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157 首狩り処刑人 

凄く切りが悪いけど本編と本編の間に閑話ぶちこみます。


最近セレナがセレナしてないから唯でさえ難しいお嬢様言葉のクオリティーがだだ下がりなのは目をつぶってくださいませ。

 相手の残機もとい首が残り8になったところで私はふと気が付いた。中央の首、不死って倒せ無くね?

 {そこは……何とかしよう 干渉を使えば?不死属性は剥がせる、はず}

そこは断言してよ。不安なんだけど。

 

 内心のアタフタと不安を押し殺してあくまで不敵なヴァイスとして首を落とす。首狩り処刑人の気分が今なら分かりそうだ。だって、さっきからずっと首ばっかり落としてるし。

 {首の数が命の残機だもんなあいつら}


 残りの首2本。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

sideオランジェット


 セレナもといヴァイスがノリノリで首狩り処刑人の真似事をしている間、オランジェットは模範的な攻略を進めていた。


 「大丈夫?攻略ペースが速いようなら遠慮せずおっしゃってくださいませ」

 

 オランジェットはメンバーに気遣いが出来る良い子だった。ちなみに、あの戦闘狂主人公セレナは同伴者の存在とか想定して動けるタイプではないので班を組まないで正解だ。マーガトロイド先生の判断は実にナイスだった。


 「大丈夫ですわ」

 「私も問題ありませんくてよ」


 美少女が3人、連携を組みながら戦う。セレナ辺りが見たらてぇてぇと喘ぎながら妄想を加速させそうな光景である。


 彼女らは現在29層を攻略していた。28層までをオランジェットが攻略していたので魔法陣で一気に28層まで転移して、29層を攻略していたのだ。出てくる魔物を確実に連携しながら倒す。適度に休憩を取り、ポーションで回復もする。実に模範的な攻略だった。どこぞのオート回復でポーション不要の戦闘狂主人公とは違って実に模範的である。


 オランジェット一行は29層ボスを倒した後一度20層に戻った。オランジェットが目をつけていた隠し部屋があるのでそこを目指す。隠し部屋にたどり着くとで事前に用意していた魔術具で簡易結界を張ってから休憩準備をする。携帯食を取って魔術で全身を洗浄。見張りの順番を交代で決めてから就寝だ。


 最初の見張りはオランジェットだった。隠し部屋は安全とされているが、ここはダンジョンだ。少しの油断が命取りになる。


 とは言っても大抵は何も起きない。オランジェットは火の番をしながらぼんやりと思考の海に沈んでいった。


 オランジェットにとって友人と言える存在は多い。今一緒に攻略を共にしている生徒だってヴィンター家の分家の娘達で幼い頃からの付き合いになる。


 だが、貴族の友人関係にはあくまで利害が絡む。彼女たちが自分と親しくしてくれるのは将来婚約者を探したりする際に侯爵令嬢のオランジェットと友人であるというステータスが欲しいからだ。侯爵令嬢という威光はそれだけ大きい。一寸した子爵家の令嬢でもオランジェットの友人と言うだけで一つ結婚市場で同じくらいの家格の令嬢より有利になる。


 そんなことを考えれば友人関係は家と家との付き合い、中身なんて伴わない空虚なものにしかオランジェットには思えなかった。取り繕って話を合わせて、できるだけ親や周囲に求められるような理想の貴族令嬢であろうとした。






 本当は刺繍は苦手、だけど無理して出来る振りをして私も刺繍は好きですわ、なんて嘘をつく。


 本当はお茶会よりも魔術の練習の方が好き。だけど、お茶会に行っては笑みを浮かべてお会いできて嬉しい、この時間が終わるのが名残惜しいと空々しい嘘をつく。


 本当は可愛いものより綺麗なものの方が好き。だけど、年頃の令嬢らしく淡い黄緑のドレスを選ぶのだ。いいなと思った綺麗な深緑色の大人びたドレスは買えない。





 そんな生活に慣れきった時、刺繍の会で出会ったのがセレナだった。


 深い青の大人びたデザインのドレスをさらりと着こなした銀髪の美しいお姫様。実はオランジェットは自分より格上の令嬢に会うのは初めてだった。だから緊張しながらそっと様子を伺っていたのだが、よそ見していたのが徒になったのか刺繍針で指を刺してしまったのだ。思わず上がった声、それを恥じると共に同時に聞こえた声に驚いた。その声の主がセレナだったのだ。


 そして、驚いたことに自分から話しかけた。憧憬を込めて見つめていた少女に自分から話しかけるなんて思えば大胆なことをしたと思う。


 そして、直ぐに仲良くなった。セレナは妙に気取ったところが無く其れでいて腹の底を見せない貴族的な笑みの持ち主だった。オランジェットは彼女の媚びるような所も無いのに無愛想では無い不思議な雰囲気に惹かれたのだ。


 まあ、それは単にセレナの猫かぶりと底の見えない美少女への愛が奇跡的に融合してオランジェットにとっての理想的な人間が合成されただけなのだが。


 そして、彼女と時を過ごした。つかず離れず。いつも会うわけでは無いけれど疎遠とは言わない程度には顔を合わせた。彼女の話はいつも面白くその優秀さに驚かされるばかりだった。


 学園に入学してからもそうだ。彼女は講義を受けずに試験に合格していった。なのに、偉ぶったところが無く淡々としている彼女は一人だった。


 思えば彼女が話をするのはオランジェットと公爵令息のカルド、そして、歓迎会であった先輩だけだ。取り巻きらしい取り巻きもいない彼女はいつも一人だ。そういう変に群れようとしない淡泊なところにオランジェットは惹かれたのだ。だけど、その姿は孤高であると同時にさみしさを漂わせているように見えてならなかった。生き急いでいるような、何か、何か異質なものを確かに感じ取ったのだった。そう、まるで……


 夜は更け、見張りは交代。何かつかみかけた筈の思考は空を切った。

 


 

後書き失礼します。

意外とオランジェットのことが好きだけど登場させられてないなと思っていた作者です。

そして、いつも通り中身が無い。

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