1:僕たちの勇者パーティは解散でいいよね?
「お前、俺という『存在』から逃げようとしたな?」
勇者のカネツグはそう言って、倒れ込んだ僕の頭を踏みつけた。
ダンジョンの隅で、人目に着かないよう用を足してただけなのに。
『勇者パーティ』……聞こえの良い、その響きに魅了されて入るまでは良かった。
目標に向かい、試行錯誤を繰り返し――。少しずつ、だが着実に成長する自分。
今思うと、そんな日々に戻れることなら戻りたい……。
他の勇者パーティはどうかは知らないが、僕の所属する「雷鳴のキリン」は……ハッキリ言ってパーティではなく、勇者カネツグとその奴隷たちと言える。
外ズラだけを気にするカネツグ自体には人間的な魅力は無く。
討伐の依頼だって、剣を振るっている所は僕が入って半年は経つというのに一度も見たことがない。
そもそもの話だが、パーティの構成に無理がある。
カネツグ以外の、僕を含めた三人が気の弱い魔法使いってどうなんだ?
「……限界だ」
カネツグには聞こえないよう小さくつぶやいた。
*
深夜――。テントの中で一人、大きなイビキをかいて爆睡するカネツグ。
テントの外では、寝袋に包まって交代で見張りをしながら一夜を過ごすのが僕ら『奴隷』の仕事だ。
だが、僕には……。あいつに明日の朝を迎えさせる気は毛頭なかった。
「……僕は今夜、決行しようと思う。二人は?」
三人で焚き火を囲み。何度、こういった話をしただろう。
「……でも、勇者殺しは大罪だよ? 私、嫌だよ……。あんな奴、殺しただけで自分も死ぬなんて」
リシャは自分の初体験まで奪われたというのに、それでも自分の死と天秤にはかけられない。いや、かけたくないと言った方が正しいか。
「俺は……まだ、その時じゃないと思う。あいつには最も屈辱的な場面で、殺してほしいと物乞いをさせる」
ロゼフはそういって、自分の腕に爪を立てた。
ロゼフの言うように、最も悲痛な死を味わせたい……その気持ちもわかる。
だが……。
「すまないが二人とも、僕は本気だ。それにリシャ、君のせいにはならないよ。僕一人であいつは始末するからね。ロゼフ、僕だってそうしたい……でも、待てないんだ。分かってくれ」
「そうだよな……あいつは妹さんの仇だもんな。証拠は無くても、首を吊ったのはあの出来事の後……」
ロゼフは第一発見者だった。
その時のことを思い出したのか、立てた爪は力を失っていた。
「明日の朝になれば、この地獄のようなパーティも解散だ。二人なら、どこに入ってもやっていけるさ。まあ、僕は……お尋ね者になっちゃうけどね。ははは……」
そして、僕は妹が死んだ五カ月前から日夜練り込んでいた魔力を解放させ――――。
朝日がダンジョン内に差し込むまで、雷をカネツグに落とし続けた。
なんせ――――。「雷鳴のキリン」は無名だったカネツグのパーティーに僕が入ったことによって、呼ばれるようになったに過ぎないのだから……。




