145 想定外
「貴方たちは何者なの?そしてここは何処なのかしら」
エリサ先輩が問いかける。
「折角のヴァイスとの逢瀬を邪魔した君たちに答えてやる義理はないと思うけど? これだから人間は嫌なんだよ… 質問ばかりで直ぐ自分の無知を晒す それよりこれ以上私の機嫌を損ねる前に消えてくれないかな?」
すげなくシュバルツ君が言うとエリサ先輩達が怯んでいるのが伝わってきた。
良い感じに曇らせようと君が頑張ってくれているのは分かるんだが美少女の輝きは損なうなよ。当然のことながら美少女に危害を加えたら駄目だからね。
{もちろん配慮するんだねぇ}
なら良い。
「人、ではないというのなら貴方は何者?」
エリサ先輩の後ろからひょっこり少女が出てきて聞いてきた。あの子可愛いな。
{分かる すっごい可愛い ショートカットは珍しいな}
「質問を許した覚えはない」
可愛いとか褒めまくった口ですげない態度のシュバルツ君。落差が酷い。
{いや、君がやれって言ったんじゃ無い 薄幸の使役者ムーブしたいのでその辺よろしくって}
それはそう。
「いい加減にしろ!俺たちを元の場所に返せ!」
いや、こっちも男なんて呼んでないから。帰れるもんならさっさと帰れ。用事があるのは美少女だ。
{思想が過激だ}
君が言う?
「こちらとしても呼んだつもりは無い 私は気が短いのでね そろそろ消えて貰おうか ああ、最後に名くらいは教えておこうか 私はシュバルツ 闇の中の闇にして夜の王たる悪魔公だ 気紛れに願いを叶えてやることもあるが、少なくとも今はその時ではない」
無機質な声と、大袈裟なほどの身振り手振り。それによってシュバルツ君の持つ人外らしい雰囲気が増していた。
「さあ、始めようか」
そして、シュバルツ君は一瞬で動いた。鎌を一振り。それだけでもの凄い衝撃が彼らを襲う。後方の壁に叩きつけられた者、盾で辛うじて防ぎきった者、それぞれだが、いきなり連携が崩れたこの隙を見逃すシュバルツではない。短距離転移でいきなりショートカットの美少女の目の前に現れて縊り殺さんとした。
アウトだな。美少女には手を出すなって言ったよね?
{待って、お慈悲は!?}
無い。そこで断罪を待ってろ。君にこの場は任せられない。一旦離脱するぞ。
「待ちなさい、シュバルツ」
その場に響いたのは凜とした声だった、私の。
「なんのためにここへ来たのか忘れたの? 彼らを消すのは今でなくても良いでしょう? さっさと行くわよ」
撮影会の続きしないと。
「はぁ、分かったよヴァイス そういうことだから今日は見逃すが、次があるとは思わない方が良い」
そう言い捨てて、私たちは彼らに背を向けた。シュバルツ君にさりげなく腰を抱かれる。うん。良いな。
「待ちなさい! 貴方たちは何者か答えを聞いていない!」
あ、何か昔使ってた設定を思い出したぞ。
「…強いて言うなれば私は闇の裁きの代行者よ」
振り返ることなくそう言う。懐かしいねこの設定。
「闇の裁きの代行者!? まさか、貴方が3年前の魔王教壊滅事件の!?」
ん?なんでこの子知ってるの?こんなショートカットちゃんなんて私、これまで出会ったことないよ?え、なんで?