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67 閑話 秘密を抱く人2

カルド視点です。

  「呪いを解く上で確認しておきたいことがあるの 貴方が生まれる前貴方に関して強く願われていたことはある?」

 「私に関する願い? いや、一つ思い当たる 私が生まれる前、母はなかなか跡取りになれる子を授かることが出来ず子供を得ることを強く願っていたそうだ …問いには答えたが、これで呪いを解けるのか?」

 「ええ、今のは確認よ きっとそれで間違いないでしょう 貴方に質量が無いのは、堕天使が貴方の誕生と引き換えにに貴方から質量を奪ったからでしょう」


 急に今まで呪いだと思っていた者の正体と原因が分かって妙な納得が私を襲う。乱れる心をごまかすために堕天使について言及する。

 「堕天使?神話の中で聞いたことはあるが実在するのか?」

 「ええ、実在するわ 堕天使は人の願いを叶えるときにその対価としてその人や祈りに関係する人からナニかを奪う 貴方もそうやって質量を奪われたのでしょう そして奪われたものを取り返すには貴方から質量を奪った堕天使を殺すしかない」

 また、とんでもない言葉が出てきた。

 「堕天使を殺す? そんなこと可能なのか?」

 「ええ、私なら、ね」

その淡々とした返事が妙に信頼できると私に思わせたのだろうか。いつの間にか随分と彼女のことを信頼するようになったものだ。


  「分かった、君を信じてみようか だが君はなぜ私の呪いを解こうとする?君にメリットは何も無いだろう?」

そう、そこが引っかかる。何の利益もなしに幼くとも公爵家の人間が動くだろうか?疑念を込めて彼女を見遣った。


 「私のメリットは貴方に貸しを作れること、かしら 若し私が貴方から質量を奪った堕天使を消すことが出来たら貴方は私に協力してくれないかしら?」

 「協力?内容は言えないのか?」

警戒しながら問う。

 「ええ、そうね 終わってから言うわ 断ってもいいけど、そのときは協力を頼んだことは秘密にして頂戴 これで契約成立でいい?」

これなら…まあ、良いだろう。せいぜい私を楽しませて欲しい物だ。

 「ああ、構わん …頼んだ」

 「頼まれたわ」

交渉が終わってどちらからともなくその場を立ち去った。もうすぐこの忌まわしい質量なしの環境から解き放たれる。体に質量があるとはどんな感覚なのだろうか。分からない。だけれども私にとって大きな変化になるであろうことは疑いようがなかった。ああ、もう少しこの世界にいてあげても良いよ、何てね。


  約束を交わした翌日、思うことがあってセレナに話しかける。

「ねぇ、頼みがあるんだ」

 「頼み? 何ですの?」

 「可能なら私から質量を奪った堕天使を見てみたいと思って、ね 駄目かな?」

 「別にそれくらい大丈夫ですわ 夜になりますが」

 「夜か…」

さすがに夜遅くまでは家を留守に出来ない。そんなことしたら面倒なことになるのは目に見えている。

 「フフ、そうね、夕方にいたしましょうか」

 「いいのか?」

 「いつでも大して変わりませんくてよ」

 「そう、か 君は一体?…」

時折垣間見える大人びた余裕というか年上じみた雰囲気を感じる。彼女は何者なのだろうか。そういえばそんな当然の疑問さえ抱いていなかったことに気がつき自分の動転具合を改めて思い知った。


 夕方、彼女は唐突に立ち上がって図書館の中央に進み出た。そして、図書館全体に広がる魔法陣が現れた。

 「こ、これは!?」

 「さあ、舞台を始めましょうか」

溢れだした光とともに図書館の中央に円柱状の結界が現れるその内と外に私とセレナは隔てられた。


 そして、新たな魔法陣から出た光がセレナの体を包み、体は15,6歳の少女に、銀髪は黒髪に変化した。どうなっている!?彼女の容貌は年相応に変化していて、神秘的な美しさを持っている。黒いドレスは彼女によく似合っていた。


 「そこで見ていて」

 「あ、ああ」

私はただ彼女に見蕩れていた。欲しいな。


  突如として現れた魔法陣から堕天使が姿を現した。灰色の髪、赤紫の瞳、そして背中の灰色の羽。一目で人ならざる者であることが分かる。体をこちらへむけたときに羽からパサリと灰色の羽根が数枚抜け落ちて宙を舞った。

 「汝、我を求めし者か 我はシュヴェーア 地上に降りし者なり」

これが私から質量を奪ったのか…人間味を感じられない感情のない瞳、無機質な喋り方、どこか異質さを感じずにはいられなかった。


 「御託はいいわ こちらの質問に答えて頂戴 貴方はある少年から質量を奪ったことがある?」

 「否 さにあらず 我 強奪せしことは無し」

その言い分には耳を疑った。


 「あくまで代償と言い張るのね なら聞き方を変えましょう 貴方は願いの対価に少年から質量を得たことはある?」

 「是 8年の昔、我、質量を得たり」

 「そう、それはそこの少年の質量かしら?」

 「是 彼の者の母、彼の者の誕生を願う 我その望みを聞き届けし」

 「質量を彼に返して欲しいのだけれども返してくれるかしら?」

 「否 此は正当なる対価 我に正当なる所有の権があり」

ふうん、笑わせてくれるね。寝言は寝て言え。思わずそんな言葉が口をつきそうになるほどその言い分はこちらを舐めたものだった。こんな奴に私の人生を狂わされた?冗談じゃないね。

 「そう、なら是が非でも返してもらうだけ」

そして、戦いの火蓋は切って落とされた。


 

後書き失礼します。

「閑話なのに全然終わらない~~~!」と叫びそうになっている作者です。

すみませんカルド視点はまだ続きます。次こそは終わらせますのでお許しを。

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