144 バグ
まあ、シュバルツ君のアブノーマル趣味がどうなるかは今はどうでも良い。今はとりあえず理想の美少女を追求するだけだ。
{内なる美少女の成長を感じる…これが人間が持つ温かみなのか?悪魔の私でも心あるヒトに為れるのか…!?}
また、シュバルツ君の思考が迷走してるよ…安心したまえ。君の欲望にまみれた心は人間と遜色ないから。
「…誰だ!? って、そこで何をしているっ!?」
っ!?
{誰だ!?}
気が付かなかった、だと!?シュバルツ君見張りは頼んだだろ!?
{すまない、夢中になりすぎて周囲が見えていなかったんだ…}
まあ、さっきまで素晴らしき研鑽タイムだったから仕方ないよ。
とりあえず今はこの局面をどう乗り切るかだ。こちらを見て警戒しているのは10人程の青少年。うん、学園生だな。しかしどうやって来たんだ?ここ、あの鍵がないと入れないんじゃ…
{…あ~、ダンジョンはたまにバグを起こして無作為転移を起こすことがあるんだ 彼らは十中八九無作為転移に巻き込まれたようだね}
ダンジョンめ、何てことを…折角良い感じに高まってきたのに。
{いや、衆人環視プレイというのも中々乙なものだt…
アホか!んなことしないよ!恥ずかしい…ったく。とりあえず君は今から「見られたからには逃すわけにはいかない」とか適当なこと言って彼らの相手でもしてて。解決策考えるから。
{了解}
あ、丁度良いから、悪魔に貪られる薄幸の使役者ムーブして曇らせていきたいのでその辺よろしく。
{え? ああ、了解}
「質問は何をしているかだったかな?」
そう言ってシュバルツ君はゆったりと私の上から身を起こした。そして、彼らの方を向きニィっと嗤う。それだけで怯んだ気配が伝わる。
「相棒と信頼を確かめ合っていたんだよ」
そう嘯いたシュバルツ君を見遣りながら、気怠げに身を起こし、少々乱れた衣服を直しながら私は言う。
「よくもまあ、心にもないことがすらすら出てくるものね」
皮肉と自嘲を盛り付けた嫌味がシュバルツ君にクリティカルヒット!はせず、余裕げな笑みは崩れなかった。
「おや、心にもないだなんてとんでもない これは私の本心だよ」
そう言ってシュバルツ君は私の顎を指先で捉え上向かせる。私を見下ろす視線とシュバルツ君を見上げる視線が交差する。先に目をそらしたのはこちら。
「止めて頂戴 もう気分じゃないのよ」
「それは残念」
シュバルツ君は全く残念そうではない顔で嗤う。
「それなら、君がまたその気になる前に無粋な客人にはご退場願おうか」
シュバルツ君は彼らを見据えながら大鎌をずるりと取り出した。
場に緊張が走ったその時私は気づいた。いや、気が付いてしまった。
奥の方で立っている人、エリサ先輩だ。え、じゃあ、この集団ってアブソリュートスローン!?学内の城取クラン一位の!?え、どどどどうしよう。ノープランだ…