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155 人外魔境

 学園ダンジョンに皆が入って行く。雲一つ無い快晴だが、ダンジョンの中は薄暗く、ほんのりとした明かりがうっすら前方を照らすのみだ。生徒同士のひっそりとした会話がざわめきとなって空間内に拡散される。


 そして、少しだけ進むと魔法陣がある。この魔法陣に乗り込めばこれまで自分が踏破した階層に行くことが出来るのだ。


 生徒達の中でこの夏の遠足までにダンジョンに入ったことがある者は少ない。大抵の生徒の最高踏破階層記録は0だ。

 {君は100だけどねぇ……}

本当にこんなに早い時期に100層踏破するのが珍しいとは思わなかったんだよねぇ。いやぁ、想定外だったよ。

 {…}


 そんなこともあって魔法陣に乗り込む生徒はそれほど多くない。オランジェット、カルド、それから数人が魔法陣を利用しているようだが、Aクラスでも数人だ。


 私も魔法陣に乗り込む。さ、行こう!ミステリアスに謎の美少女プレイと洒落込もうか!

 {「ミステリアスに謎」って頭痛が痛い的なものを感じる……}

えぇい、五月蠅いし、細かいなぁ!こういうのは雰囲気で乗り切ったら良いの!

 {そのうちアホさが露呈するぞ}

……ひゃい。


さて、お巫山戯はここまでにしておいて、それじゃあ、攻略と行きましょうか。


 何も無い空間から得物の鎌を取り出し、私は駆け出した。道行きに現れる魔物を一閃。飛び散る鮮血の中を駆け抜ける。飛び込んでくる鳥型の魔物を切り捨てる。鎌の一振りが巨大な斬撃となって小物を蹴散らす。


 何層まで行こうかな?

 {お散歩気分でダンジョンは攻略するものじゃ無いんだよ?}

え?何か言った?私ナニモキコエナーイ。

 {君のその口癖、無性にイラッとくるんだよねぇ……}


 まあ、それはさておき、100層を攻略していく。学園ダンジョンの最高攻略記録は119層だ。120層目からはヒュドラとかキマイラとかケルベロスとかオルトロスと言った化け物が出てくるんだとか。過去の最高到達記録を持つクランもボスにすら挑戦できず敗北したことから120層からは人外魔境と呼ばれている……だって。私いけると思う?人外魔境だよ?大丈夫かな?

 {私がついてるのに3つ頭の化け物に負けると思うのかい?人外魔境と言うならばこっちははその代表格みたいなものじゃないか}

あ、君、悪魔公だもんね。

 {そうだよ、言っちゃあ何だが私の本来の姿は()でそもそも物質としての定型すら解脱してるんだよ、未だに固形を脱せないような奴らに負けるとでも?}

いや、解脱って仏教じゃ無いんだから……と言うか普通、固形を辞めたいとは思わないと思うよ?

 {え?}

え?

 {解脱……したくないの!?}

いや、したくないでしょっ!靄になったら美少女も何もあったものじゃ無いじゃないの!

 {成る程 完璧に理解した}

女子高生のスカートの如く翻る意見だな。


 まあ、戯れ言はここまでにしようか。

 {とは言っても、いつも痴れ言と戯れ言しか言って無くない?}

混ぜっ返さないで!話が進まないから。とりあえず例の人外魔境まで行ってみないことには色々分かったもんじゃ無いからさっさと行くよ。

 {了解、任せなよ相棒 私たちに倒せない敵なんてないさ}

ん、知ってるよ、相棒。


 {……はわわわわ、「ん」ってうなずき方可愛くない???きゃわわわわ「知ってるよ、相棒」って何!?溜めの部分すら可愛い え?何これ、美少女崩壊と人間の輝きが核融合的反応を起こしている!?}

……怖。一寸何言ってるか理解できない。って、敵襲だよ。

 {了解、鎌の錆にしてやろうねぇ 大丈夫、みんな草葉の陰送りさ^^}

殺る気満々だな。


 


 夕方。と言ってもダンジョンの内部は常に薄暗いので朝だろうが昼だろうが夕方だろうが大して変わらないが夕方が来た。


 ダンジョン内部で野営を行う。1層や2層あたりまで戻って適当な所に泊まるもよし、現在の階層で隠し部屋を探して泊まるもよし、何なら徹夜という手もある。

 {徹夜で攻略を進める必要は無いと思うよ……君ぶっちぎりトップじゃん}

そうだねぇ、今のところ119層まで攻略して、今120層目だからとりあえずボスを撃破してから泊まる所を探そうか。それに我々には古の間に泊まるという手もあるしねぇ。

 {例の鍵はちゃんと持ってるよ^^}


 薄暗いダンジョンに落ちた影が心なしか濃くなる中、石造りの廊下を血に染め私は進み続けた。向かってくる魔物は段々と強くなってくる。こないだの飛竜なんて目じゃないとまでは言わないが確実にそのレベル帯の魔物ばかりが出没している。


 だから私も応戦すべく重力魔術グラビティオペレーションを解禁するために対天使殲滅形態に移行していた。セレナとしての私は銀髪だがヴァイスの姿を取ることで黒髪に変化する。そして、衣装などその他の見た目も変わる。

 {相変わらずビジュが良い}

ありがと^^



 まず、出没したのはケルベロスだった。3つ頭の犬のような見た目は実際に見ると中々グロテスクだ。

 {合成物感が凄い}


 冥府の番犬として有名なこの魔物は死者を貪り喰らう。

 {アンデットの類いを食べることもあるからネクロマンサーの天敵だよ}

そう言えばネクロマンサーとかこの世界で見たこと無いな。いるの?

 {まあ、普通に禁術の類いだけど死霊術はあるしネクロマンサーも存在はするよ 何度か会ったことがある}

あるんだ。


 そんなことを考えながらも目の前の怪物に対峙する。よだれからトリカブトが生まれたという伝説を持つこの魔物は猛毒を噴射する。だからその隙を与えないように鎌を振るう。


 「グラビティオペレーション 負荷10倍!」


 振るった鎌が一つ目の首に突き刺さる。鋭利な刃がその首に傷をつける。


 戦いは始まったばかり。 



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