138 掛け合いですか!ありがとうございます。
やり過ぎたかな…何て反省しながらライストナー先生の部屋を出た。
そして、私はその後も順調に講義、と言うより試験を消化していった。
幾何基礎、簿記、音楽理論、言語論、歴史基礎、魔術概論、魔術史学、ダンジョン学、美術史、哲学基礎、総合地理、代数基礎、基礎統計学、作法基礎、音楽史、古典基礎、文芸基礎、法学基礎、魔術生物学、基礎経営学、教育学、薬学基礎…
頭おかしいのではと思うくらい試験を受けまくった。
試験を受けたのは何も座学だけではない。
実践的作法、音楽、平面美術、魔術実技、戦闘技能基礎、薬学、立体美術、魔術工学、魔術生物解剖学…
実技も受けまくった。自分でもやりながら頭おかしいのではと思うくらい受けまくった。
だが、その成果は正直言ってとんでもなかった。恐ろしいことに2週間で6000単位が手に入ったのだ。正直言って怖い位の成果だった。
{1年生の夏休みにも入ってないのに卒業できる単位数を集めてしまったという恐怖}
それな。正直言って恐怖ものだねぇ。
だが、これで最低限学園からは何も言われないだろう。自由時間のスタートである。
{というわけで新作ASMR読み上げ会だねぇ!}
イエーイ!ドンドンパフパフ~~~!
今回のASMR台本はどんな感じになっているんだい?
{フフフ、今回は性癖を詰め込みまくったぜ^^ その名もなんちゃって援助交際だ^^}
あっ…好きだ。
{伝わったか!}
援助交際。現実的にはがっつりアウトだが、創作の中で楽しむ分には魅力的な設定だねぇ^^
{あの、退廃的な背徳感が良いんだ}
分かる。あ、あの、掛け合いしませんか?何かすっごい掛け合いしたいんだけど!創作意欲の高ぶりが止まらないんだけど!
{わかりみが深い 是非ともやりましょう! 同士よ!}
今のシュバルツ君は私の目に尊敬する同士として映っているのでたまに敬語が飛び出してくるが、まあ、それは向こうも同じだ。
というわけで就寝前、ベットの上にごろんと転がった私たちはASMR読み上げ会の前に掛け合いを始めた。
設定としては年の離れた義理の姉妹で行こうか^^ 妹の方が養女がいいかな
{高位貴族の娘である姉の方が底辺貴族の娘である妹を虐待家族から引き取って育てているみたいな設定でやりたくない? それで、惹かれあった血のつながらない姉妹は関係を持つみたいな^^ 場面としては事後の朝かな}
よし、行こう!
「『次は何時会える?』と聞いたのは少女の方で、『5日後なら空いている』と遠回しな約束を取り付けたのは女の方だった。少女は真白な肢体に絡みついた亜麻色の長い髪を払ってシャツを羽織り、女は気怠げに紫煙をふかしていた。」
「『流行りのカフェに行きたいの』と強請った少女に、ゆるりと視線を向けた女は『良いよ』と承諾の言葉を口にした。休日の柔らかい光が青白いカーテンを透かして箱庭の様な寝室に注いでいる中、少女は女を眺める。」
「いつもならまだ寝台の上で惰眠を貪っているであろう女が既に身支度を調え、澄ました顔で煙管片手に、珈琲を啜る姿に少女は言いようのない苛立ちを覚えた。見慣れた白いシャツと黒いスカート姿なのに何となく気に入らない。そしてそんな自身の思考回路に少女は嫌悪を覚えた。自分だけが次の逢瀬を楽しみにしているようで面白くない。」
「黒髪に覆われた整ったかんばせの輪郭が光に融けていく様な気がした。ゆるりとこちらを向いた女は黒い瞳に少女を捉えた。瞳を縁取る睫が小さく瞬いて、女はその花も恥じらうほど美しいかんばせに微笑を浮かべる。『支度は出来た?』ぽってりとした薄桃色の唇が言葉を紡いだ。」
「支度は出来た、が少女はまだ部屋を出る気は無かった。『もう少し…』居て良いのかと許可を乞う言葉は口にした端から喉の奥で淡く溶けた。それを見遣った女は『そう』と呟いた。互いの言葉が箱庭に溶けて降り積もっていく。少女はこの沈黙が嫌いではなかった。」
「気が付けば約束の日だった。『紐、結んで』女の名を呼びながら少女は身に纏った夜色のワンピースから覗く白く華奢な背中を女に晒した。女が買い与えた上品な意匠のワンピースは貴族の着るものらしく他者の手がないと着用できない複雑な作りのもので、当然のことながら少女一人では身につけられるものではなかった。そのため、少女の言を受けて女はだらりと垂れた紐を手にする。少女は項にかかる髪を邪魔にならないようにとかき分けて俯いた。」
「女は露わになった耳朶に囁いた。『じっとしていて』こくんと頷いた少女は伏せた瞼をかすかに震わせた。黙々と女は少女にワンピースを着付け始めた。きゅっ、きゅっ、と紐が締まる音と微かな少女の息遣いだけが箱庭の寝室に響いている。眼前に晒された白い背中をなぞるように眺める女の吐息が少女のまろい肌を擽った。最後の結び目を仕上げた女は不意に少女の薄い下腹部を抱き寄せた。肩に顔を埋め仄かな甘い香りを吸い込む。少女はされるがままに女に抱きしめられていた。」
「『あ、あれも付けて』少女が不意に思い出したように言った。少女の視線の先には小さな木箱があった。名残惜しそうに女は少女から体を離し、木箱をパカリと開けた。そこに入っていたのは女が少女に贈ったチョーカー。紺色のサテンのリボンに深い海の色をした宝石があしらわれたそれを女は手に取る。そして、さらけ出された少女の項にそっとチョーカーを付けた。少女の瞳と同じ青が白い喉元に煌めく。女はその仕上がりに満足げに目を細め、口元に微笑を浮かべた。」
「ふと女は少女の項にかぷりとかみついた。『あ、っ』と鼻にかかった声が少女の口から漏れ出る。少女はその声の甘さを恥じらうように女から体を離した。『カフェに行くから、今は駄目』少女はささやかな拒否を示した。『駄目?』こてんと首をかしげて問う女の見た目に合わず幼い仕草が少女には酷く愛おしい。されど、駄目なものは駄目なのだ。今、ここで夜色の下を曝かれては困る。『帰ってきてから、なら…』少女の控えめな許しに女は微笑んだ。行為自体は拒まない稚いはしたなさが女には可愛らしく映る。思わず自然な笑みが零れ落ちた。」
「『でも、今は駄目なのっ!』再開された女の不埒な手の動きに少女はむぅと頬を膨らませて見せる。ふいっ、と顔を背けた姿は大層愛おしいと思うが、今は機嫌を直して貰わないと困る。女は少女を宥めるために口を開いた。『好きなもの買うから、ね?』だから許して?と女は少女の顔色を伺う。少女はつんとそっぽを向き、拗ねた声色で『タルト・タタン…買ってくれる?』と言い、女に有名なケーキ屋の名前を告げた。」
「女は『分かった』と言い、少女の華奢な顎をつかんでこちらを向かせた。つんと尖った唇が常より甘やかな色を乗せていることに気が付いた女は、少女に問う。『化粧してるの、珍しいね』と。少女はその言葉に言いようも無い甘酸っぱさを感じ、頬を紅潮させる。少女は恥じらいながら『貰い物だから使わないとと思ったの』と幼子の言い訳じみた答えを返す。女が与えた化粧品で身を飾る姿は大層愛らしい。『ふふ、逢瀬だから使ってくれるの?』女の揶揄い混じりの言葉に少女はわかりやすく赤面しながら答えた。『これまでは使う機会が無かっただけだから!』そんな少女の誤魔化しがまた可愛いと思ってしまう女だった。」
「女の余裕ありげな微笑が変わらないのを見て少女はすっかり不貞腐れてしまう。可愛い、だ何てわかりやすい褒め言葉が欲しかったわけじゃないけれど矢っ張り褒めて欲しいなと思った少女は少しだけ媚びを含んだ動作で女に寄りかかった。上目遣いで見上げられた女はその視線に含まれた意味合いを正しく理解して答えた『よく似合ってるよ』と。細い指先で耳朶をなぞり、甘い色を乗せた唇をぷにと押した。少女の常より血色の良い肌にさっと赤みが差した、ほんの一瞬だけ。」
「『キスする?』少女は女の声を呼び、赤面から打って変わって無垢な顔で問いかける。『しないよ、可愛いからしない』『可愛いのに?』『化粧が落ちたら如何するの』と女は困った顔で言った。『化粧が落ちるようなキスするの?』少女の問いに答えに窮した女を見て、少女はきゃらきゃらと笑った。女は少女の鈴を転がすような声音が矢張り愛おしかった。女はそうやって少女の声で自身の名を呼ばれる度に我が身のものとは思えない美しさが自身の名に宿る気がして不思議な気分になる。それは目の前の少女が口にするからなのだろうなとぼんやりと思った。」
「女は思考の海から浮かび上がり、少女の名を呼ぶ。『行こうか』女の促す声で少女は笑い声を引っ込めた。こちらに向けて手を差し伸べた女を見遣る。女の、花も恥じらうほどのかんばせは、いつ見ても整っていた。少女は女の手を取った。少女の雪膚が女の華奢な指先と触れあった瞬間、重ねた手から熱が生まれたのを少女は幻視した。『うん』少女は頷いて女に寄り添った。女のエスコートは相も変わらず滑らかなものだった。」
後書き失礼します。
今回本編よりも掛け合いパートが長くなって「あれ、こんな筈じゃ…」と困惑している作者です。
最近、終始強めの幻覚キメてます。
がんよりも特効薬が見当たらない「推しを弱らせたい病」が悪化して常に体調不良ものの二次創作が脳内を駆け巡ってます。おかしいな…