2 家族が尊い
セレナと美晴は同一人物です。セレナが美晴だった前世を思い出しました。
結局、この世界が、庶民聖女に関連するどの世界かわからないので、世界線については思考放棄で行くことにした。考えてもわからんものは仕方ない。眠い、寝るか。6歳児には睡眠が大事だ。
「…..お嬢様、朝でございます」
「うぅ、まだ眠いの あと少しだけ」
「なりませんお嬢様!起きてくださいませ」
布団を剥ぎ取られた。
ミルトは公爵家のメイドなのにいささか起こし方が乱暴なのでは……
「お嬢様の寝起きが悪いからでございます」
バレた。
「ミルトは読心術が使えるのかしら?」
「お嬢様はわかりやすいですから」
なんと、私はわかりやすいらしい。貴族っぽいポーカーフェイスを作るべく私が表情筋をいじっていると、
「お嬢様、何をなさりたいのか大方予想はつきますが、着替えてください」
といわれてしまった。やっぱりミルトは読心術が使えるのかもしれない。いや、私がわかりやすいだけだろう。わかっている。
言われるがままに着替えて、鏡の前に座らされて髪をとかされる。こうしてみると、セレナは、きれいな顔立ちをした美幼女だ。背中まで届くストレートの銀髪に、ブルーグレイの瞳。中身が前世残念喪女でなかったら完璧だった。
淡い青のワンピースを着せられて、食堂へ向かう。食堂にはすでに人影があった。
「あら、おはようセレナ 今日は早いのね」
「おはようございます、お母様 ミルトに起こされたので」
私に話しかけてきたのはお母様ーヴァイヒ・ナロウーだ。緩く巻かれた銀髪と深緑の瞳が美しい貴婦人で、私含め2児の母だとは思えないスタイルの良さに思わず見惚れてしまう。私の自慢の母だ。
「母上、セレナ、おはようございます」
兄が食堂にやってきた。
「あら、おはよう レーツェル 朝の稽古で疲れたでしょう」
レーツェル・ナロウことうちの兄は黒髪に母似の深緑の瞳が似合う美少年だ。尊い。
「そうでもないですよ お気遣いありがとうございます母上 …..セレナ 早起きとは珍しいな」
「そんなことはな…..「おはよう皆、そろっているな …..セレナ 今日は早いな」
「おはようございます、お父様 先ほどお母様とお兄様にも同じことを言われましたわ」
本当に皆、私をなんだと思っているのだろうか。
「まあ、食事にしよう」
私の斜め前に座っているクヴァール・ナロウー父であるーはこの国の最大派閥ナロウ派を率いる財務卿で、黒髪に、青い瞳の美丈夫だ。外では知らないが、家では優しい父だ。
いや、ナロウ家、美形が多すぎ、皆尊い。わかってたけど。母、一つ一つの仕草が優雅。兄、ショタは尊い。父、威厳がある。私、喪女。並べると違和感しかないが、外見だけなら私もセーフだろう。そう思いたい。
登場人物・語句の語源
ミルト 温厚な(笑)
ヴァイヒ 柔らかい
レーツェル 神秘
クヴァール 苦悩