78 実技試験
筆記試験の成績表が返却されて数週間後、実技試験の実施日がやって来た。
実技試験は二つのパートに分けられる。1つ目が魔力量測定。2つ目が実技試験(狭義)だ。そしてこの実技試験は魔術選択と武術選択に分けられる。私はもちろん魔術選択(武術はボロが出るので当然却下)だ。
学園の門をくぐり誘導にしたがって講堂に向かう。講堂は受験生がごった返していた。受験番号順に着席する。私の隣はカルドとオランジェットだった。
「筆記試験以来ですわね オランジェット」
「ええ、そうですわね」
微笑みを交わして着席する。
「久しいなセレナ」
「あら、筆記試験以来ですわねカルド ところで1位は貴方ですか?」
「ああ、そうだな 699点、1失点だ」
「私は2位で698点2失点でしたわ…文学の2点ですわね」
「奇遇だな、私も文学で1失点だ ただ今回の勝負は私のもののようだな」
「ええ、負けましたわね …実技では負けませんわ」
「もとより実技は勝負にならない それよりも君はどう加減するか考えた方が良いのでは?」
「嗚呼、そうでしたわ」
え、ホントにどうしようかな。
そんなことを考えているうちに講堂の舞台上に私の身長ほどある大きな水晶玉が運び込まれてきた。おお、ファンタジーだ。
{それで君の魔力をどうごまかすつもりかい? 君の魔力量は同世代のそれを遙かに上回っている 悪目立ち…はしなくとも多少加減しないと目立つぞ それにヴァイスの正体露見リスクもある この年でその魔力量は異常だよ}
おぅ、そうだよねぇ。どうしよっか。
「これより魔力量測定を開始します 魔力量測定ではこの水晶に触れることで体内の魔力量を計測することが出来ます 表示された数字が貴方の魔力量です それでは受験番号を呼ばれたものから順に壇上に上がるように!」
学園ファンタジーを感じるねぇ。
1番目に呼ばれて舞台上に上がった令息は緊張した様子でそっと水晶に手を触れた。その途端水晶内に光が走って水晶に数字が表示された。
「183!」
先生が数字を読み上げると拍手が起こった。おお、こんな感じで魔力量を計測していくのか。
その後も計測は続く。
「189」「204」「236」…………「373」「369」
{見たところ300くらいが平均かな それを基準に君の魔力量を予想すると300万くらいが見込まれるね 水晶を鑑定してみると測定上限が1万位みたいだ…君が測定しようとするとぶっ壊れるよ}
え、弁償モノ!?
{そうなるだろうねぇ しかもシルヴィアの魔力が君の500分の1つまり6000くらいと推察できるから壊したら少なくともシルヴィアよりも魔力量が多いことが即バレさ}
お、おうヤバイ。どうしようか。込める魔力量を加減する?
{いや、これは体内の魔力量を計測するから出力は関係ない}
そっか、それじゃあ体内の魔力量を減らせば良いのね…ってそんなこと出来る?戦って魔術を使えば消費されて減る。けど、私これまでボス戦でも体内の残存魔力量が半分を切ったことないよ?
{あー詰んだな}
え、いきなり計画崩壊?私の目立たずひっそりヴァイス計画は?
{諦めな 人生諦めが肝心}
い・や・だ。諦められないの!どうにかして誤魔化したいの。一時的で良いから魔力どこかに預けたり出来ない?ほらコインロッカーとかみたいに魔力ロッカー無い?
{あるわけ無いだろ、そんなモノ ……いや待てよ、魔力を一時的に隔離出来るところ、あるかも}
おお!マジですか。して、それは何処に?