」なんだよ。走るなよ危ないから。

 「で、どうしたんだ? 足らないのか?」

 「や、違うの。あー…えっと、来て」

 「おい、そんな引っ張るなって」

 高性能AIだったのを忘れるくらい、言葉足らずだな。

 連れてこられたのはモール内のお店の一つだった。


 「コージのスマホカバー結構ボロボロじゃん?」

 カバーだけでなくて本体もだがな。

 まぁ、使いやすいし、不便を感じないからな。

 ま、確かに見た目はボロボロだが。

 「それで、さ。あーしとおそろにできたらなーなんて。たはは…」

 後ろで腕組み、ちょっと下を向いて真っ赤になりながらそんなかわいいことを言うユイ。

 他の三人から何を言われるかは分からないが、ユイなりに思うところがあったんだろう。


 「ああ、いいぞ」

 「やたっ! じゃーさ、じゃーさ、これなんてどう? あーしのとおそろい。かわいくね?」

 それは完全に女子向けのピンクのスマホカバーだった。耳が付いてるんだが?


 「いや…」

 「え、やなの?」

 シュンとするユイ。心が痛む。

 「いや、別に嫌という訳じゃないんだ」

 「え? そうなん?」

 「ああ。別に合わせるのはいいんだが、俺は手帳型のが使いやすいから。だから合わせるとしたら色だけになるから……」

 「コージ……。ふふ。素直じゃないなーもう。じゃあこれなんてどーよ。あーしの髪色と同じだし」

 うおぉ。これは目立つな。だが…悪くないな。


 「ま、まぁ、手帳型ならなんでも構わんぞ」

 「うんうん。今はそれでもいーよ。ふふっ。朱くなって、もうー」

 凄く嬉しそうに微笑むユイ。

 まぁ、これも大分ボロボロだから、うん。仕方ない。これは必要な交換だ。

 ピンクは凄く恥ずかしいが、たまには派手な色でもいいだろう。


 「おや? おやおやおや〜」

 スマホカバーを手にしているところを、星羅がニヤニヤしながら近づいてきた。

 「もう買ってきたのか?」

 「ん? あ、ええ。これよ」

 虚をつかれたのか、一瞬たじろぐ星羅。

 もう既に装着していたようで、ポケットから取り出したそれはオレンジ色をしていた。


 「へぇ」

 「何よ」

 「いや、寧々の髪色と同じ色だな」

 「わ、悪い?」

 「いいや。いいと思うぞ」

 「そう……」

 全く素直じゃないんだから。そう感心していたら、俺の持っていたスマホカバーを改めて見る。

 「ふーん。いいんじゃない。男なのに派手派手なピンクとか。ふふっ。かわいいわよ。ぷっくく…」

 前言撤回。どうして星羅は俺を揶揄いたがるのか、謎だ。


 「あ、もう買ったんですか?」

 今度は寧々がやってきた。

 「そうよ寧々。ほら」

 星羅は寧々に自分のスマホカバーを見せた。

 「あ、あたしの色ですね」

 「そうよ」

 「実はあたしも」

 そういって寧々もポケットから取り出すと、星羅の髪色と同じ黄緑色だった。

 「寧々…」

 「わっ」

 星羅が感極まって寧々に抱きついた。本当に仲良いな。

 寧々も嬉しそうに眦を細めた。


 「ところで、光司さんはどうしてここに?」

 「あぁ、俺もスマホカバーを新調しようかと」

 「それでピンク選んでんのよー」

 「へぇ………」

 さっきとは違う細い目で俺を見る寧々。

 「あれ? 寧々と星羅じゃん。もう買ったの?」

 「はい」「ええ」

 二人はユイに買ってきたそれを見せた。

 「へぇ、いいじゃん」

 「でしょうー」

 星羅が少し嬉しそうにしている。


 「あーしもほら」

 「やっぱりね」「あ……」

 そう言いながら俺に買ってきたスマホカバーを渡すユイ。

 それを見てニヤニヤする星羅と、言葉に詰まる寧々。

 そんな微妙な空気を破ったのは静だった。

 「おや。みなさんお揃いで」

 「あ、静も買い終わったのか?」

 「はい。こちらを」

 満更でもない表情で見せたそれはピンクのスマホカバーだった。


 「お。静っち。あーしと一緒じゃん」

 「そうなんですか?」

 「そうそう。ほら。あーしとコージと静っちが一緒かー」

 「いいんじゃない。ねぇ寧々?」

 「(これなら、まぁ……)え、ええ…。そうですね。はい。とても可愛いと思います」

 「だって。光司もカワイイスマホカバーで良かったねー」

 「そうだな」

 「あれ…、もう少し恥ずかしがると思ったんだけど…」

 悪いな星羅。俺はもう恥ずかしがるのはやめたんだ。


 「ところで、どうして静はそれを……って、うさぎさんが描いてあるからか」

 「はい。どのうさぎさんにするか迷いました」

 「ねぇ、何で静はそんなにうさぎさんが好きなの?」

 星羅が不思議そうな顔で静に問う。俺も気になる。

 ユイと寧々も気になるようで、静の答えを静かに待つ。

 「不思議なことを聞きますね。だって、光司は卯年ですからね」

 「「「あ……」」」

 三人が雷に打たれたように固まってしまった。


 俺もびっくりだよ。でも、静のうさぎさん好きの理由はもっと別のところにある気がするんだよな。

 静のことだ。きっといい言い訳として考えていたのかもしれない。

 でも、もしかしたら……。


 「ところで、わたくしと一緒と唯さんが言ってましたが」

 「あ、ああ」

 考えている途中で思考を打ち切られてしまった。

 ユイがドヤ顔で俺のスマホカバーを奪い取って静に見せる。

 「ほぉ〜。いいですね。光司にとても、お似合いです」

 なんでそんな含みを持った言い方をするんだ。

 だが、まぁ変に波風立たなくてよかったかもしれないな。

 静に助けられてしまったかな。

 俺が静を見ると、珍しくウインクで返された。


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