96 今日が命日!?
鑑定。リーベが魔術を使えない原因を探るためにリーベを鑑定してみる。魔力の流れ、正常。ふむ、魔力の流れには問題が無いらしい。次は魔術に変換する段階だ。
「貴女に適性のある水属性の初級魔術・水球を使ってみて頂戴」
リーベに声をかける。
「はい、水球!」
何も起きない。鑑定してみてみていると不思議なことに気が付いた。何というか魔力量に対して出口が狭いのだ。
普通魔術を使うときには魔力を魔術に変換する。その時に変換する魔力量が魔術の威力につながるのだ。
そして、リーベは魔力量が尋常でなく多い。私ほどではないけれど。そのため、体が魔術に変換できる魔力の量より、彼女が魔術に変換しようとしている魔力量が多すぎてうまく魔術が発動しないのだろう。魔術を使わないとと思い詰めてより多い魔力を使おうとするから問題は一向に解決していない。
ならば如何するべきか。水球という魔術と体に合った魔力量を変換する。これが出来たら魔術を使えるはずだ。
「リーベ、少し試したいことがあるのだけれど良いかしら?」
「はい、お姉様…」
「そんなに沈んだ顔をしないの 貴女は笑顔の方が似合うわ」
励ますように優しく微笑みかけるとリーベはぶわっと頬を赤く染めた。
「…はい」
はにかんだリーベが可愛い。
じゃなくて、解決法を試してみないと。私が魔力の出力調整がうまくいかないと思っていたときにシュバルツ君が試してくれたコントロール乗っ取り作戦を試してみようと思う。癪だけど!っ癪だけど、シュバルツ君のおかげで私はコントロールを身につけたから。(まだ一寸怒っている人)
「リーベ、貴女は魔力量が多いわ そのことが仇となって魔術が使えていない だから今から貴女には適切な量の魔力を使うことを覚えてもらうわ」
「?はい」
よく分かってないように首をかしげているリーベも可愛いですね。
リーベの後ろに立ち、そっとリーベの手首に私の手を添える。
「少し不快に感じるかも知れないけれど我慢して頂戴」
後ろに立って耳元で囁けば「ひゃい!」と言ったリーベの肩が少し跳ねた。
「力を抜いて? そう良い子ね」
リーベの手首に添えた手からじわりと魔力を流す。んっ、と声が出るリーベに囁く。
「少し耐えて頂戴」
「は、はいっ…ひゃんっ!……んっん!」
…頼むから喘がないでくれ。邪念が湧く。確かに他人の魔力は異物なので過敏になるのはやむを得ないのだけれど。
「もう少し声を抑えてくれるかしら?」
「…ッはい!…ひゃん(小声)」
「このまま水球と唱えてみて?」
「はいッ、水球」
その瞬間ーぽわん、と言う擬音がまさに正しいだろうかーリーベの手から水の球が生まれ出た。
「で、出来た!?」
「ええ、その感覚を大事にして頂戴 これが魔力量の調節よ 慣れてきたら魔術に変換する魔力量を増やして徐々に使える魔術を増やしていけば良いわ」
「出来ました!出来ましたよお姉様!」
嬉しそうで何よりだ。
実のところ私が何をしたかというと簡単だ。リーベの魔力を私の魔力で分断したのだ。リーベの体をじょうろとして、魔力を水として考える。するとリーベはじょうろの中の水全てを一度の魔術で放出しようとしていたのだ。しかし、じょうろの出口は狭い。だから水が詰まってエラーを起こしていたのだ。それを私の魔力という異質なもので分断。じょうろの先端の少しの魔力だけを放出することで魔術は成功する。
「水球! また出来ました!」
リーベはご機嫌に魔術を使っている。その姿が微笑ましくて見守っていると、リーベが駆け寄ってきてぎゅっと私の手を握って言った。
「お姉様のおかげです あの、ありがとうございます お姉様は矢っ張り凄いです!」
純粋な目でそんな上目遣いで言われてさ、死なないわけがないじゃない。
セレナ・ナロウ9歳。今日が命日のようです。死因、美少女な義妹が放った口撃(激カワ)に当てられて爆死。
後書き失礼します。
何故か(本当に何故か)カップヌードル禁止令が頭の中でヘビロテされている現象をアイデンティティをようつべでヘビロテすることで書き換えている作者です。
「この二つどちらも同じテーマ(カップヌードルノセカイ)で作られている歌なんだぜ?信じられるか?信じられないよね!」って2年前から思っている人。ちなみに私はサラマンダーが好き。