13 買い物に行こう②
「そして重要な事だが…」
これを言っていいのかどうか分からないが、言わないわけにはいかない。
寧ろ他の三人に協力してもらいたい。
男の俺が、女性の下着なんて分かるはずないんだから。
深く深呼吸する。
逆に変態だと思われないだろうか?
意を決して口を開くが、中々勇気がいるな。
「ユイを見てもらえば分かると思うが、下着着けてないんだ」
「「「下着………?」」」
まさかの予想外の反応が返ってきた。嘘だろ…おい…。
「え、まさか…着けてらっしゃらない?」
「データでは知ってますが、必要なんですか?」
「あれはただの布でしょう? オス共が欲情する為の」
「特に違和感を感じませんし…」
「ほらぁ…」
ユイがなぜか勝ち誇った表情をしているが、そういう事じゃないんだ。
え、何? まさかみんな下着なしなんですか?
いやいや。そういうのちゃんと着けるって情報ありましたよね?
その…違和感とかはないのだろうか?
あまりにも一般常識に偏りがありすぎる気がする。
今のうちに知らない事を全部聞いておきたい気がするが、時間が足りない。
「光司さんが下着好きだとは思いませんでした」
「待って…」
「分かりました。ここはみんなで光司君の好きな下着を買おうじゃないですか」
「いや、あの…」
「なんです?」
「好きとか嫌いの前に、一般常識として、みんな着けてるんですよ?」
「でも無い方が好きって方もいますよね」
「うん。でも俺は違う」
どうしてこういうところは頑ななんだ。
このまま外出するとよくない気がする。風も強いし。
「夏には皆さん下着姿で海とかで遊んでますし、そういうのがお好きなのでは?」
「あれは水着というものですね。違いは分かりませんが」
話をややこしくしないでほしい。
「でもまぁ、調べたら結構可愛いのとかセクシーなのあるんだね」
「なるほど。これは…興味をそそられますね」
「素材もいろいろ…。うわっ! これなんてスケスケじゃない。着けてないのとどう違うのよ」
「穴空いてるのもありますね。興味深いです…」
勝手に検索して盛り上がらないでほしい。
「普通のでいいから」
「普通の定義とは?」
あれ、もしかしてこれ、俺遊ばれてる?
気がつけば四人ともニヤニヤしている。純情な童貞を弄ぶなんて酷いぞ!
「分かっててやってるな?」
「いえ、先ほど知りました」
「わたしもです」「あたしも…」「あーしも」
「まぁ、そういう事にしておこうか」
さて、なんやかんやあって行く事になったが、ここである事に気づいた。
いや、気づくのが遅かったくらいだ。
俺は寝室へ向かいクローゼットから三着のコートを持ってきた。
とりあえず、これを着てくれ。
「コートですか…」
「光司様のコート」
「光司君の着たコート…」
どうして含みがある言い方するんだ。
「コージあーしのは?」
「あるぞ」
ソファにかけてあったやつを渡す。
いやぁ、捨てずに取っておいて良かった。
これで制服姿も隠せるし、丈も長いからちょっとの風でも靡かない。
「あーしのが一番コージの匂いがするー」
「そういう変な事を言うんじゃない」
「唯さんの見た目では似合いそうにありませんね。こちらと交換しましょう」
寧々さんがニッコリと笑って、ユイの持つコートを掴もうとする。
「や、あーし。見た目気にしないタイプだから」
「いや、でも…」
「見た目を気にしないのならこちらでもいいのではないですか?」
「いや、あーしはこれがいいの」
「あたしもそれが…」「わたしもそれが…」
「では、間を取ってわたくしが…」
「「「それはない!」」」
なんやかんや仲良いじゃないか。
さっさと部屋を出て行こうとすると、慌ててコートを着て付いてきた。
演技だったのだが、結果的には収まって良かった。
「ねぇ、コージはコート無いけどいいの?」
「ん? あぁ、スーツ着てるから大丈夫だ」
「少し震えてますよ?」
「大丈夫です。歩いてれば慣れます」
それにコートは四着しか無かったし、仕事しかしてないから、冬用の防寒着は持っていない。
車でもあれば楽なんだろうが、生憎と都内じゃ持て余してしまうし、休日はずっと家にいるから持っていない。
寧々さんの優しさが身にしみるけど、少し恥ずかしくて顔が熱いから丁度いいとしておこう。
エレベーターに乗り込むと周りをみんなに囲まれる。
普段だったら、こんな体験めったに出来ないだろうな。
「それで、どこへ向かうんですか?」
「ああ。近くに大きなショッピングモールがあるから、そこで全部揃えてしまおうかな、と」
「ショッピング…モール…」
なんだろう。寧々さんと星羅さんの顔色が少し暗くなった気がする。
初めて行くところだろうに。それとも何かスムーズに行けるように検索でもしているんだろうか。




