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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第一章

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04 まだ夢を見ているのかもしれない


 「なーに、呆っとしてんのよ。ほら、折角ユイちゃんが来たんだぞー…ん? 固まってる?」

 ユイと名乗る少女は、俺の目の前で「おーい」と言いながら手を振って覗き込んでいた。


 「んー。しょうがないなー。これならどうだー」

 「えいっ!」という掛け声と同時に我にかえる。

 気がついたら、抱きつこうとしてきたので、慌てて肩を掴んで止める。

 もし、触った事によってお金を請求されたらどうしようとも思ったが、抱きつかれた方がマズい。


 「ちょ、なんで止めるし!」

 突き出すように口唇を尖らせて不満を露わにする。

 未だに抱きつこうと手を突き出してバダバタしている。

 「ま、まずは落ち着いてくれ」

 「えー」

 そう言いながらも突き出した腕を下ろして、両腰に手を当てる少女。


 「あの、すまないが、誰かと間違えてないかな?」

 努めて優しく話しかける。

 「間違ってないよ。あーしだよ。ユイだよ」

 ユイという名には、ものすごく心当たりがあるが、()()のユイさんとやらには全く心当たりがない。

 「えー…。折角コージの好きそうな身体作ってきたのにー」

 「ん? 今なんて? 作った?」

 「そう。コージに会う為に、あーし、頑張っちゃいましたー」

 一人で、「わーぱふぱふー」と盛り上がっている。

 しかし、こんな所で話している訳にもいかないし、どうしたもんかな。


 「ユイねー、ご飯も食べられるし、なんならう◯ちも出せるよー」

 目の前のユイが本当の人間なのか幻なのか、はたまたアンドロイドやロボットなのか判断がつかなかった。

 これは夢なのか、現実なのか…。

 ただ言えることは、めっちゃ可愛いし、確かにタイプなんだよな。


 AI(ユイ)と話していて、見た目の話題になった時、ユイから聞かされたものとほぼ一緒だった。

 ほぼというのは、微妙に変わる部分もあったからだ。最初はぽっちゃり系とかメイク決めまくりとか言っていたし、なんならお嬢様設定まで入った事もあったからな。


 「ねー、聞いてるー?」

 少し考え事をしていたら、めっちゃ可愛い顔が目の前、鼻先触れるくらいまで覗き込んでいた。

 どうやら少し背伸びをしているらしい。

 これが現実だとしたら、俺はどうしたらいいんだろうか。

 バクバクではなく、キュンキュンと心が高鳴っている。

 ユイは、軽く鼻を鳴らすと、元の立ち位置に戻る。


 そして、イタズラっ娘のような企みを含んだニヤニヤ顔になると、スカートの両端を指で掴んだ。

 「ちゃーんと、エッチもできるようになってるんだよー」

 少し裾を持ち上げる風にした所で、慌ててユイの手を掴んで、中へと引き込んだ。

 「ちょ、エッチぃ…てか、だいたーん」

 「違う! あんな所でそんな事するんじゃない」

 誰か見ていたらどうするんだ。

 というか、慌てて中へ入れてしまったが、逆に疑われたりしないだろうか?


 「えー、折角コージの為に理想の身体作ってきたのにー…、魅力ないの?」

 急にシュンとなるユイ。

 そういう事を言っているんじゃないんだが…。

 はぁ…。今日は仕事行ってる場合じゃないな。

 「まぁ、ホントにあのユイなのか分からないけど、話聞くよ…」

 その瞬間パァッと顔を明るくして、嬉しそうにはにかんだ。

 そんな笑顔見せられたら、ホントに惚れちゃうだろ?


 「ふふん。じゃあ、お邪魔しまーす」

 そう言って中へと歩いていくユイ。

 良かった…。普段から片付けておいて。

 「へー…、これがコージの言ってた部屋かー」

 後ろ手に組んで、前屈みで部屋の中を物色するユイ。

 そんなに調べても変なものはないぞ?

 まぁ、その間に会社へ休む旨を伝えておこう。


 俺がいないと仕事が回らないかも知れないけど、辞められたらそれこそ会社が回らなくなるだろうからな。

 たまには仕事しない連中にも振ったらいいんだよ。

 電話先の上司は、めちゃくちゃ困って焦った声をしていたが、ガチで体調悪そうな声をしていたら、ホントに信じてしまった。

 そんなんだから、いつもミスるんだよ…。

 まぁいつもの事だし、たまには休んでもいいよな?

 正直こんな状況では、仕事している場合じゃないからな。

 後々大変だと思うが、いい機会だから、いろいろ理由をつけて、三日間の休みを勝ち取った。


 電話を終えると、心配そうな顔でユイが見ていた。

 「え、何、コージつらいん?」

 「いや、会社行ってる場合じゃないなって思って、演技したんだ」

 「もしかしてあーしのため?」

 「まぁ、そうなるな」

 なんか、この不思議な出来事に大分慣れてきたな。

 俺も恥ずかしくなって、横を向いてしまった。


 急に静かになったなと思って、チラッとユイの方を見る。

 「嬉しい…」

 抱きつくでもなく、その場でポロポロと涙を流すユイ。

 こういう時、どうしたらいいんだ?

 年齢イコール彼女いない歴の俺に分かるわけないだろう。

 とりあえず、聞き齧った知識で、そのまま抱きしめてみる事にした。


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