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夢見るアイ  作者: 玉名 くじら
第一章

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14 買い物に行こう③


 一階に到着し、エントランスホールを抜けると、やっぱり冬の外は寒い。

 空っ風が容赦なく体を叩いてくる。

 一気に体が冷える感覚がする。

 ショッピングモールまではそんなに遠くはない。十分か二十分も歩けば着くだろう。

 今まで数える程度しか行った事がないので、どんなお店や施設があるのかは分からない。

 きっと、彼女達の方が詳しいかもしれない。

 だって、すでに『どこどこのお店が〜』等と話し合っている。


 先行するユイが振り返りながら、ニシシと笑う。

 「なんかデートみたいだね」

 「そうだな」

 「あら。否定なさらないんですね」

 静さんが満更でもない表情で話す。

 「いいじゃないですか。夢にまで見たお出かけですよ」

 「そうそう。本当は二人きりが良かったけどね」

 寧々さんと星羅さんも嬉しそうにしている。


 街のランドマークタワー的な清掃工場横の遊歩道を歩き、歩道橋を越える。

 それなりの人が歩いており、何人かは振り返ったり、立ち止まったりしている。

 まぁ、絶世の美少女四人が歩いているのだ。

 そこに冴えないおっさんが混じっていれば、誰だって興味を持つというものだ。


 そして、こうして歩いていると、危惧すべき事が一つだけある。

 それは俺が職質されないかだ。

 だってそうだろう? こんな美少女四人を侍らして歩いているのだ。

 それも冴えない中年男性がだ。

 そしてコートを着ているとはいえ、その下は制服姿で下着を着けていないのだ。

 どう考えても怪しいだろう。


 そんな事を悶々と考えていたら、両サイドにいた寧々さんと星羅さんが心配そうに声をかけてくれた。

 「光司さんどうかしましたか?」「光司様顔色が優れませんが…」

 「え、あぁ…。いや、万が一職質されたら、速攻でパトカーに乗せられちゃうなーって」

 「どうしてですか?」

 「そんな事起きないでしょうに」

 「いや…ほら、こんな美少女四人を冴えない中年男性が侍らしていたら職質案件でしょ?」

 「そんな事ですか。もし、そうなったら私達が否定しますよ」

 それはありがたいけど、お巡りさんは信じてくれないよ。


 「そもそも、光司様は中年という年齢ではないですよね。壮年と言った方が正しいかと」

 まぁ、そうなんだけどね。

 「そうだよコージ。コージは柏原◯とか生田◯真に似てるじゃん。大丈夫だって」

 ユイが振り返り、覗き込むように言うが、それは間違いだ。

 「髪型だけじゃねーか」

 「人って髪型だけでも大分印象変わると思いますけどね」

 後ろから静さんが淡々と告げる。

 「そうですよ。それに光司さんはかっこいいです。あたしが認めます!」

 「そうだよー。意外とコージってイケメンだよねー」

 「気がついてないだけか。或いは鈍感なのか」

 「眉毛を整えれば、より完璧です」

 そんなに褒められると、こそばゆいんだが。


 「しかし、冗談抜きにどうして今まで結婚出来なかったんでしょうね」

 静さんが痛いところを突いてくる。

 「そりゃあ簡単だよ」

 「「「「?」」」」

 ユイが器用に後ろ向きに歩きながら、胸に手を当てた。

 「あーしと結婚するためだからっしょ」

 「ちょ! ダメです。光司さんはあたしとするんです」

 「まぁまぁ、落ち着きなって。こんなところでそんな事話してたら注目集めちゃうよー?」

 「っ!」「くぅ…」

 星羅さんの助け舟? で、何とか話題は収まったが。

 まぁ、結婚に関しては、リアルでの出会いに恵まれなかったというのが半分。

 あとの半分はユイと寧々さんの言う通りだ。

 まぁ、実現しないと思ってたから、妄想でしかないんだけどな。


 そんな事を話しながらスロープを降りていく。

 そこから明治通りへと向かうのだが、もう少し違うルートを選べばよかったかもしれないな。

 飲食店が多いのだが、一本違うとちょっとアレなお店も多いので、少し迂回していく。

 「あの建物すっごく高いね。あそこ?」

 「いや、もう少し先だな」

 「ふーん。ちなみにあそこは何があるの?」

 「映画館とかかな…」

 そういえば、映画とか久しく見に行ってないな。

 今度みんなと行ってもいいかもしれない。

 スクリーンで見たらどんな反応を示すだろうか。


 それから暫く他愛のない話をしながら歩いていたが、やはり気になる。

 「あの…ちょっといいかな?」

 「なーに」「なんですか?」「なんでしょう」「なんでしょうか?」

 「あ、ユイはいいんだ。あと、寧々さんもまぁ…うん…」

 「わたしと静さんに問題が?」

 「うん。その呼び方なんだけど、出来れば呼び捨てがいいかなって」

 「光司様…光司……難しいですね。さん付けじゃダメですか?」

 「いや、無理にとは言わないよ。ただ、様付けはちょっと慣れないなって」

 「分かりました…。善処します」

 「わたくしの光司君呼びも嫌なのでしょうか?」

 「うん」

 「なっ! なぜです? 親しみがあると思うのですが…」

 「いや…この年で君付はちょっと…」

 「こればっかりは慣れていただかないと…」

 あ、静さんは改めてくれないんですね。まぁ、様付けじゃないだけまだましかな。


 「光司……くん……」


 君呼びのニュアンスが変わった気がする。

 何と言うか、上からというより対等な言い方に。

 振り返ると、真っ白な肌が今にも爆発してしまいそうなくらい真っ赤になっていた。

 静さんでもこういう表情をするんだな。

 そんな静さんを見て、他の三人はバカにするでもなく、何故か共感するような表情をしていた。

 ユイは腕を組み、寧々さんは手を合わせ、星羅さんは何度も頷いていた。

 

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