03 そこは異世界への入り口のようで
早速出かける準備をしたのだが、四人ともバッチリ決まっている。
これ、歩いてたらスカウトされるんじゃないだろうか?
だが、うちの娘たちをそんなところになんてやれないな。
とまぁ、冗談はさて置き、四人ともそれぞれ買ったコートを着ている。
マジでオシャレだな。
ユイは白いニットコートを。やっぱり買っていたんだな。
寧々は、マスタードイエローのダッフルコート。
星羅は昨日と同様にボルドーのカープコート。
静は、ダークブラウンのピーコート。
そして俺は星羅がパジャマ代わりにしていたコートだ。なぜかシワはついていなかったが、代わりに星羅の香りがついていた。落ち着かない。
昨日と同じようなルートを通り、豊島区役所へ行く。
考えてなかったが、戸籍ってそう簡単に取れるんだろか。
そう思って入り、職員に尋ねるとどうやらこういったケースの担当窓口は地下二階にあるそうだ。
なぜ、地下二階?
不思議に思いながらも指示に従いエレベーターに乗る。
エレベーターに乗る前にやたらコスプレした人がいたな。土地柄仕方ないんだろうが、区役所もアレで来るとか猛者だろ。
しかし見た目とか雰囲気とかガチなのがなんとも。
そして降りると、件の窓口まで少し距離があった。
どうして、こんなに距離をとっているのだろうか? 不思議だ。
柱や床には焦げた後や欠けた後がある……。
まだ少し焦げ臭い。
エレベーターの横には謎のカケラが落ちている。何だこれ? 何の素材なんだこれ……。
それに少し薄暗い。本当にここなんだろうか?
少し歩いて窓口へ向かうと、チラッと俺たちを見上げる女性職員。
愛想笑いの一つもない仏頂面だ。俺とそんなに歳も変わらないだろうに、表情のせいでより老けてみえる。
そんな事を思っていたら、ジロリと睨まれた。
まさか、心を読まれたりしてないよな。
戸惑っていると、別のにこやかな、紫がかった銀髪の外国人風の女性が椅子を出してくれた。
こんな大勢でこないからだろう。椅子は二脚しか置いてなかったからだ。
それはそうと、なぜこの女性はゴスロリなんだろうか。役場の人間って服装自由なんだろうか?
よく見たら、奥で寝そべってゲームしてる金髪の女性もいた。いや、少女と言った方がいいのだろうか。ピンクのダボダボのパーカーにダボダボのジャージだ。
「あなたが保護者ですか?」
なぜ来たのかとか、どういったご要望とは聞かれなかった。
そもそも、ここが何の課なのかすら分からない。プレートも掲げられてないし…。
キョロキョロしてると、再度同じ質問をされたので、そのまま素の反応をしてしまった。
「あ、はい」
「免許証かマイナンバーカードありますか?」
「あ、はい」
「そちらの四人のお世話をしている。間違いありませんか?」
「あ、はい」
俺さっきから「あ、はい」しか言ってないな。だって淡々と進むんだもん。
しかし、こういったことが多いのか、かなり事務的だ。
慣れているというより、めんどくさいという感じがする。
「では、こちらの書類に必要事項を記入して下さい」
「あ、はい」
渡された用紙に書いていく。
そこで、気になる箇所が何箇所かある。
名前や住所はいいとして、問題は年齢だな。女子高生に見えるが一体何歳なんだ?
「なぁ、お前達、歳はいくつなんだ?」
この女性の話し方が移ったのか、補導する警察官みたいな喋り方になってしまった。
「は。警部殿。あーしは十五歳の設定であります」
ノリがいいな。しかし、十五歳か。高校一年生…入学前か?
「あたしも同じです」
「わたしもよ」
「わたくしも同じです」
静さんのそれは十五歳は無理あるでしょうよ。
そう思っていたら、凍てつくような微笑みをされた。地下だからかより寒くなる。コートを着ていて良かった。
「でも作ったのはこの前だからゼロ歳?」
「赤ちゃんですね」
「じゃあゼロ歳っと」
「ちょっと待つし!」「待ってください!」「待ちなさい!」
ユイと寧々と星羅が慌てて止める。
慌てるな、まだ書いてないから。
そんな中、静がまたぞろ爆弾を投下する。
「なんです? 授乳プレイでもしたいんですか?」
「お前、赤ちゃんに対してそう思ってるんか?」
「わたくしが赤ちゃんに見えますか?」
「くっ…ふふ…。くふっ…」
堪えきれないといった失笑が聞こえた。
肩を震わせながら笑っている。
「あー、おもしろー。あんた達最高ね。……ねぇあんた連絡先教えなさいよ。飲みに行きましょ」
「ちょ、タメだし!」「誰の許可を得てやってるんですか!」「あ、あたし以外の女性はダメですー」「規約に違反しております。今なら修正は可能ですよ」
四人が同時に静止してくる。特にユイと寧々は、俺の両サイドから身を乗り出して抗議している。
ゴスロリの少女は顔の前で両手を握ってオロオロしている。
「ますます面白いわ。交換しないと戸籍作らないわよ」
それは越権行為なのでは?
まぁ、俺も構わないといえば構わないのだが。
そんな時さっきまでゲームをしていたツインテールの少女が真後ろに立っており、思いっきり脳天にチョップした。
それはとても美しい軌跡を描いており、光のエフェクトさえ見えた。
「いった。何すんのよ」
「頼子が飲みにいったら、わたしのご飯どうすんのよ」
「自分で作りなさいよ」
「はわわわわ」
しかし、そんな一撃を喰らってもさする程度とは、役所の人間って打たれ強いんだな。
しかし、あの二人はうちの寧々と星羅に少し似ている気がする。
残りの箇所は俺が書いてもいいんたが、自分達で書くと言い出したので、任せる事にした。
ゴスロリの少女が隣のカウンターを案内して、そこで書き始めた。変な事書かなければいいのだが……。
しかし、あのツインテールの少女は怠けすぎだろ。もう元の位置に戻ってる。
マジでなんなんだここは…。




