24 後をつけよう
「あれ、どこか出かけるんですか?」
財布をとって背広の内側に入れたところで寧々さんが気づいた。
「ええ。布団とか毛布とか買い忘れたのを思い出したので」
「え? 別にコージのベッドで寝ればいいじゃん」
「何言ってんだ? 一緒に寝たらダメだろう。それに、ベッドに収まりきらないし」
「縦に乗っかれば理論上は可能ですね」
それじゃあ下の人は息苦しいだろう。
何ドヤ顔で解決しましたみたいな事言ってんだ。
「一人で行くんですか?」
「ええ、まぁ」
流石に女の子に圧縮済みとはいえ布団を持たせるのもな。
帰りはタクシーで帰るしかないな。
「光司、どこで買ってくるの?」
星羅が立ち上がりながら聞いてくる。
「そうだな。駅前の方に行こうかと思って」
駅前ならビック、パルコ、ドンキ、西武とあるからな。反対側には東武もあるし。
「ではわたくしはビックの羽毛工房のをお願いします」
「西武行くなら西川ありますね。わたしはそこのでいいですよ」
どっちも高いんだよな。服と雑貨でもう軽く三桁万円だし、流石に無理だわ。
安いとこ安いとこ……。ニトリかドンキだな。
駅前ならドンキでいっか。なんか足りないものとかあったら買えるし。
「どっちも却下だな。高すぎる」
「まぁ……これだけ買ってもらっては、無理は言えませんね」
「そだね。来月買ってもらえばいいよね」
「そうですわね」
どうして星羅と静はそう斜め上の発想にいくかな。
ソファで静かにネイルを塗っているユイくらい落ち着いてほしい。
「じゃあ行ってくるから。火使うようなのは触るなよ。危ないから」
「はーい」
「いってらっしゃいませ」
あれは何かを企んでいるんだろうな。でもまぁ詮索されて困るようなものはない。
さてと、まだお腹は重いから歩きますかね。
*
光司が出て行ってすぐに、四人は動いた。
「コージはどこに行くんだろうね」
「高いのは買えないと言ってましたから、東武、西武、パルコ、ビックの線はありませんね」
「そうなると、ニトリかドンキだねぇ。でもさっきサンシャインシティ行ったから、また行くのは控えるよね」
「ですね。総合的に判断して、可能性が高いのはドンキホーテですね」
「あそこいろんな雑貨ありますよね」
「確かにちょっと行ってみたいよね」
四人は同時に頷いた。結論は出ている。
誰か一人が抜け駆けをするかもしれないこと。
そして、それを阻止する名目でドンキで雑貨を見て回りたいという好奇心が湧いて出た事が理由だ。
「じゃあ後をつけましょうか」
「鍵は?」
「既にここにあります」
星羅がスペアキーと思しきものを掲げる。
「そういうところ抜け目ないね。というか怖いんだけど」
「あら。何が怖いんですか唯? 言ってごらんなさい」
怪しい笑みで唯の顔を覗き込む星羅。
「そんな近くていいの? 初めて奪っちゃうよ?」
「!? そ、それは……こ、困りますぅ……」
今までの勝気な態度が嘘のようにしおらしくなってしまった。
へなへなと頽れそうになる前に寧々がさっと鍵を奪いとる。
「早くしないと見失っちゃいますから、行きましょう」
「う、うん…」「そ、そうですね…」「ええ」
三人が寧々の後をついていく。
*
「なんか探偵っぽくていいね」
「ちゃんと探偵の格好してくれば良かったね」
「そんなの買ってないでしょ」
「でも色で合わせるとキャラ変わるよね」
「そうですね。わたくしはそのまんま水色で問題ありませんが」
「寧々は緑だよねぇ」
「ええ。キャラやスカート丈がピッタリです」
「あーしはオレンジだわ」
「唯さんは短パンよりホットパンツのイメージですね」
「ふむ。となると、やっぱりわたしが主役ですね」
満更でもない表情をする星羅。
「なんでそーなるし」
「必然的にそうなるんだから、受け入れなさいよ」
「にゃにおう」
そんな事を話していたら、前を歩く光司が振り返ったので、慌てて隠れる。
「もう、声でかいよ」
「星羅さんがバカな事を言うからですわ」
「わたしのどこがバカだと?」
「主人公ポジの事です」
「でも、自分で水色選んだじゃん。スカート丈短いところもそっくりだし。ところどころパニクるところとか…」
「なっ!」
「あっ、見失っちゃう」
横断歩道を渡る光司。既に歩行者信号は点滅している。
「でも、ドンキホーテは確定ですし…」
「でも違う可能性あるよね」
「直接光司さんの脳にアクセス出来ればいいのですが」
「「「………」」」
「ど、どうして黙るんですか?」
「だって、ねぇ…」
「うん」
(わたくしもそう考えていたなんて言えませんわね。ここは黙っておきましょう)
寧々の発言に顔を見合わせる唯と星羅。そして気まずそうに外方を向く静。
「仕方ないからこっちからいこ?」
「そ、そうね。次の信号で後ろに回れるし。ほら」
呆然としている寧々と静の手を、唯と星羅が掴み、小走りで駆け出した。




