132 10トントラック級の痛みには慣れたくない
紅い血の鎖を振り回し一体を孤立させる。
「さて、最初に相手をしてくれるのは貴方かしら?」
「っ…」
うろたえた様子の標的の天使に、長剣を振り下ろし、腹に一発キックを叩き込む。
「っ…聖光!」
至近距離でぶっ放された白い光ごと『血塗れの剣舞』で刺し貫く。
「血魔術! 殲滅の惨禍! 『血塗れの剣舞』!」
鮮血に染め上げられた天使を放置して、新たに躍り掛かってきた天使の攻撃をひらりと避け、手に持った長剣で薙ぎ払う。
{そろそろ『血塗れの美し姫』の効果が切れるから新たにバフをかけ直すかどうにかして!}
え、マジ!?とりあえず了解!
「光りの審判!」
幾条もに別れた白い光を全て鎖で捌ききろうとするが途中で『血塗れの美し姫』の効果が切れてしまい、捌ききれなかった光が幾分かクリティカルヒットしてしまい全身が酷く痺れる。衣装も黒色に戻ってしまった。
其れを好機とみたのか、天使が一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「「「「「浄化!」」」」」
{不味いぞ! これは喰らったら本気で不味い! 避けろ!}
接近してくる真っ白な光の奔流を避ける為に必死に頭を回転させる。何か無いかっ、何か無いか!
あった!
「血魔術! 深紅の加護をこの手に! 『鮮血の守護』!」
辺り一帯の血を全て吸い込んだ深紅の大きな血の盾が現れる。その盾が浄化の光を止めている間に連続して血魔術を行使する。
「血魔術! 幻想と幽夢で惑え! 『血塗れの美し姫』!」
衣装が紅い血をかぶったように真っ赤に変化し、身体強化に再びバフがかかり筋力が強化される。また、周囲に展開する紅い鎖を再び操作できるようになった。その鎖をダンジョン内の柱に巻き付けて盾の影から素早く移動する。そして、『鮮血の守護』で使い切ってしまった血を補うためナイフで切りつけていない方の手首を切った。
「んっっっ”! …私はここよ、何処を見ているのかしら?」
煽る。痛みに耐えながら煽る。
すると、こちらを捉えた天使が一斉に攻撃を行使してくる。
「逃げられたかっ! 次だ!」
「「「「「除悪!」」」」」
いや、除悪って確かにこちとら悪魔に憑かれているけど除悪は流石にないのでは?お豆腐メンタルが傷付いちゃう。
{お豆腐メンタル? …その豆腐って頭を角にぶつけたら自殺できるタイプのやつ?}
いや、私のメンタルはそんな鋼鉄じゃないからね!?
{え?}
…え?
まあ良い。白い光球が迫ってくる。その対応が先だ。
『鮮血の守護』は大盾を作るだけの魔術ではない。小さな自在盾を操ることも出来るのだ。白い光球を自在盾が迎えに行き、受け止めて弾き返した。
「盾が動いた!?」
ふっふっふ。この自在盾は動くのだよ^^
そして、血の弾丸を大量発射していけば天使は確実に数を減らしていく。
{良い感じだ! この調子で行け!}
「血魔術! 蹂躙の道を切り開け! 『血塗れ姫の茨』!」
シュバルツの詠唱と共に茨が前方に発射されていく。鮮血よりも紅い茨は天使に次々と絡みつき、きつく締め上げていく。よし、行け!
「さあ、薔薇よ、綻んで頂戴」
その言葉と同時に蕾が綻び、深紅より紅い薔薇が咲いた。
あっ、痛い”ぃぃぃい!もう、10トントラック級の痛みに慣れそう。うわ、それもそれで嫌。