19 激突
扉の奥には、男が一人立っていた。特徴のない灰色の髪に焦げ茶の瞳をした男はゆっくりとこちらを向いた。
「よう、ずいぶんな挨拶だな」
「あら、ごきげんよう 私と少し遊びましょうよ」
「おう、いいぜ 相手してやる」
なかなか乗りがいい人だ。助かるねぇ。
「雪猛威」
いきなり飛ばすよー^^
おっと、これを耐えきるか…ならば、これはどうだい!
「闇処刑人」
闇色の鎌が大量に襲いかかってくる凶悪な技だ。男もさすがにすべてを躱すのは難しく、手に持った大きな斧で、いくつかはじいている。そこを立て続けに、
「水螺旋」
「九雷撃」
と、技が襲う。これには男もたまったものではない様子だ。
「おいおい、手加減なしか?」
「あら、貴方も本気を出したらどうかしら」
すると、男の目がスッと細められた。
「俺に本気を出させたことを後悔しても知らないからな」
「後悔?貴方では空の月を墜とせないわ」
「ああ、そうかよ!」
そして、男は立て続けに、斧を振った。それに答えるように、ヴァイスは大鎌で応戦する。楽しいねぇ^^でも、そろそろ決着だねぇ
「これで終わりよ」
黒い大鎌が一際強い光を放ち始める。
「おいおい、やばいだろそれ、待て待て待て待て、こんなもの食らったら死ぬぞ! 分かったから負けを認める 何でもするから」
そして、真っ白な光が男の体を貫くか…と思われたそのとき、
「ねぇ貴方、この組織の目的を教えてほしいの 答えないなら…わかるでしょう?」
鎌を光らせなから男を脅す。
「分かった分かったからその危ないものを一度納めろ」
「分かったわ」
そして男に語らせたところによると、この組織の名前はシャッテントゥルムといい、闇ギルドとして、依頼を受けてきたらしい。シャッテントゥルムは社会で不適合者といわれるものの集まりで、うまく世間になじめないものたちの居場所だと言う。なるほどねぇ…思うところがないわけじゃないねぇ。
{君の前世も苦労したのかい?}
いや、私はネットのおかげで全世界の仲間とつながれたねぇ。だからそんなに苦労は感じていなかったよ。でも、大きな声で趣味を語ることはできなかったねぇ。
{そうかい…}
だからこの世界では一緒に趣味を謳歌しようねぇ。
{私を巻き込まないでくれるかい? それよりどうしてとどめをささなかったんだい?}
それはねぇ、もうなんとなくと言うしかないけど、男の目が助けを求めている気がしたんだよ。それで、事情を聞いてみたけど、やっぱり重い話が出てきたんだよ。それで何か他人事ではない気がしちゃったんだよ。
「そう、なら、貴方たち私の支配下に入りなさい」
「何をもくろんでいる?」
「あら、人聞きが悪いことを言うのね 私は貴方たちに生き残りの道を示しているのだけれど それで、どうなの?従うの?従わないの?」
「ああ、もう分かった 何かよう分からんが従おう その代わり生き残れるというのは本当だな」
「ええ、もちろんよ 貴方たち、ナロウ公爵家に潰されなくてよかったわね」
「ナロウ公爵家?!何がおこるところだったんだ?」
事情を説明すると、男は青ざめていた。
「ん、これからよろしく頼む、俺はライヒト、あんたの名前はなんて言うんだ?」
「ヴァイスよ」
こうしてシャッテントゥルムが支配下に入った。
{君、死亡フラグが消えてなくないかい? むしろ、フラグ立ててないかい?}
あれれ~おっかしいな~ってほんとじゃんやばっ。でも、今更やめますなんて言えないよね。はあ、仕方ない。私は1級フラグ建築士だからねぇ。フラグを折ろうとして、立てていたんだよ。
{ハハハ…}
登場人物・語句の語源
ヘンカー 処刑人
トゥルム 塔
ライヒト 軽い