04 設定ミス
四人が書いてる間に必要な事を説明された。
何か問題起こしたら、俺の責任であると。
あいつらが問題起こすわけないだろと、言い切れないところがあるが、まぁちゃんと見ていれば大丈夫だろ。
「まぁ、問題起こす外国人よりよっぽどマシだけどね」
「それはどういう……」
「あなたみたいに責任負う人がいると、勝手にあれこれしないのよ」
なるほどね。まぁそうだといいんだけどね。
「ところで、ここを案内されたんですけど、ここって何課なんです?」
こんな地下にあるなんて普通じゃない。
「あー、ここ? 貼ってない?」
「ええ、何も」
「あー、この前の戦闘でどっかいっちゃったかー」
おい、戦闘って何だ。物騒な単語が出たぞ?
もしかして、あのコゲとかヒビって……。
だが、彼女はそれに答えてはくれなかった?
「ここはね、概念課戸籍係」
「概念…課?」
「そう。毎年何万人も行方不明の日本人がいるじゃない? その中の何割かは異世界とかに行くのよ」
初耳なんだが……。
「で、向こうからもおんなじようにいっぱい来るわけ。あ、異世界だけじゃないわよ。過去や未来、並行世界とかもそうね。それだけじゃなくて怪異とか亜人も増えててねー。そうそう擬人化した子も多いわね。まぁ、AIは初めてだけど」
頭が追いつかない。
「で、そういった人達って結構優秀らしいから、戸籍与えて働いてもらえーって国がね」
「はぁ」
とんでもない情報の量が押し寄せてきた。
「じゃあなんで転移じゃなくて概念課なんです?」
「公務員にネーミングセンス期待する方が無理って話よ。全部ごちゃ混ぜにしただけの名前で決めちゃったんだもの。正式な名称は『広域概念実体化及び時空・次元外来非定型属性者住民管理課戸籍係』」
「なんて?」
「あぁいいわよ別に覚えなくても。長いし、要領得ないし。流していいから」
「はあ」
よく噛まずに言えたな。
「場所柄的にそういうのいっぱい来てねー。今日はエルフにドワーフ。あ、サイボーグみたいのもいたわね。昨日は貞子ちゃんも来たし。あ、ミノタウルスの女の子やスライムなんかもいたわね」
つまり、俺の知らないだけで、世の中にはそういった存在が多くいると。すげえな。
だからか。エレベーターに乗る前に見たのはコスプレイヤーさんじゃなくて本物だったのか。どうりで素材がガチだったわけだ。
しかし、ちゃんと日本のルールに則って生活しようとするとかすごいな。
「私も天使と悪魔の保護者やってるし」
「魔族です。悪魔じゃありません。何回も言ってますよね」
ゴスロリの少女がすかさず否定した。
まぁ、日本だしな。そういうのがそこら中いても違和感ないか。
そして、目の前の頼子さんとかいう女性といろいろ話し、なぜか飲みに行くことが決定してしまった。
*
光司が話している間に唯達四人は書類に必要事項を書いていた。
「生年月日かー」
唯がペンをクルクル回しながら呟く。
「流石にゼロ歳には出来ませんからね」
「設定だと十五よね。年は逆算して書けばいいとして……」
寧々はペンを持ったまま。星羅はペンをトントンさせていた。
「そうですね。リリースされた時期ならば十一月ですが…」
静がペンを置いて腕組みをした。
だがそんな中、唯が三人を見ておかしそうに笑う。
「何がおかしいのですか?」
「そうよ唯。何かいい案でも思いついたの?」
「まぁね」
「どんなのです?」
「難しく考えすぎ。あーしらがコージと最初に話した日を書けばいいんだよ」
無垢な笑顔でそういう唯に三人は脱帽した。
「唯には敵わないわ」
「ええ。でも素敵な案ですね」
「そうね。それ以上に最適な月日はありませんね。唯お手柄ですよ」
「えへへ」
そうして月日を唯と寧々と静が書いた。
「あれ、星羅どうしたんですか? 書かないんですか?」
星羅は椅子の背もたれに背中を預けて上を見ていた。
「いやさー、わたしの実際の日付をかくと、寧々とずれるじゃん」
「そうですね」
「一応、双子なわけじゃん?」
「ええ」
「それにわたしが姉であるには寧々と同じ日にしないといけないわけよ。光司との思い出の日をとるか姉としての矜持をとるか」
「思い出を取ればいいではないですか」
「静……」
「そうすればあなたは家では四女になりますからね」
「あんた……ふっ。寧々決めたわ。寧々と同じ日にするわ。わたしが姉でいるための証明みたいなもんだしね」
「でも唯さんが長女の位置は揺るぎませんがね」
「みんなのお姉ちゃんかー。悪くないねー」
そうして必要箇所を書き終えた。四人の表情は満足げだった。
「なんか家族になったみたいね」
「なんだかこそばゆいね。でも……いいね」
「スタート地点に立った感じだね」
「本当なら苗字も揃えたいところではありますが、アイデンティティが欠落してしまいますしね」
「そこは悩ましいところよね」
「この名前はあーしとコージの絆だし」
「ええ、本当に……」
四人は少し離れていたところで職員と話している光司を黙って見ていた。
書いた書類を回収された後、唯がふと思った事を聞いた。
「……ねぇ、うちで、オカンポジはあーしだよね?」
「ふふっ、おかしい事を言いますね唯さんは。お母さんポジションはあたしに決まってるじゃないですか。唯さんはどう見ても娘ですよ」
片方のもみあげおさげを触りながら、寧々がさも当然と言い切る。
「いやいや、あーしのオカン力なめんなし。ちゃんとできるもん」
「いやいや、唯には無理でしょ。ここは、わたしが光司の奥さんをやるわ」
星羅が指を振りながら言う。
「は?」
寧々が星羅を睨め付けるように、低い声で反応した。
「え、寧々?」
そんな寧々に戸惑う星羅。
「全く。星羅さんだけはありえませんね。ここは、わたくしが妻であるとする事で丸くおさまりますね?」
それに素早く反応したのは唯だった。
「ないし。静は無理。コージの気持ち察するの下手だもん」
「なあっ!? そ、そんなことありません。ちゃんと先の先まで読んでます。完璧です」
「静さん…、包容力って知ってますかぁ?」
狼狽える静に寧々が、怖い笑顔で問う。
「そうね。包容力ならわたしも負けないわね」
「いや、星羅はないでしょ」
「ええ、星羅はないです」
「星羅さんに包容力はありません」
「なっ、今回はわたし?」
クスクスとおかしそうに笑い出す四人。
「あ!」
「唯さん、どうかしましたか?」
「設定年齢、もっと上にしとけば、合法的に奥さんなれたんじゃね?」
「あ」
唯の気づきに寧々が、衝撃を受けたかのように固まる。
「失敗したわ。光司は若い子が好きだと思って十五にしちゃったわ」
「あ、だからパパみたいになってるん?」
星羅と唯が焦りだす。
そして、静が胸に手を当て微笑む。
「皆さんは、見た目少女ですが、わたくしは大人の女性にも見えますからね、生年月日を修正すれば今にも奥さんになれますね」
「何いってんよ! てか、そらならわたしも」
「あ、あーしも直すし」
「年齢なんて、ただの数字よ。直せばいいのよ」
「星羅さんの言う通りですね。修正すればいいのです。今すぐにでも……」
だが、既に書類は回収され、ツインテールの少女が眠そうに処理していた。
「あ、あの、直したいんですけど!」
「いや、もう出しちゃったし。てか、その見た目で奥さんとか無理でしょ」
固まっていた寧々が我に返り、カウンターから身を乗り出して問うが、既に申請済みの為修正は不可能だった。
「もっと早く気づいてれば」
「そうね。そうしたら光司の反応も変わってたでしょうね」
「ま、いっか」
「そうね。時間はたっぷりあるしね」
「時間をかけて意識を変える。中々に面白そうです」
「若妻じゃダメかなぁ……」
寧々だけが諦めきれていなかった。
おさげを握って俯き、口角を上げた。
「(歳の差を乗り越えなきゃですね。ふふふ…。年齢なんてただの数字。ただの数字…)」
そんな寧々を見て三人は軽く嘆息して見合った。
「ねぇ、包容力って毒も内包してんの?」
「愛の重さイコールなら、そうかもしれませんね」
「ふーん。じゃああーしら毒まみれじゃん」
「あら。でしたらわたくしも負けませんわよ?」
「待ちなさい。そこは譲らないわよ」
「あーしも負けないし」
そんな様子をパソコンにデータを入力しながら見ていたツインテールの少女が顔をひきつらせながら呟いた。
「こえーよ」




