167 ぽいずんぱにっく!
ヤバイ、何がヤバいかってこの状況だ。いや、ヤバいだろ。
目の前で相棒ことシュバルツが「虹色のゾウリムシが見えるね^^」って騒ぎながらつり下がっている。そう、こいつ、あろうことかさっき自ら体を縄で拘束し器用に天井から吊り下げた。簡単に言うとセルフ緊縛してキマッテル。怖。
……冷静になろう。もしかしたらこれは幻覚かも。
……いや、現実は変わらなかった。朝起きて上見たらセルフ緊縛してキマッテル相棒。怖いが!?というかここ寮の自室だが!?ねぇ!?起き抜けから何が起こっているか意味不明すぎて混乱の極みにいるんだけど!?二号!シュバルツは何をやらかしたんだ? 〈シュバルツが毒キノコを食べてしまったという……ね〉
ねえ、毒くらい分解できないの?こいつ。
〈下手に致死毒ではないばかりに分解出来ないみた……いや、むしろ自分からこの毒を受け入れている……だとっ!?アホなのか?〉
ま、まあ、ものがものだから……ね。
そう、間違えてというか半分確信犯でシュバルツが食べた毒キノコの名前をドエムタケという。
〈このキノコ服用者がドMになるという恐ろしい代物で、容量を間違えたら一生ドMになるという、まさしく性癖クラッシュ系のキノコなのだった いや、怖いが!?〉
茶化せないレベルで怖いねぇ。まあ、その辺シュバルツはしっかりしてるから食べたのは一寸だけだと思うけどさ。
そして、このキノコにはお仲間がいる。その名もドエスタケ。こちらは食べたらドSになると言う代物。そしてこのキノコ達、実は原作に出てくるのだ。
〈ああ、無理矢理シュバルツに流し込まれた知識にあったな 確か……SM家庭崩壊?〉
その通り。通称SM家庭崩壊事件である。
ヒロインこと私の義妹聖女リーベには相手役に当たる男が複数人いる。結局成立するのは第一王子で、それ以外の男とは友情で終わるのだが、その内の一人、アウグストの家庭にこのキノコ達は関わってくる。
〈確か……父がドエムタケ、母がドエスタケを誤って食べてしまい家庭内がSMクラブのような惨状になったんだったな 毎日聞こえる父の気持ちよさそう悲鳴と母の振るう鞭の音でアウグストは軽い鬱になっていたと言う……〉
そう、それをリーベが聖女の力で解毒し、家庭は元通り?になるというね。少なくとも両親は一回冷静になったことで防音室を導入したり所構わずSMおっぱじめたりはしなくなり家庭に平和が訪れたんだ。
そして、そんなことは今どうでも良い。このいかれシュバルツをどうにかしないと。セルフ緊縛してキマッテル相棒とか、これ以上見ていられない。
〈だが、解毒方法は我々にはハードルが高すぎるのでは?〉
そうなのだ。そこが問題だ。何せ原作で提示された解毒方法が聖女による浄化。だが、悪魔に浄化なんぞしたら毒どころではなく本体ごと消えかねない。え、割と真剣にピンチ!?
〈ど、如何したら良いのだ!? このままではとち狂ったシュバルツと過ごすか、悲しいがどうにかして浄化してシュバルツとはさようなら!?究極の二択過ぎる〉
……流石に浄化してさようならってするのはねぇ、良心が1mm位痛むよ。
〈1mmしか痛まないんだ……〉
いや、だって普通に怖いでしょ、おそらく自らこのキノコを食ったと思われる相棒とか。大分真剣に性癖が心配なってくるだろ。
〈まあ、確かに ……でも解毒すれば良いだけだろう?解毒をするには……あ、駄目だ 浄化は使えない 普通に私たちは聖属性を使えないので浄化できないし、仮に浄化が出来てもその時はシュバルツが詰む いや、進退窮まっているな!この状況からどう脱すれば良いんだ!?〉
えぇ、ホントに何してくれているのさシュバルツ。如何しようぅぅぅ!
〈叫んでも解決しないぞ、主よ〉
五月蠅い!正論パンチするな。……言っていることは間違って無いけどさ。
はぁ、マジで如何しよう!!!