第一章 フォーサイス家 第四話 水魔法と氷魔法
前回までのエピソードで、内容を変更した箇所があります。すみません。
「じゃ、時間をとっちゃって、ごめんなさいね。質問とか、ある?」
いえ、特にと言おうとして、思い直す。気になっていたことがあった。
「あの、水の魔法って、どんなのがあるんですか?」
ソニアはちらっとリボンとガラスを見、
「水の魔法だったのね。質問からして、使ったことは無いのかしら?」
「はい、使ったことはありません」
「そうね、私の知っているものだと、『激流』とかかしら」
よくわからないが、なんとなく強そうな気がしないでも無い。
「どんな効果なんですか?」
「水が流れるわ」
急に弱そうになってしまった。まあ、戦う前提なのもおかしいのだけれど。何に使えるだろう。洗濯?炊事?掃除にも?ああ、全部苦手。他は…飲み水?…もしかすると水魔法はあまり使えないのかもしれない。
「それから、氷魔法と相性がいいわよ。ふふ、スノー。あなた、たしか氷魔法じゃなかったかしら?」
ソニアが少しわざとらしくスノーに尋ねる。
「はい」
少しの間の後、スノーはそう答えた。
「ふふふ、それじゃ、リリーと少し魔法の練習でもしてみるといいわ」
ソニアはとても楽しそうに笑いながら言った。
「仕事は?」
スノーは真っ当な疑問を口にする。その通りだ。ただでさえ、人が少ないのに。
「ふふ、この屋敷も前はもっと少ない人数だったのよ。仕事は心配いらないわ。エイミーもいますしね」
ソニアはエイミーの名を口にする。怪しいところもあったが、仕事に関しては優秀なようだ。リリーはともかく、スノーが抜けた分の仕事もこなせるだけとなれば相当だろう。
「ほら、ほら」
二人の背中を押すソニアの力は強く、裏庭のようなところへ連れ出されてしまった。
仕事をしなくてもいいなら、まあいいか、というリリー。ソニアはどう思っているんだろう。そんなことが気になり、意味はないだろうと思いつつも、顔色をうかがう。
と、ソニアがこちらを見る顔が、一瞬、わずかに微笑んでいるように見えた。いつもの笑顔ではなく、その瞳に優しい光が宿っているような気がした。が、それは本当に一瞬で、リリーは見間違いだと思った。
「あの、魔法、を教えていただけますか?」
「はい」
というスノーの言葉を最後に、会話(会話と呼べるのかも怪しい)は途絶えてしまった。お互いが、どちらかが口を開くのを待ち続け、沈黙の睨み合いのような時間が過ぎていく。最もスノーは表情的にはずっと笑っているのだけれど。
どれくらい時間が経ったのか、たいして時間はたっていないはずだが、エイミーにはかなり長く感じられた。ふいに、シュッと音が鳴ると空中に尖った氷がいくつかあらわれていた。それが、スノーの魔法だと気づくのに三秒ほどかかり、リリーが口を開くまでさらに時間がかかった。
「これは、なんという魔法なんですか?」
「『万物撃砕氷刃』」
このとき、リリーの中の危機察知能力が告げていた。この人に逆らったら…最悪、消される。
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