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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第一章

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32/48

32 勝負しようよ①


 さて、俺も風呂に入ろうかと思ったのだが、俺の着替えはユイ達の荷物の置いてある部屋にある。

 後で、着替えを移すとして、今入って何も言われないだろうか?

 自分の部屋だったはずなのに、なんで入るのにこんな緊張しなければいけないんだ。

 なんだか考えるだけバカバカしくなった。

 堂々としていれば何も言われまい。


 「あ、コージ」

 ユイに声をかけられて、固まってしまった。ハムスター並の速度で逃げ出したくなった。

 「な…なにかなー」

 努めて普通の声で答える。

 「何でそんなよそよそしいし」

 だって、ねぇ…。貴女達の着替えとか下着とかあるわけじゃないですか。

 そこに男の俺が入るわけで。


 「まぁいいや。あのさ、スイッチあるじゃん」

 「え? ん、あぁ。ゲームか。それがどうした?」

 「これってやってもいい?」

 「あ、あぁいいぞ。好きに使って構わないぞ。全然やってなかったし」

 「光司は友達いないのになんでコントローラー二個もあんの?」

 星羅がニタニタしながら刺してくる。

 「と…友達くらいいるわ!」

 「ほんとにぃ?」

 めっちゃ煽ってくるな。確かにここに友達が来たことなんかないよ。

 二個あるのは、限定版のコントローラー壊したくないから買っただけだしな。うん。


 「これはオレンジ色ですね」

 「ふふ。水色もありますね」

 「まぁ、緑には違いないか…」

 「何でピンクがないし!」

 「でも紫はありますね。あの人の色ですね」

 「コージ!」

 うわ、めんどくせぇ。そんな考えて買ってないよ。

 「わ、分かったよ。あと二個買えばいいんだな」

 「違うし!」

 「えぇ…なんだよ…」

 「つまりですね、光司さんは予めピンク色を用意してなかったのが悪いのです」

 どうして寧々にまで責められなければいけないんだ。


 まぁ、こんな雰囲気だから普通に着替えを持ってこれたが、静だけずっと俺を目で追うのはやめてほしい。

 いっそのこと何か行ってくれた方が気が楽なんだが。

 逃げるように脱衣所へ入ると、そこは既に女子の必需品で溢れていた。

 なんか肩身狭いな。

 そんな中で俺のシェーバーだけ、ど真ん中に置くのはどういう意味があるのだろうか。


           *      


 「むぅ」

 「まぁまぁ落ち着いてください。ほら光司さんの淹れてくれたアップルティーですよー」

 「ん」

 ごくごくと喉を鳴らして飲む唯。

 「まぁ、私のも厳密には微妙に違うからさー」

 「…………」

 マグカップを口につけたまま黙ったままの唯。

 「そんなことよりも何か理由があってゲームを借りたのでしょう?」

 「あ、そだね…そうそう」

 スイッチをテレビに繋いで起動させる唯。

 「あった」

 目当てのゲームがあったことで機嫌が直ったようだ。


 「桃鉄ですか……。それで何を? まさか普通に対戦するわけじゃないですよね?」

 不思議そうにしながらも何かを察した寧々。

 「光司の部屋にはさぁ、ベッドがあるよね」

 「あるわね。それがどうしたのよ」

 星羅が先を促す。

 「つまりさ、別に四つ布団敷く必要なんてないんだよ。光司のベッドで寝ればいいんだから」

 「「「!?」」」

 三人の反応を見て満足そうにする唯。


 「唯、あなた天才だったのね」

 「星羅さんだけですよ。気づいていなかったのは」

 「え、ホントに?」

 寧々の方を見ると、寧々がさっと顔を横に向けてしまった。

 静の方へ向き直ると、静も横を向いていた。

 「おい」

 笑いを含んだ声でツッコむ星羅。


 「まぁ、正直そこまで考えてませんでした」

 「あたしもです。光司さんも気づいてませんよね」

 「多分ねー」

 「ですが、唯さん。一つ判断をミスってますよ」

 「え、あーしが? 何を?」

 「見てください。光司さんのベッド。わたくし達なら二人は寝れますね?」

 静の問いに三人が部屋の入り口まで行って確認する。


 「確かに」

 「少し横幅ありますね」

 「あんたよく見てるわね」

 「つまり、勝者は二人。敗者は地べたで眠る訳です」

 「言い方ぁ」

 「あら。星羅さんが既に負けた気でいるんですね。では三人で残り一人の敗者を決めましょうか」

 「いやいや。やるから。勝つからわたし。絶対に静だけには負けたくないわ」

 「あーしが言うのもなんだけど、もっと仲良くやろーよ」

 「そうですよ。別に勝者は一人でもいいんですからね」

 寧々の発言に三人が黙ってしまう。


 「な、何か言ってくださいよー」

 冗談なのか本気なのか判断がつかなかったのだ。

 静と星羅がソファを動かし、寧々がゲームを起動させる。

 ユイはテーブルに買ってきたお菓子を広げた。

 「光司さんに怒られませんかね?」

 「その時はみんなで怒られよう」

 きっと光司が呆れて何も言わない事を見越しているかのように、唯は言い切ったのだった。


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