129 血塗れ姫の処刑鎌
{それじゃあ、痛みもひとしおだけど頑張ってね^^}
ああ、もう、やってやるよ!
「血魔術! 殺戮の夜を統べ、全てを静謐に返せ! 『血塗れ姫の処刑鎌』!」
詠唱が済むとも済まないうちにとんでもない痛みが全身を駆け巡る。正直なところ狂戦士形態の身体強化が無ければ今にも膝から崩れ落ちそうだ。
しかし、鎌をくるくると己の手足を動かすかの如く振るう。もう何年もこの武器と付き合い続けてきたのだ。一般に扱いづらいと言われていようが何だろうがそんなこと関係ない。ひたすらに突き刺しと斬撃を放ち続ける。
そして『血塗れ姫の処刑鎌』は何が凄いかというと、周りに無駄に展開させている赤い鎖を自在に操ることが出来るのだ。柱に巻き付けて巻き取って移動したり、相手を拘束して引き寄せたり便利に使えるし、動きが立体的になるので相手にとっては攻撃が読みにくくなる。
さらに大鎌は血が付着する度に血を吸って威力を増すので時間が経つほど有利になっていく。
{ただし、最大使用時間は5分だからもうすぐ効果が切れるね}
100層のボス部屋が見えた。ボスは蜘蛛の魔物、アラクネだ。上半身は人間女性の姿、下半身は蜘蛛という変わった魔物である。しかも覇気が凄く、なかなかの強敵に思えるかもしれないが今日の私は違う。何せ必要以上に自らを追い詰めるような魔術を使い、全身を強化しているのだ。100層のボス程度怖くもなんともない!
{あ、流れ出た血液が規定の量まで溜まったから武器変形だけじゃなくて、魔術にバフも解禁だよ!}
「それでもっ! 血魔術! 殺戮の夜を統べ、全てを静謐に返せ! 『血塗れ姫の処刑鎌』!」
{あくまで武器変形のみで行くのかい?}
行けるとこまで魔術なしで行ってみようかなって思ったんだよ。ほら、最近魔術に頼りすぎてるから魔力がつきたとき、私よわっよわなんじゃないかって気づいたんだよ!だから剣を使いたいなんて言いだしたんだからねっ!
{…確かにね その点血魔術は血さえダバダバ出してたら魔力の消費、ほとんど0で戦えるよ^^}
やっぱチートじゃん!めっちゃ痛いけど!
「あっ、あ”ぁぁぁぁぁぁぁ 痛”い”ぃぃぃぃ」
苦悶の表情を浮かべながら鎖でアラクネの足を1本捉える。そのまま引きずれば、体勢を崩したアラクネは魔術を複数同時に使用してきた。3属性の魔力弾がこちらに飛んでくる。人型の頭がついている魔物は知能が高いのだ。
しかし、私は魔力弾を全て避け、そのまま鎌の斬撃を無防備に晒されたアラクネの腹に叩き込んだ。