149 恍惚ASMR
さて、原稿準備及び無配用ASMR台本を作っていこうか^^部屋に戻ってきた私たちは本格的に文化祭の準備を始めた。
{録音の魔術具の方はこっちで改良する 必ず間に合わせるからね^^}
頼んだ。
今回の我々の合同誌のテーマは「定番」で行こうかと思う。ノーマルに百合百合するよ^^甘々:ギャグ:シリアス=5:2:3ぐらいで行こう。
{はい!先生!膝枕シチュは必須だと思います}
採用。……さあ、ネタだしするぞ^^手伝い賜えよ、同士シュバルツ!
毎日、ネタだしやプロット制作を続けながらダンジョンの方もたまに攻略し、インスピレーションを求めて図書館に行ってみたりと忙しく生活していたある日。シュバルツ君から素晴らしいメッセージがもたらされた。
{出来たよ、録音の魔術具! 普通の魔力量の持ち主でも全然余裕で再生できるように徹底的に省エネしたからね!}
っしゃぁ!録音するぞ!
{おぅ!}
さて、録音といこうか^^今回は録音用に最高の舞台を用意したんだ^^
{何処なんだい?}
ふっふっふ、旧校舎行こうぜ!旧校舎って遠目に見たけど良い感じの廃墟だったんだよ!真夜中にミステリアススポットでミステリアスに収録するぞ!
{いえーい!}
抜き足、差し足、忍び足だなんて古典的な泥棒の様な真似はせず、旧校舎へは転移で向かう。
いかにもという雰囲気の木造の校舎を歩く。階段の手摺りは繊細な彫刻が施されているし、古いけど華やかで、老朽化で退廃している感じを合わせると完璧だ。
人気の無い廊下を進む。ギシギシと床がきしみ、何というかホラーゲームみたいになってきている。
{きゃー、私怖いよー}
棒読みw。
そして、人気の無い小ホールを発見。何だか雑然としたものが色々置いてある、だがそれが良い。絵の入っていない額縁、星を模した水晶、月のオブジェ、よく分からない魔導書や魔法陣、素材、そして、謎の人形。
{この等身大美少女の人型不気味だねぇ……何というかマネキンみたいだ}
言っちゃあ何だがこの人形、全裸だ。服を着せてやれよ、服を。その一点においてはここに美少女等身大人形を放置したやつに文句を言いたい。白いカントリー調のワンピースを着せて、エピソード「夏の思い出」をスタートさせたいところだ。
{文句が欲望に一瞬で変換されていくところは私嫌いじゃ無いよ}
お褒めにあずかり光栄だねぇ。
とりあえず収録準備を始める。今回、ASMR音声のテーマは「盗み聞き」だ。戦場で敵を倒した後、イチャイチャするシュヴァイを視聴者が盗み見てしまうシチュエーション^^見せつけて見せつけて色々した後に無粋な盗み聞きをした視聴者をシュヴァイが殺す、と言う物騒かつ我々のcpの個性を的確に伝えられる素敵音声にする予定だ。
{素敵すぎるねぇ}
定番の性癖破壊睡眠導入音声や、目覚まし性癖破壊音声とも迷ったんだけど、そういうのは今後展開していこうか^^
{もちろんだねぇ}
無配以外で作っても良いかも。
{時間があったらやろうねぇ}
準備を始める。ヘッドマイクを準備したり、足の踏み場が若干怪しいのでスペースを作る。
妥協は敵だぞ!今から君はヤンデレドS攻めシュバルツだ。
「ーそうね、分かっているとも、ヴァイス」
異常な順応速度だ。というかルビおかしくない?
実体化したやる気たっぷりのシュバルツ君に応えるように私もヴァイスになる。高まってきたよ^^
「さて、今回はあくまで見られていることを意識したことによる羞恥が大切なのだから、そこを意識して頂戴^^」
おい、一寸中身漏れてんぞ。
「分かってるわ^^」
{そっちもね}
「では始めましょうか」
目線を合わせて私は微笑む。
「シュバルツ、こっちは片付けたわ」
{少しかすれているのが最高だねぇ}
思念を共有している私たちはこうやって思考世界で打ち合わせたり、視聴者もとい消費者目線の感想を共有出来るのだ。
{我々の強みだねぇ}
「私も終わったよ」
「なら、帰りましょう」
{あくまで素っ気ない態度が良い^^}
「待って、」
「んっ…あ、」
{どれ位キスしますか?}
もうしばらく行こう。いやぁ、君、「待って」の所最高にエロかったんだが。
{あざっす}
「いきなり何をするの?」
「何ってキスだけど、気に入らなかった?こんなにも蕩けた顔をしているのに?」
そう言ったシュバルツは私の頬を撫ぜる。風が欲しい!
{あいよ!風行きまーす!}
右上に出現した魔法陣からざぁっと風が吹きスカートが揺れ、衣擦れの音がする。さぁ、ここからは吐息多めで行くぞ。
{了解!君も最高の反応をするねぇ}
「っ、そんなこと」
「ない、とは言わせないよ」
ああ、魔力の強い高ぶりを感じる……最高だ……
{恍惚……}
お互い、謎めく美少女同士の絡みに魔力がうねり、高まっていく。
「ん、ハァ……」
{吐息がエロい}
それな。矢っ張り高まってきているからだよ。脳内会話によって阿吽の呼吸で繰り広げられる会話は我々の美少女の輝きをこれ以上無く引き出していた。
{美少女の輝きがこれ以上無いほどに高められている……これで我々は新たなる境地へ進化するのだ……爆発的な魔力の増加を観測、共鳴しているよ……我々は高め会っている}
譫言を呟きながら我々は進化していた。
双子形態によるダブルミステリアス効果は覿面のようで、ASMRも我々も新たなる境地に至った。素晴らしい。
「さて、無粋な覗き屋さん、貴方は私たちに何をくれるのかしら?鑑賞料くらいは払ってほしいものね、何て言っても私のヴァイスの痴態を見てしまったのだから」
{まあ、見せつけていたのはシュバルツという設定なんだけどね}
見せつけイチャイチャ、日本の伝統だね。
{日本ってそんな国だった?}
シュバルツ君が一瞬正気に戻りかけるが表面上はなりきり冷徹演技を続行中だ。
「え?お金なら幾らでも払う?やだなぁ、私のヴァイスの価値を金銭如きで計ろうだ何て……何ておぞましくて烏滸がましい」
そこの冷徹ボイス最高!
{あざっす^^}
「さて、もちろん、君の命を持って償ってね……初めましてでさようならだ」
シュアルツの台詞を最後に「ぷつり」と意識の切れる音を最後に息絶える……と言う演出だ。
{完璧……}
ASMRのあまりにperfectな仕上がりの余韻に我々は浸る。
{恍惚は脳内麻薬 美少女の輝きは禁断の喜びを我々にもたらす}
我々が作り上げた聖域がひたすら輝きを放っている……今はただこの魔力の高ぶりに身を任せるんだ……
「規定の魔力量に達しました 召喚を開始します」
え?
{え?}
何これ……人形が喋った?
{何が起こっているんだ!?}