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125 閑話 規格外の新入生

セレナのクラスの担任、レオンハルト・マーガトロイド視点です。

 「ふぅ、今日は魔法陣が上手く書けたな」

魔法陣の完成度に満足した私は口元に微笑を浮かべる。そのまま作業を完遂した私は昼食を取りに教員用の食堂に向かった。


 食堂に入って直ぐ、食堂に響く声に気が付く。


 「あの新入生は何なんだ! 私の渾身の試験問題を入学したばかりの新入生が解けるわけがない! 大体初日だぞ!講義開始早々に試験を受けに来るなど…どうなっている!?」

 「まあまあ落ち着いてくださいよ、ユストゥス 私もあの新入生には驚きましたが彼女は入学時の試験でも大変優秀でAクラス1位ですよ 全くあり得ないと言うことはないでしょう?」

 「無い 無いが…だがしかし…」


 「ああ、良いところに来ましたね レオンハルト 今、貴方のクラスの生徒の話をしていたんですよ」

こちらを振り向いた男ことクラウスがこちらを向いて言った。


 ユストゥスとクラウスは私の同期だ。学園生活を共にして、その後に学園に就職した。その二人が食堂で騒いでいるとなれば私の目につくのは必至だろう。

 「はぁ、二人とも少し声量が大きいぞ」

 「あ、ああ すまん」

 「あ、すみません つい」

 

 「…それで?私のクラスの生徒が如何した?何かやらかしたのか?」

 「いや、やらかしたわけではないよ」

 「やらかしたようなもんだろうが…あれは中々驚いたぞ」

?一体何をしたというのだ。穏やかな性格でいつも物腰柔らかなユストゥスが驚くなど滅多にあることではない。クラウスは…堅物で少々怒りっぽいからこの反応はよくあるといえば、まあ、さほど珍しくはない反応だ。


 興味を引かれて先を促す。

 「…あー、君の所の生徒、というか1年首席セレナ・ナロウが今日算術・文学・歴史・地理の試験を受けて満点合格したって言う話さ」

 「…………は? あー、すまん、クラウス 今何と?」

 「だから、セレナ・ナロウが算術・文学・歴史・地理の試験を受けて満点合格、単位300を手にしたという話だよ 信じられないよね 目の前で私の歴史の問題を驚くほどすらすら解かれてびっくりしたよ」

 「私もだ あの算術の問題で満点だぞ 10歳の子供が、だ」

 「しかも講義を受けずに試験を受けに来るとか前代未聞だよ」

確かにそんなこと聞いたことない。

 「…だが講義を受けず試験に来る生徒など2年、3年にはよく居るだろう?」

 「1()()()が講義開始初日から、だぞ!?」

 「…確かに其れは規格外だな」

聞けば聞くほど規格外さが浮き彫りになる。入学式の日の自己紹介を聞いた限り特筆すべき点はないと思ったのだが。


 「だろ、しかも明日も試験の予定を入れているらしい、君の所にも試験依頼が来ていないか?」

 「ああ、そう言えば試験依頼が数枚来ていたな 今のところ日付だけ確認しているがその中にあったかも知れん」

 「ああ、是非確認してみてくれ これで実技まで合格となればとんでもないぞ」

 「ええ、楽しみですね」

 「「…楽しみ?」」

 「ええ、快挙じゃないですか このままいくと屹度共通講義最速合格記録が更新されますよ 私とユストゥスとレオンハルトの1年の冬休み前の合格記録を、ね」

 「…そうなるかも知れないな」

いや、屹度そうなる。そんな予感めいたものが私の脳裏に浮かんでいた。



 そして3日後、共通講義最速合格記録の更新という情報を小耳に挟み、あまりの速さに私が驚き半分、納得半分という顔になったのは当然の帰結と言えるだろう。


 そして、その際職員室で音楽教師がヒステリックに叫んでいてあまりのうるささに耳を塞いだのだった。

 「あの、新入生は何なのですか!!!私をここまでこけにするなど許しがたい!!!」

…いや、何をしたというのだ、セレナ・ナロウは。この音楽教師こと、ルドヴィカは粘着質で面倒な女だ。昔色々あったからそのことはよく知っている。だが、ここまで怒り心頭という様子は見たことがない。本当に何をしたんだ。頭が痛い。


 「それにしても、ここまで職員室を騒がすとは、これから面白くなりそうだな」

 そんなつぶやきを漏らした翌朝、私は再びユストゥスとクラウスの口論を聞く羽目になったのだった。…今度は何をした?セレナ・ナロウ。

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